いじめと冤罪で追放されて10年、暗黒騎士に成長したので転生者と組んで復讐します

サドガワイツキ

第1話 拉致監禁拷問は復讐の始まり



 縛り上げられて転がっているその男の腹を思い切り蹴り飛ばすと、ゴホゴホとむせながら目を覚ました。下級貴族の割には羽振りの良い衣服、茶色い癖毛に目玉だけ大きくギョロッとした顔は“あの頃”と変わらない。


「ゴホッ、なんだここは?俺は一体なんでこんな所に?」


「チャオ♪ここは秘密の拷問部屋だYO!ジャック・キョロジュ男爵ゥ」


 足を左右に広げながら尻を地面に接触しないギリギリまで沈める『ヤンキー座り』なる、変わった座り方てジャックのすぐ傍に腰を落としながら『同志』が説明を始めたので、俺は少し離れたところにある椅子に腰かけて静かに2人の様子を見守る事にする。


「なんだお前、その服見たことないな。黒い詰襟に縦一色線の金ボタン?布質と言いボタンといい随分上質で精緻だがどこかの貴族のガキか?」


「なんだかんだと聞かれたら~答えてやるのが世の情け〜。どクズの未来を閉ざす為、外道の命を奪うため、愛と真実のざまぁを貫くチートで無敵な転生者。座間、翔太朗!世界を荒らす復讐者の俺達には……血の池地獄、赤い明日が待ってるぜ、な~んてな!よろしくぅ!」


「ザマ・ショウタロウ?その響きだと姓名を逆に呼ぶ東方の国の人間か?おいこらガキ、この俺を誰だと心得る!飛ぶ竜を落とす勢いの第三王子派閥のキョロジュ男爵だとわかってるのか?」


「勿論知ってるよ~、よぉ~くしってる。当たり前だよなぁ?だ・か・ら・ここに連れて来たんじゃないか、……なぁ、黒騎士のダンナァ!」


 そう言いながらショウが首を傾けて視線を俺の方に向けたので、それにつられてジャックもまた俺の方を見てきた。


「あぁ?!その黒い鎧、確か最近現れて竜とか大型の魔物を討伐して英雄とか言われてる“黒騎士”か!おいこら黒騎士、てめぇとっととこの縄解いて俺を助けろ!トロトロしてんじゃねーぞ!!ぶっとばされてーのか!」


「無駄に偉そうなのは相変わらずだなジャック。ここには威を借る相手、お前が取り巻きとしてくっついていた連中は誰もいないんだぞ」


 ため息交じりにいってから、兜を外し素顔をみせると、暫し考え込んだ後思い出したように叫ぶジャック。


「テメエ!!いじめられっ子の弱虫バーンか!!バーン・バグニスン!!なんでてめえみたいな追放没落貴族のカスが英雄の鎧を着てやがんだよ」


「頭が悪いなジャック。その追放没落貴族が今や英雄だって事だよ、正体は隠してるけどな。お前達に地位も名誉も、家族の命も奪われて流れた先で俺は強くなった。そして素性を隠してこの国に戻ってきたんだよ」


「待ちに待った時が来たのさ! 黒騎士バーンのダンナの家族が無駄死にで無かった事の証の為に、再びバグニスン家の家名を掲げる為に!冤罪の、払拭の為に……!王国よ!バーンは帰って来た!!……ってコト」


 俺の言葉に続いて、ショウが立ち上がって大仰な身振りとともに芝居がかって謳っている。そんな俺達の様子に、顔を真っ赤にして唾を飛ばしながらジャックが喚き散らす。


「なんだよそれ、そんなのただのさかうらみじゃねえか!騎士学校の頃の、ガキの頃のいじめを何年もネチネチと根にもってるんじゃねぇよ鬱陶しいなぁ!そもそもいじめなんてのはいじめる方が悪いんじゃない、いじめられるような奴が悪いんだろうが!」


「お前達にされたその『いじめ』と流された噂で俺の騎士としての未来は一度断たれた。それだけじゃない、でっちあげられた冤罪のお陰で親父は自刃して母さんは心を病んで衰弱死した。だから俺は名を捨て黒騎士として己を鍛え上げたんだ。全ては復讐のために」


「ふざけんじゃねぇよボケカスがオラァ!家名も失くした追放者が俺に逆らってタダで済むと思ってんのか?!てめえ、ぶっ殺されるんだからな!!覚悟はできてんだろうな!」


「アレレ~?黒騎士のダンナァ、こいつぜんぜんわかってないみたいッスね~。ジャックくぅ~ん、なんのために誰も知らない知られちゃいけない拷問部屋に拉致ってきたと思ってんのぉ~?―――お前はもうこっから出れないんだよ!」


