第3話
「仕方ない。まだ妻を持たぬ者から|籤《くじ》で選ぶことにしようか。クナイシュの秘宝と謳われた姫を手に入れることができる、幸運な男は誰になるか。……第一騎士団は誰を出す? 手柄を立てた者の中で伴侶が定まっていない者は誰だ?」
周囲がざわつく中、オデットを下げ渡す男の候補が、何名か選ばれていった。
それぞれの騎士団の責任者らしき男が、ふさわしい者の名前をあげていく。この場で言う「ふさわしい者」とは、妻や婚約者のいない、できるだけ身分の低い者のことらしい。名を呼ばれた者に拒否権はなく、反論の声もあがらぬまま、淡々と選出がすすんでいく。
なぜ、無理やり騎士から夫を選ぼうとしているのか。マクシミリアンは、オデットを貶めつつ監視しようとしている。宮殿で監禁せず、早急に追い出したい理由もオデットにはわかっていた。
やがて、側近らしき一人が、王にひとつの壺を届ける。
マクシミリアンは、その中に色のついた七つの宝石を入れた。
「壺の中には、七つの色の付いた玉が入っている。色は七つある騎士団の旗印と同じだ。今後は選んだ色の騎士のもとに行き、その者を夫とし、誠実に仕えろ。……オデットよ、自分で選ぶか?」
オデットは返事をしなかった。その意志はないと判断したマクシミリアンが、雑な仕草で箱の中に手を入れる。
無造作に取り出された宝石は、漆黒に輝く黒曜石。
「黒だ。第七騎士団。ユリウス・クロイゼル、お前に与えよう。決して甘やかすな。贅沢はさせるな。あとは好きに扱っていい」
「……御意」
その低く抑揚のない声音に、オデットの耳が反応した。
聞き覚えのある声。まさか、と振り向くと、騎士団から一歩前に踏み出ている、めずらしい銀色の髪を持つ男がいた。
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