第5話 星の導き

 旅を続けるうちに、セレナは不思議な感覚に包まれるようになっていた。

 夜空を見上げると、星々の瞬きがまるで語りかけるように感じる。


 「セレナ……心を澄ませば、星の声が聞こえるはず。」


 幼い頃、神殿の長老から教えられた言葉が脳裏に蘇る。

 星の導きを受けることは、巫女にだけ与えられた特別な力。

 しかし、恋に溺れた自分には相応しくないと、セレナはその力を閉ざしてきた。


 だが今、彼女の胸に広がるのは、ただ一つの願い—— リュカを探したい という想いだった。




 ある静かな夜、セレナは澄んだ湖のほとりで瞑想を始める。

 星明かりが湖面に映り、静寂の中で彼女の心は次第に研ぎ澄まされていく。


 「答えて……星よ。彼は、今どこに……?」


 その瞬間、頭の中に淡い光の粒が広がった。

 星々のささやきが言葉になり、セレナの心に届く。


 『南へ行け。星の門が開かれる場所へ。』


 声は優しく、それでいて確かな意志を持っていた。

 星が示す方向に、リュカの行方があることを確信したセレナは、立ち上がる。




 しかし、星の声を聞く力を取り戻したことで、セレナは新たな苦しみに直面する。

 星々は過去の記憶をも映し出し、封じ込めたはずの悲しい瞬間を繰り返し見せるのだった。


 リュカと過ごした甘い日々。

 掟に背いた罪として彼を失った痛み。


 「私の心がこんなにも弱いままで、星の導きを受ける資格があるの……?」


 だが、星はセレナを拒まなかった。

 過去の悲しみを乗り越えようとする彼女の意思を、そっと見守っているかのようだった。




 星の導きに従い、セレナは再び歩き出す。

 南の地へ向かう道のりは決して平坦ではないが、彼女の瞳には迷いが消えていた。


 「リュカ……今度こそ、あなたを見つける。」

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