「そういうことだ……と!!」


 そういってジャックの両足を暗黒騎士ジョブの剣技、魔法剣を使って斬り飛ばす。


「おっんギャアアアアアアアアアアアアア?!」


「ヒャッハー、こいつはナイスな足チョンパァ!グレートですよこいつは~。

 ブッころブッころポンポン♪本気の殺意が湧いたらど~しよ~?ザックリグッチャリディンディンなんだかとっても惨くて~よなぁ♪」


「いだ、いだ、いでぇぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇぇ」


 心底愉快そうに手を叩いて謳いながらゲラゲラと笑うショウと、両足を失った痛みに泣き叫ぶジャック。顔を涎と鼻水で濡らしながら、ジャックは混乱しながら自分を煽るショウに向かって食ってかかっている。


「お前、何なんだよ!俺が一体なにをしたってんだよぉ……」


「オウフwwいわゆるストレートな質問キタコレですねwwwおっとっとwww拙者『キタコレ』などとついネット用語がwwwフォカヌポゥww拙者これではまるでオタクみたいwww拙者はオタクでござるのですがwwwコポォwww

 ……なんて冗談はさておき、俺はざまぁ小説を読むのが大好きな高校生だったんだけど、事故って死んだと思ったらこの世界に居たんだ。―――で、この世界のボッカ村って村の人達に助けられて静かに暮らしていこうとしていたところでお前らどクズ野郎達が私腹を肥やすためにしでかした数々の悪行のとばっちりで村は俺を除いて全滅してな。

 その時偶然知り合った黒騎士のダンナと一緒にお前らゲス共をブッ殺し祭り開催中ってワケ。つまり俺と黒騎士の旦那は同じ目的の同志なんでちゅよ〜、理解できまちたか~?」


「し、しるか、おま、おまえら、おまえらぁ」


「怯えてやがるぜ、このクズ野郎はよ!“ガルドラ崩落”、欲にかられたお前達の失態で山岳都市ガルドラを崩落させた大惨事わかるよな?お前も実行に関わってたって証拠は掴んでるんだ。

 そのせいで地形はかわり生態系もかわり、発生した魔物の暴走で俺がこの世界に召喚されてからずっと世話になってた村は全滅したんだよ……絶対に許さねぇからなこの糞虫が」


「あ、あれは―――だって、あいつらが言ったんだ。そうだ、王子がやれって!こんなことになるなんて知らなかった!誰も教えてくれなかっただろっ!俺は悪くねぇっ!俺は悪くねぇっ!!」


「今更人の所為にしようとすんなよダッセエ。ま、ともかくここからはダンナにたっぷり“可愛がって”もらってくれよ」


 そう言ってジャックの縄を解くショウ。どうぞご自由に、という事らしいので俺はおもむろにジャックの腕を掴んで引っ張ると、まるで畑から野菜でも抜くかのように引っこ抜けた


「あんぎょおおおおおおおおおおおおおおおおお!?あああああああああああああああああああ、ヴォアアアアアアア!!チョ、チョッギ!チョッギッップルウィイイイイイイ!!!!!!!」


 両足を断ち切った時にも勝る悲鳴が、拷問部屋に響いた。だがそんな俺の肩をショウが叩き、制止してくる。


「おっと、そいつはストップだぜ黒騎士のダンナァ」


「何故だショウ、何故とめる」


「腕をもぎもぎしちゃった1回しかいたぶれないっしょ。指を一本ずつもいでから腕をもげば、6回も遊べるドン!!」


 そういって爽やかな笑みと共に親指を上に立てた握りこぶし、“さむずあっぷ”というハンドサインをするショウ。異世界から来たと自称しているだけあって不可思議な言動をする時もあるが、良い助言をして俺の復讐を助けてくれること位は素直に感謝している。


「なるほどな!天才か」


 そんな俺達のやり取りを見て、歯をガチガチと鳴らしながら震え、小便をもらしはじめたジャック。そして今度はそんなジャックに向かって、サムズアップの親指を下に向けながらキメ顔と共に死刑宣告のように告げるショウ。


「さぁ、地獄を楽しみな!」


 最早わずかな希望も残されていない、絶望に染まったジャックの顔。そんなジャックを見下ろしながら、俺は自白という名の拷問、報復という名の私刑を始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る