第8話 引っ越し

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 借りた部屋に3度行って、布団、家具、食器、電気用品、雑用品を買い揃えた。区役所に行って住民票を移した。電気水道ガスのメーター確認なんかをした。電話も契約した。ハゲタカのように新聞とNHKが来たので、新聞は断り、NHKは仕方なく契約した。もちろん、ヒメは一緒。


 大家さんのお店で布団を買った。「枕、2つだよ!」とヒメが言う。ハイハイ。「お布団は一組でいいのに」


「あのね、キミを妹と大家さんには言ってあるし、第一、布団一組でキミの寝相だとぼくは死ぬ」と答えた。「・・・寝相・・・それはごもっともです。美姫は一言もありません」と言う。抱きつかれたり蹴られたりしたらぼくは睡眠不足になってしまう。


 引っ越しの準備はできたが、ヒメが3月22日が大安だから、引っ越しはこの日よ!と意外と古風なことを言うので、引っ越しは月曜日にした。


 実は、ヒメの家には昨日の日曜日にお邪魔したのだ。親友の仲里は茨城県の大学に進学して寮に入るので仲里家で送別会に呼ばれたのだ。ヒメとの付き合いは去年報告しておいた。別段、パパ、ママからの文句もなかった。ぼくの高校のブランドだから、安心安全というわけだ。


 それで、ぼくも一人暮らしします、とヒメの両親に報告した。あの、その、たまに美姫がぼくの部屋に外泊するかもしれませんが?と言うと、ママが、


「あら?同棲するの?妊娠だけは気をつけてね」と呑気なことを言う。ヒメがニタっとした。

「何を言われます。彼女、高校3年生ですよ?おまけにアパートは千駄ヶ谷ですよ?たまに、ぼくの部屋に外泊するだけです」とぼくの部屋の住所や電話番号を教えた。へぇ~、バイトで家賃、生活費を賄うの、偉いわね、とママ。


「なんだ、結婚してくれたら、ワガママ娘の厄介払いができるのに」とパパも変なことを言う。ますますヒメがニタっとする。やれやれ。

「まあまあ、外泊くらいかまわないのよ。ちょうどいいわ。明彦くん、美姫の勉強も見てやってね。3年生になるんだから、赤点ギリギリなんて勘弁して欲しい」と言う。ヒメは今度はいやな顔をした。

「明彦も大変だよなあ。このワガママ娘のお守りをするなんて。もっと良い子がいただろう?」と仲里が言った。ヒメがヤツの肩を思い切りぶった。


 やれやれ。


 月曜日の朝、千駄ヶ谷の駅の改札でヒメと待ち合わせた。重そうなボストンバックを持っている。ヒメは当然のごとく泊まるつもりだ。そのボストンバック、何泊分入ってるんだ?まさか、両親の許可をもらったから、春休みが終わるまでぼくの部屋にいるつもりじゃないだろうな?


「重いよう、明彦!持って!」とボストンバックを押し付けられた。重い。

「これ、何が入ってるんだ?」

「1週間分の服!ママがもっていけと言って押し付けられたお玉とか鍋。今日の料理する食材。それから、勉強を忘れるな!と言われた3年生の教科書。うぇ~ん」

「やれやれ」

「あ!スキンも薬局の特売があったので、4ダース、買ったよ」薬局の特売にスキンがあるのか?どういう顔して買ったんだろう?ぼくがうぇ~んと泣きたい。ぼくの一人暮らしの自由はどこに行ったんだろう?



 千駄ヶ谷の駅からヒメのボストンバックをヒィヒィ言って持って部屋に戻った。こいつ、京浜東北線から東京駅で乗り換えて、御茶ノ水で乗り換えて、千駄ヶ谷までよく担いできたよな、と思った。これは鍋と食材なんかが重いんだろうなあ。


 ヒメは早速ボストンバックを開いて中身を取り出す。ハンガーがないじゃん!と文句を言う。ハンガーをもっと買わないといけないのか?ぼくの服を外して、ハンガーを渡した。こりゃあ、ビニールの安いタンスを買わないとダメだな。それとヒメの下着をしまう何かを。


 ねえ、見てみて、とパンツをぼくに見せる。ハイハイ。ぼくがバイト代が入った時一緒に買ったパンツが多い。いつまでもコットンの白のパンツじゃダメだろ?と言ったら、じゃあ、一緒に買いに行ってよとデパートの下着売り場に連れて行かれた。20世紀だよ。下着売り場に男性なんかいないよ。


 濃紺のハイレグとお揃いのブラだとか、1週間でどれだけパンツを履き替えるんだ?と思った。ほら、生理も近いから生理ショーツも持ってきたと見せる。見せないでよろしい。エプロンまで持ってきている。ヒメ、絶対に全部の服は持ち帰らないだろうなあ、と思った。


 鍋にお玉、ステンレスのざるも持ってきていた。これが重かったんだな。ま、これはちょうどいい。カレーを作るのにソースパンがなかったのだ。ざるがあればスパゲッティーもできる。一緒に食器を買ったので、何が足りないか、ヒメは知っている。食器は、夫婦茶碗と箸なんてのを買わされた。食材は乾物を持ってきたみたいだ。味噌もある。


「ねえ、明彦、お食事にする?お風呂?それとも、私?」と上目遣いで聞く。もう発情しているのか?初めてセックスしてから、7ヶ月。ヒメの性欲は増すばかり。女子高生ってみんなこうなのだろうか?

「ヒメ、食事、風呂、ヒメの他にはないのか?」

「え?それだけでしょ?」と言うので、ぼくは彼女のボストンバックから2年と3年の数学の教科書を取り出して見せた。


「それはねえ、見たくないの。でも、明彦が可愛がってくれたら、少し見てもいいかな?なんて思っちゃたりする・・・」

「やれやれ・・・春休みの終わりまでいるつもりなんだろ?」

「春休みが明けてもいてもいいよ。早起きすれば、こっから横浜まで通えるわ。友達の中にも東京から通っている子もいるもん」

「『春休みが明けてもいてもいい』って、あのさ、ぼくには大学の授業もバイトもあるんだよ?」

「そう、知ってる。それでね、私は高校が終わったら、ここに帰って、夕食を作って待ってるのよ」

「それ、ダメでしょ?」

「あら?ママは同棲しちゃえばって言ったし、パパは結婚しちゃえばって言ったわ」

「キミの家はおかしい!」

「だって、監視していないと、明彦が可愛い女子大生をこの部屋に連れ込むかもしれないでしょ?」

「ヒメがいるんだから、ぼくはそんなことはしません!」

「ほら、私がここにいるんだから、なんでしょ?」

「違います!ヒメという彼女がいるんだから、浮気はしませんってことです。ヒメがここに住むんだから、という意味ではない!」



※高校生の飲酒シーンが書かれてあります。

 また、性描写も含みますが登場人物は18歳以上の成人です。

 この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

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