第56話

「……ぺんこしの椿しぇんしぇいがね、ココ乗れワンっワンて。そいでキス顔してヌリヌリ〜って。」


「ぺ、ぺんこし?もしかして、例の弁護士?!」 

 

「でへへ。」



私のにやけ顔に苦い顔をするユキっペ。全然信用してないらしい。


    

「あれ?……香乃ちゃんは?」


「来てないね?連絡も来とらんよ?」


「風邪かなあ。」


「どーせ彼氏と喧嘩っしょ。」  



香乃ちゃんは大学生の彼氏と喧嘩する度にこうして学校を休む癖がある。確か……もう大学4年生って言ってたっけ。年上と付き合うのって難しいのかな。

 




      

二限目が終わって、ユキっペと自販機にパック豆乳を買いに行っている最中。ありがちな告白現場に遭遇する。



渡り廊下を渡る際に、裏庭から聞こえる罵声。『事件はリアタイで起きている!』と豪語するユキっぺに渋々ついて行った。



影から現場を見れば、そこには初芽君と女の子三人がいたのだ。真ん中にいるツインテールの女子は泣いている。



「初芽くん!マリリンのことどう思ってるの?なんでマリリンとえっちしたのにマリリンの告白を断ったの?!」  

「マリリン、ずっと初芽くんのこと好きだったんだよ?!ひどいよ初芽くん!」



両端にいる女子二人が初芽君に吠えた。



あ、ありがちな告白現場なんかじゃなかった。凄惨な修羅場だった!



真ん中で泣いている子は、ただ泣いているだけでなにも言わない。てか初芽君てばほんとクズ。極めすぎてて最高だぜオマエ。



でもさすが初芽君。いつものアンニュイな独特な雰囲気を醸し出したまま、首を傾けて困り顔。『え?ポクなんか悪いことシタノ?』って従順な犬の目をしている。

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