8月21日

 8月21日、自由研究はようやく終わりが見えてきた。何とか8月中に完成できそうだ。かなり大変だったけど、何とかなりそうだ。だが、油断はできない。終らせるまで何が起こるかわからないからだ。いろいろあったけど、河童と出会えて、東京を見つめなおす事ができたし、何しろ大きな自由研究のネタができた。河童に出会えて感謝しないと。


 真人はいつものように起きた。真人は辺りを見渡した。だが、河童がいない。どこに行ったんだろう。今日も、外にいるんだろうか? 暑いのに、どうしたんだろう。


 真人はベランダを開けた。すると、そこには河童がいた。河童は残念そうな表情だ。どうしたんだろう。


「どうしたの?」


 河童は振り向いた。河童は寂しそうな表情だ。また戦争の事を考えているんだろうか? しなければいいだけの事なのに。明るく生きようよ。


「何も言わないでどうしたの? 隠してたらダメだよ」

「うーん・・・」


 だが、河童は何も言おうとしない。どうしたんだろう。何か隠している秘密があるんだろうか?


「どうした?」

「あと11日で、元の世界に帰らなければならないんだ」


 真人は驚いた。11日という事は、今月、夏休みが終わるまでじゃないか。だけど、300年前からやって来た河童はいるべき場所に帰らなければならないんだな。寂しいけれど、人生には出会いと別れがつきものだ。出会いと別れがあってこそ、人は成長するものだ。それを受け止めないと。


「えっ!? それ本当?」

「うん・・・」


 河童は残念そうな表情だ。せっかく友達ができたのに。今月でお別れなんて。とても寂しいな。だけど、本来の場所に戻らないと。そして、未来の東京ともお別れしないと。


「信じられないけれど、本当なんだ」

「そうなんだ・・・」


 と、真人はある事を考えた。もう一度、東京を巡ってみよう。河童と過ごす最後の思い出に、そして未来の東京を忘れないためにも。


「どうしたの?」


 河童は首をかしげた。何を考えているんだろう。


「・・・、何でもないよ・・・」


 だが、真人は言おうとしない。どうしたんだろう。


「ふーん・・・」


 真人は1階に向かった。朝食を食べに行くようだ。夏江はいつものように朝食を作っている。もう朝食はできたようで、真人の姿を見ると、みそ汁とごはんをよそった。真人は椅子に座った。


「いただきます・・・」


 真人は朝食を食べ始めた。だが、元気がない。どうしたんだろう。何か考え事でもしているんだろうか? 最近、戦争の事を考えているので、暗い気持ちになっているんだろうか? もっと明るく生きてほしいのに。


「あら、どうしたの? 元気がないよ・・・」

「・・・、何でもないよ・・・」


 だが、真人は何も言おうとしない。何か悩んでいる事があったら、話してほしいな。お母さんなのに。


「そう・・・」


 ニュースでは、昨日の高校野球の速報が流れている。8月になって始まった高校野球も、あと少しになった。いよいよあさっては決勝だ。そして、高校球児の夏も終わろうとしている。真人は野球をしている。高校の野球部に入ったら、県大会が待っている。自分はどんな青春を過ごすんだろう。どんな青春になるかわから泣けれど、心に残る青春だったらいいな。


「ごちそうさま・・・」


 真人はすぐに朝ご飯を食べ終えると、リビングでくつろいだ。夏江は不思議そうに見ている。今年の真人は、いつもと違う。どうして戦争の事を考えるんだろう。まさか、戦後80年だからだろうか?


「どうしたの、戦争の事を考えて」

「本当に何でもないんだよ・・・」


 だが、真人は何も言おうとしない。何か言いたくない秘密があるんだろうか?




 その日の夜の事だった。真人はカーテンを開け、東京の夜景を見ていた。見慣れた風景なのに、どうしてこんなに考えてしまうんだろう。河童と出会ったのが一番のきっかけだ。東京の移り変わりについて考え、その中で人は何を失い、何を得るのか。そして、戦争がなくなるには、どうすればいいんだろうか? 真人はつくづく考えてしまう。


「どうしたの?」


 真人は横を向いた。そこには河童がいる。河童も東京の夜景を見ているようだ。


「僕がいなくなるから、何かしようかなと考えてるのかなと思って」

「そんな事ないよ・・・」


 東京をもう一度巡るのかなと思っていた河童は、がっくりした。もう一度東京を巡りたいのにな。最後の思い出に、未来の東京を見たいのに。


「そっか・・・」


 2人は東京の夜景に見とれていた。本当に美しいな。80年前は想像できなかった。これが東京の夜景だ。80年以上前に戦死した人々は、その夜景を見て、どう思っているんだろうか?


「きれいな夜景だね」

「そう? 都心はもっと素晴らしいけれど」


 真人は今年の夏を思い出した。いろいろあったけれど、河童と出会えて、本当に嬉しかったよ。もう会えないだろうけれど、今年の夏の事を忘れないようにしよう。そうすれば、いつでも心の中で会えるから。


「この夏休み、いろいろあったけど、もうすぐ終わるんだね」

「うん。君がいて、いつも以上に楽しかったよ」

「ありがとう」


 真人は決意した。今朝言わなかったけれど、もう一度東京を巡ってみよう。そして、その風景を忘れないようにしよう。


「突然言ってなんだけど、名残惜しみでまた東京巡らない?」

「そう・・・、だね・・・」


 河童は乗り気だ。300年後の東京を見る事ができて、いい経験だった。この経験はきっと、将来のためになるだろう。そろそろ8月が終わるんだ。そう考えると、別れが迫っているんだと実感する。そう思うと、悲しくなってくる。


「どうしたの?」

「いや、寂しいだけだよ」

「そう・・・」


 河童は未来の東京を巡った事を思い出した。江戸があんな風景になってしまうと驚いたけれど、それが未来の東京なんだ。これが現実なんだ。


「この夏休みで、いろいろ知ったな。江戸がこうなってしまうって」

「信じられないけれど、これが未来なんだ」


 真人はじっと東京の夜景を見ていた。これが未来の東京なんだ。だけど、僕にとってはこれが今の東京なんだ。


「そうなんだね・・・」

「だけど、変わらなければ何も変わらない」


 真人は強い表情だ。何も変わらなければ、何も起こらない。そして、未来に向かって進まなければ。そうしなければ、時代の流れに乗れない。今に取り残されてしまう。


「・・・、僕もそう思ってた。変わらなければ、何も変わらないんだね」


 河童は感心した。自分も何か変わらなければ、成長できない。それをこれからの日々の糧にしたいな。

 真人は眠たくなってきた。そろそろ寝なければ。


「もう寝なくっちゃ。おやすみ」

「おやすみ」


 真人は部屋に戻り、ベッドに横になった。そして、河童と過ごした夏を振り返っていた。

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