結婚なき愛の国

第1話 自由の国の掟

　果てしない草原と、どこまでも続く青空の下に広がる国。

　この国を治めるのは、自由と冒険を愛する射手座の神。

　風のように生きることが尊ばれ、人々は束縛を嫌う。

　この国では、愛は永遠ではなく、瞬間の輝きとして称えられる。

　出会い、惹かれ合い、そして別れることこそが美しいとされる。

　結婚や家族という形に縛られることは、自由を損なう罪とされるのだ。

　神に仕える巫女として、国の掟を守る立場にあるセレナ。

　青い長髪に、澄んだ瞳を持つ彼女は、神の声を聞く力を授けられている。

　しかし、彼女の胸の奥には、誰にも言えない秘密があった。

　かつて、セレナはひとりの青年・リュカを愛した。

　瞬間の愛ではなく、未来を共に歩むことを願った二人。

　だが、その想いは神の掟に背くものとされ、無慈悲にも引き裂かれた。

　神殿の奥深くに封じられた、彼女の恋の記憶。

　それでも、心の奥底で燃え続ける想いが、セレナの運命を再び動かそうとしていた。