第7話 原発事故

 鳩丸首相が辞任し、副首相だった慢氏が新たに首相となった。

 竹志は収入を増やすべくケアマネの試験を受け、合格した。法人内で異動し、施設ケアマネとなった。

 しかし収入は増えず、むしろ介護職員としての夜勤がなくなることで収入が減ってしまうことが明らかとなり、愕然としているところへ、東日本大震災が起こった。

 西日本在住である竹志に直接的な影響はなかったが、西の方も揺れたし、何人か東京方面に住む友人も居るので連絡を取ると、家の壁にひびが入った、とか物が飛んできた、とか、それなりに被害があったらしい。この震災と東北地方の津波によって原発事故が起こった。

 その時の慢首相の行動は、撤退すると言う電力会社の社屋に乗り込んで行って説教するなど、首相としては常軌を逸した行動であるとして、例によってマスコミの批判のターゲットとなり、人民党も国会で激しく攻撃したが、一連の報道を見ていた竹志の感想は、ああでもしないと電力会社は現場から撤退していただろうし、あんなことは首相がするべきではないが、誰も撤退を止める人間がいなかったので首相自ら行動したのだろう、と思えた。

 慢首相は事故を機に、以前からの持論だったのだろう脱原発の考えを前面に出し、浜風原発の立地が災害に脆弱であることを理由に突然停止することを命令したり、またある時竹志がラジオを聴いていると、これからはエネルギーをあまり使わず心の豊かさを大事にする生活を国民がするべきだ、との発言をした、とニュースで報じられていたが、その後、なぜかその首相発言は一切報じられない、ということがあった。

 あれは竹志の空耳だったのか、と思えるほどだった。恐らくは経済発展に反する発言だったために抹消されたのではないか、とも思った。

 国会での人民党からの辞めろ攻撃に耐えていた慢首相だが、脱原発の色濃いエネルギー基本法成立と引き換えに辞任することとなった。

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