幼馴染の彼の溺愛が止まりません!
夢水 四季
第1話 僕が彼氏になるしかない。
成人式で君に久しぶりに会った時、君には彼氏がいて、僕は当たり障りのない言葉しかかけられなかった。
幼稚園の頃から、ずっと好きだった。
僕が上京している間に、君は地元の奴と付き合った。
その彼氏とは、どこまで進んだのか怖くて聞けなかった。
僕が転職をして地元に戻って来た時、君には彼氏はいなかった。
別れた直後とのことだった。
きっと傷心してるだろうな。
その隙を突いて、僕が彼氏になるしかない。
ゆくゆくは結婚も見据えたお付き合いをする。
ずっとずっと恋い焦がれてきた。
君以外はあり得ない。
まずは久しぶりの連絡をどうするか、だ。
僕はラインの文章を考え、送信ボタンをタップするまで丸一日を要した。
「久しぶり。最近、転職して地元に戻って来たんだ。良かったら今度、食事にでも行かないかい?」
いざ、この文章を送ると、本当にこれで良かったのか、何度も考えた。
既読が付くまで何度もスマホをチェックした。
メッセージに既読が付いたのは、送信してから3時間程してからだった。
返信来るかな?
僕はドキドキしながらスマホを見詰めた。
実際に返信が来たのは、既読が付いてから30分後だった。
「久しぶりだね! こっちに戻って来たんだ! いいよ、食事行こう! どこがいい?」
君が食事を了承してくれたことに、まず安堵した。
「君が行きたいところなら、どこでもいいよ」
僕はすぐに返信をした。
「だったら駅前のイタリアンはどう?」
「いいね!」
日時も決め、後は当日を待つのみ。
やっと君に会える。楽しみとドキドキが半分くらいだ。
食事の日。
僕は30分も前からレストランに着いて、君を待っていた。
君が現れたのは待ち合わせの10分前だった。
「ごめん。待った?」
淡い桜色のワンピースが、よく似合っている。
「ううん。全然」
楽しみ過ぎて早く着き過ぎたことは内緒にしよう。
「さあ、入ろうか」
イタリアンレストランでは、僕はカルボナーラ、君はナポリタンを頼んだ。
「今日、誘ってくれて、ありがとうね」
「いやいや、君が来てくれて、とても嬉しいよ」
「お仕事、こっちに移ったんだってね。大丈夫そう?」
「うん。何とかやれてるかな」
さて、どうやって口説こうか。
仕事や趣味など他愛のない話を延々と続けても意味がない。
早くしないと、他の男に掻っ攫われるかもしれない。
一度した失敗を繰り返さないようにしないと。
じっくり外堀を埋めていくのは、もう止める。
単刀直入に、一騎打ちだ。
「君は今、気になってる人とかいるの?」
「え、えっと……?」
「最近、彼氏と別れたって聞いたから」
「ああ、うん」
君は気まずそうに、あまり話したくなさそうな顔をする。
「あまり思い出したくないよね」
「うん。私と価値観が合わないかなって思って」
「僕だったら君に、こんな顔させないのに」
「え?」
「ずっとずっと好きでした。付き合って下さい」
君の目を見て、自分の気持ちを伝える。
これくらいストレートに言わないと伝わらない。
「えっと、まだ心が付いていかなくて……」
「僕の気持ちは変わらないから、返事、ずっと待ってるよ」
僕はお会計をして店を出る。
僕の告白に驚いた君は言葉少なだった。
「じゃあ、またね」
僕が去ろうとすると、君が僕の腕を掴んだ。
「待って」
「どうしたの?」
「私、あなたのこと、まだ友達、幼馴染としか思えないけど、もしかしたら変わるかもしれない。……好きって言ってもらえて嬉しかった! こ、これだけ伝えたくて! また気軽に連絡してきていいから!」
「ありがとう」
君と別れた後、僕は大きくガッツポーズをした。
これは押せばいけるんじゃないだろうか。
初めて、ちゃんと気持ちを伝えた昂揚感で、今夜は眠れなかった。
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