神代啓示と禁断の式神呪詛師
史家仮名太
第1話 「神代啓示と式神の呪詛」
タイトル: 「神代啓示と式神の呪詛」
雲一つない星空の下、「神代一心流道場」の大きな門をくぐり、掲げられた看板を通り抜けると、背後から声がかかる。
「神代啓示(かみしろけいじ)さんですね?」
神代啓示、16歳。黒いワイシャツにノーネクタイ、スラックスに綺麗な革靴を履いた姿は、年齢に似合わぬ精悍な雰囲気を漂わせている。肩から白い竹刀入れを垂らし、その姿が異常に目立つ。背後から近づく足音に気づきつつも、振り返ることはない。
「それでは…」
声の主がアイマスクを手渡すと、神代は無造作に前髪をかき上げ、アイマスクを着ける。冷徹とも取れる精悍な顔立ちと、動きを早めるために培われた筋肉が、彼の戦闘力を物語っている。
「では、こちらへ。」
腕を引かれるまま、開いた後部座席のドアに身を沈める。竹刀入れを車内に放り投げ、背の高い体を折りたたんで頭をぶつけないように慎重に車内に乗り込む。車内にはタバコの臭いが染み付いており、神代はしばらく咳をして匂いをやり過ごす。
車は静かに走り出し、道を進む。衝撃がほとんどないのは、高級車と腕の良い運転手によるものだろう。神代は無言で、相手の思惑を読み取ろうとする。
「依頼主についての情報を教えてください。」
見えない運転手に問うと、運転手は静かに答えた。
「今回の依頼主のわが主(あるじ)は、急に体調を崩され、病院で検査を受けましたが、原因が見つからず、困り果てていたところ、あるお坊様から式神系の呪詛の可能性を指摘され、紹介を受けた次第です。」
「なるほど、いつから体調を崩されたのですか?」
「2カ月前からです。」
「式神系呪詛師…心当たりはありますが、探すのも雇うのも一苦労です。」
神代は深く思案し、しばらくして結論を口にした。
「主(あるじ)…恨まれているな。」
思わず口にした言葉に、運転手が驚き、急ブレーキを踏んだ。神代は姿勢を崩し、慌てて謝罪する。
「すみません、失言でした。」
車は再び走り出し、神代は心の中でさらに推理を巡らせる。
「先生と言ったな…先生とは、教授か、医者か…。いや、専属の運転手がいるとなると…もしかして、国会議員か?」
2ヶ月前、松阪という国会議員が総理降ろしを扇動していたことを思い出し、神代はすぐに頭を振った。余計な情報は仕事に影響を与える。依頼主を「主(あるじ)」と呼ぶのは、お互いに情報を探られないための配慮だ。どんな大物であろうと、依頼は果たさねばならない。しかし、情報を深く掴みすぎれば、身の安全が脅かされる。それがこの業界の暗黙のルールだ。
神代は瞑想を行い、到着までの時間を自分を見つめ直す時間に充てた。
しばらくして、車が止まり、後部座席のドアが開いた。「到着しました」という合図で、神代はゆっくりと腕を引かれ、外に出される。
「アイマスクを外してください。」
暗闇の中、導かれるままに歩き、神代は部屋に案内される。
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