第52話

「キャー!先生ってば私を送ってくれるの?!」


「今日いつもより家出るの遅かったですよね。夜ネズミの鳴き真似なんかしてるから寝坊するんじゃないですか?」


「ち、違いますもん!先生が知らない女の人とイチャイチャしてたのが悪いんですもん!」


「……いちゃいちゃ?」


「夜腕組んで歩いてたじゃないですかあ!しかも家にまで連れ込んで!」


     

先生のハンドルを持つ手。隆起した骨と血管が、柔らかそうに形を変える。



同級生の男子の手なんて気にしたことないのに。ハンドル握る手ってこんなにもエロかっこいいんだ。



そういえば男の人の車の助手席に乗るのって。これが初めてかもしれない。なんで先生、私を乗せてくれたの?



「女の人は帰ったんですか?」


「いえ、まだうちにいると思います。」

  

「…い、いんですか?家に女の人置き去りにして来ちゃって。」

   

「ええ。合鍵渡してありますし。」


「…………」 



ルリさん、じゃないよね?昨日夜見たのは、ルリさんよりも清純そうな服装だったはず。



「まさか、彼女?」


「彼女はいません。」


「じゃあなんで合鍵なんて渡すの?」


「駄目ですか?」


「ダメに決まってるじゃないですか!」


「なぜ?」



な、なぜって。。



まだ私には男と女の付き合い方なんてものは分からない。



でも好きでもない相手とえっちできるとか、好きでもない相手に合鍵渡しちゃうとか。私には一生出来ないことだと思うんだよ。



椿先生に『辞めて』って言えたらいいのにな。


 

「……人には駄目とか言いつつ、そっちこそ知らない眼鏡の車に乗ってやるべきことやってるんじゃないですか?」


「し、知らない眼鏡じゃないし!今朝丸さんとはぜんぜんそういう関係じゃないもん!」


「どうせ近い将来そういう関係になるんでしょう。」


「な、どういう意味?」


「別に。」


「…………」      



私が先生を問い詰めてたはずなのに。なんで私が先生に問い詰められてるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る