第10話:特別な服と靴

 きのう、大量の札束をレティシアさんから貸してもらった。


この世界のお金は日本円で換算すると1,5円らしい。そのため、あの量の札束を換算した結果、450万円だった。450万円だったらほぼなんでも買えると思う人はいるかもしれない。


その通りだ。変えない服なんてない。そう、商店街をうろついているとやはり住民はこの服装が気になるようで、俺は注目を浴びている。だから俺は素早く450万をどこに使うか考えた。


商店街を歩いていると気になる店を発見し、その店は魔力の通りをよくする服を売っていた。

試着してみると、全身に魔力がいきわたるような感覚があり、驚いた。

経営しているおばあさんにこう言われた。


「坊っちゃん、その服に興味があるのかね?」


俺は頷いた。

「いくらほどでしょうか……」


「50万だよ」

「50万か〜」高いんだろうけど、レティシアさんが容易に450万なんて大金を出してくれたおかげで、俺はその金額にあまり驚かなかった。


「まあ、今回は初めてのご来店ということで、おまけしてこの靴をつけることにするわ!」

「そのズボンには、また違う特性があるのですか?」


おばあさんは手招きした。

「ここだけの話、この靴は神竜の手の鱗を使った、いわゆる魔道具みたいなものでね。全身の魔力の使用を手から、足に変換してくれる靴なんですよ」


俺は感心した。この魔道具があれば、空を風魔法でとべたり、蹴りを火魔法で強化したりなど……

考えれば考えるほど、案がでてきた。


「これ、買います!」

俺はおばあさんに50万ほど払って、服と靴を買った。


「またのご来店を」

これはいい買い物したぞ!とルンルン気分でレティシアの家に帰る俺であった。



家の前までくると念話が届く。

「緊急です!今すぐこちらへ来てください。」


目の前に現れた門に、いそいで俺は入る。リリシヤがこんなにも動揺している声なんて聞いたことがないからだ。しかしこの選択は間違っていた。そう、ここで誤った選択をしなければ……


門の中に入ると、あたり一面炎で包まれていた。炎の中心に結界を張っている傷だらけのリリシヤがいた。

そしてリリシヤに攻撃を続ける、一目男が見えた。


「リリシヤ!大丈夫か? 」と俺はリリシヤの周りの炎を水魔法で消化しようとする。でも、その炎が消えることはなかった。リリシヤは門から出ていけというかのように手で俺を払う。


「なんなんだよ。呼び出しておいて……ってまさか、」

俺は辺りを見渡した。曲がり角に青髪が見え、青髪に近づこうとしたが、逃げられてしまった。


俺たちは、はめられたんだな。リリシヤ、

俺はうつむく。


「リリシヤは、大丈夫なんだ……よな……?」


俺の心は不安でしかなかった。リリシヤを助ければ良いって?

魔王の戦いに参戦するなんて無謀でしかないだろ。


ここは、胸が痛いがリリシヤの無事を祈ろう。



次の日の朝、門が開いていた。

中へ入るとリリシヤが倒れており、全身傷だらけだった。

炎の中、1日中結界を張り続けていたのであろう。


俺はリリシヤを助けてあげられるほど、強くない。


だから、今日から本気で魔法の勉強をしようと思う。

そして、噂にきいている魔法学院の入試に一ヶ月後、出よう。


俺は自分の弱さを胸に決意した。

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