第20話 坂下優子的なもの
20世紀のいつか、美姫・良子高3、明彦大学1
いつまでも美姫と明彦の邪魔をしても無粋なので、買い物して横浜に帰ります、アポもあるんでと、午前中で二人にバイバイした。無粋?親友の彼氏と目の前でセックスまでしておいて、無粋もないものだわ。すごく良かったけれど。あの二人、私に優しい。
さて、今日はどうしましょう?
明彦に「明彦が『男は、美人系は当然相手がいるだろう?とアプローチする前に諦めてしまうことが多い』と言ったみたいに、外見で私の可能性をせばめているなら」と言ったのは本当のこと。しかし、「それは許せないからよ」は本当のことではありません。単純に(私も外見を変えたら、明彦みたいな本当の私を思ってくれる彼氏ができるかしら?)と思ったからです。しかし、見栄っ張りの私はそれは言わない。可愛くない女。
さて、イメージは、美姫の言う坂下優子だったわね。彼女のコーデってどうだったっけ?私は流行を追いかけないから、DCブランドとか渋カジなどは着ない。坂下優子って言うと、体にフィットしていないダボッとした服が好きだったっけ?体に自信がないからそういう服になるのかしら?・・・おっと、良子、上から目線で考えるな。
水玉ピンクのフリルスカート?わからない。とりあえず本屋に行こう。
私は渋谷のブックショップに行った。雑誌コーナーで立ち読みする。『an・an』、『non-no』、『JJ』・・・なるほど。いろいろあるのね。ヒッピースタイルは却下。演技不可能。ニュートラ?金ボタンのブレザーに編み上げブーツ、ウェーブの掛かった髪型。ふ~ん。
民族衣装がモチーフのフォークロア?ハイウエストのマキシ丈のスカート、刺繍入りのブラウス、ヒールなしパンプス?高田賢三のパリコレ?ふむ、これは実に坂下優子的である。候補にしておきましょう。
プレッピー?チェックのパンツ、白靴下、ローファー、ボタンダウンシャツ、サマーカーディガンのディレクター巻き。パス!
ハマトラ?シフォンのブラウス、膝丈のラインスカートかタイトスカート。インチのハイヒール。これ、わが校の女性御用達じゃないですか?パス!
オリーブ&ピンクハウス?フリルのティアードスカートにサイズ大きめフリルのブラウス、ビルケンシュトックのシューズね?これも坂下優子的ではある。これも候補ね。
早速、普段は脚を踏み入れないショップを回った。マキシ丈のスカート、刺繍入りのブラウス、ヒールなしパンプス。靴下もフリルの靴下。よし。フリルのティアードスカート、サイズ大きめフリルのブラウス、ビルケンシュトックのシューズ。うんうん。帽子はやり過ぎかしら?でも、坂下優子ならかぶりそうね?シャキッとしていない手編みのつば広でレースリボンが付いているのはどうかしら?
お店で試着した。試着室で鏡でチェックする。うん、とても高橋良子とは見えない出来。のっぽの坂下優子ができた。サイズ大きめフリルのブラウスは、私のいかり肩も隠せるわ。肩をすぼめて猫背。よしよし。
ショップで店員さんに「あ、あのぉ。カードのお支払いで構いませんか?あとぉ、試着した服、着ていってもよろしいですか?」と坂下優子的に聞く。よろしいそうだ。フフフ。
渋谷駅から坂下優子に電話した。彼女はちょうど家にいた。「お暇かしら?見せたいものがあるのよ。家にお邪魔してよろしい?ええ、今、渋谷駅。そうね、1時間ちょっと。お伺いするわね。じゃあ」
東横線の中で、若い子が側にいるドアの端の取っ手につかまって外を見ているフリをする。伏し目よ、伏し目。若い子がチラッと私を見る。私もチラッと見て下を向く。ほほぉ、普段と私を見る目が違うじゃない?頭を振って、この女はないない、という態度じゃない。オリーブ&ピンクハウス的服装はガードが低いという観察結果でいいんだろう。面白いこと。でも、ほくそ笑んではいけません。
石川町から坂を登って坂下優子の家に行った。ピンポーン。さて、どうかしら?
優子がドアを開けた。「良子、いらっしゃい・・・」私を見て驚く。帽子を脱いだ。優子的クレオパトラのおカッパ。「りょ、良子、ど、どうしたの?」
「ウフフ、ちょっとしたイメチェン。見せたいものって、私です。どう?似合う?」
「驚いた。あんなキレイなロングをバッサリ。それに、私みたいな服装じゃないの?ま、上がって上がって」
優子が二階の自室に案内してくれる。なるほど。ああいう風に歩くんだ。かかとから脚を降ろさない。つま先でチョコチョコと歩く。歩幅は短く。両手はグーチョキパーのパーで、小さく振る。勉強になる。
紅茶?と聞かれた。彼女がちょっと待ってね、と紅茶とクッキーを持ってきた。受験勉強、はかどってる?優子は横浜国大志望だったっけ?やっぱり、理科で手こずっているわけよね。あなた、化学を選択したの?そお、私は物理。今度、美姫のお兄さんの友だちに化学のことは聞くといいわよ。そう、美姫とその人、付き合ってるのよ。羨ましいわねえ。私?彼氏なんかいないわ、優子は?お互い一人ボッチなんだ。寂しいね。優子は良い子の良子しか知らない。
差し障りのないことを話す。でも、見るのは優子。紅茶のカップは両手で添えるように持つ。うんうん。肘を脇につけて、肩をすぼめてフーフーするのね。時々、髪の毛の耳のところをかきあげる。なるほど。
ほぼ習得した。優子の受験勉強の邪魔しちゃ悪いわ、とさっさとお邪魔する。家に戻った。ママがドアを開ける。目を見開く。確かに娘のこのような姿、見たことがないわよね。私も見たことがないもの。
どうしたの?と心配そうに聞く。何かあったと思われているのかしら?いいえ、単なるイメージチェンジです、ママ。坂下優子ちゃんに服装の相談したのよ。たまには気分が変わっていいものよ、と答えた。さすがに、坂下優子の口調は止めておいた。
※高校生の飲酒シーンが書かれてあります。
※この物語は性描写や飲酒、喫煙シーン含みます。
※この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
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