裏切りの騎士と呪われた皇女 【完】
戸瀬つぐみ
第1話
オデットは、皇女だった。
数日前までは、たくさんの者たちにかしずかれながら、何不自由なく生きてきた。決して、誰かにこうべを垂れることなどなく。
それがどうして、こんなことになってしまったのか。
今、オデットは鉄の重い手枷をつけられ、父ではない誰かが居座る玉座の元に引きずり出されている。
わざと粗末な服を着せられ、床に着きそうなほど長い金の髪は、誰の手に整えられることもなく輝きを失ってしまった。
「オデット皇女よ、クナイシュ帝国は滅んだ。最後の皇女として父親と同じ冥府に行くか? それとも身分を捨て、ただの人としてやり直すか?」
力強い声の持ち主は、帝国の端にある、アニトア地方から攻めてきた、赤毛のマクシミリアンだ。今はアニトア王を名乗っている。
(ああ、この男が噂のマクシミリアンか)
三百年に渡るクナイシュ帝国の栄華は、魔術の衰退とともに影が大きくなっていった。
一方で、北の地の若き王が台頭してきている、そうこっそり教えてくれたのは、父のお気に入りで、時折オデットの家庭教師もつとめていた若い建築家だった。
あの時、どこか他人事のように聞いていたが、このような形で顔を合わせることになるとは、思いもしなかった。
「わたくしは皇女として、国と運命を共にする」
オデットは精一杯の矜持を胸に答えた。たとえ戦で敗れようとも、誇りを忘れたくはない。父もすでにこの世にいない。攻め入られた時に降伏の印に、自ら命を絶ったと聞く。オデットもそうすべきだったが、あの建築家の男が死ぬなと言ったから、思いとどまった。
隠し部屋にオデットを押し込んだ男は、無事に逃げ延びることができたのだろうか。一度結んだ約束はできれば違えたくはないが、それ以上に大事なこともある。
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