第37話

「……これ。さっきの眼鏡の口に塗ってましたよね?」


「ふゃひぃ?」


「これだって立派な唇の接触でしょう。」


「はひ?ひょっとぉはなひてふだひゃい。」



上手く喋れない私なんてお構いなし。



先生の親指が私の唇に触れて。右から左へと、唇を拭うようにスライドさせた。



じっと、私の潰された顔を見つめる先生。こんなに面白い顔をしているのに、先生ってば真顔で見つめてくる。


     

「このリップの色、似合ってない。」


「うひょ。」


「光姫は赤寄りがいんじゃない?」



ベランダから新鮮な空気がなだれ込んで、大人の怪しい色香に充てられる。



ほっぺをムギュッとされたまま、べろりと唇を舐められた。



「ほら、いい具合に熟れた。」



舐められた唇がしっとりと汗ばんでいるように。身体の内側から火を灯されたように、一気に顔面が熱くなる。


       

「な、なななな〜〜っ!」


「顔も唇も真っ赤。」



先生に手を離されて、私は絨毯の上でしばし精気を失った。嬉しくて浮かれるほどのテンションになる8秒前。かなり時差があるらしい。



そしてなぜだかストロベリーミルクのリップを没収されてしまう。


   

「つ、つばきせんせい〜、もしかしてこれが噂のヤキモチってやつですか?!」


「は?」


「あれでしょう?今朝丸けさまるさんにヤキモチやいちゃったんでしょう??」   


「“今朝丸”?犬の名前?」


「妬いたからって強行手段で私の唇舐めるなんて!先生のがよっぽど犬じゃないですかあ!」



今のって今のって!キスに入るのかなあ?!(そこんとこどうなの?)椿先生ってなんでそんなに私の攻撃を上回ってくるかなあ?!

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