東大を出た俺は異世界では無能でした(remake)

@biology25

第1話 プロローグ

 俺は東京大学を卒業し、一流企業に就職した。親や教師たちが「いい大学に行けば将来は安泰だ」と言っていたから、それを信じて必死に勉強してきた。そして実際に東大に入り、世間的には成功ルートを進んでいると思っていた。


 だが、現実は甘くなかった。


 入社した会社は確かに名の知れた大企業で、給料も良かった。だが、仕事内容は退屈で、職場の雰囲気も俺には合わなかった。毎日決まりきった業務をこなし、無駄に長い会議に出席し、上司の顔色をうかがう日々。そんな生活を続けるうちに、俺はふと考えた。


——俺は何のために働いているんだ?


 子供の頃から「勉強しろ、いい大学に行け、いい企業に就職しろ」と言われ続け、その通りにしてきた。でも、いざ社会に出てみると、自分が本当にやりたいことなんて何もなかった。ただ漠然と「いい会社に入れば幸せになれる」と思い込んでいたが、そんな保証はどこにもなかったのだ。


 結果、俺は会社を辞めた。そして、今はニートをしている。


 実家でダラダラと過ごし、親の金で生活し、ゲームをして一日を終える日々。社会に出て働くのが嫌だったわけではない。ただ、何をしたいのか分からないまま仕事を続けることに意味を見出せなかった。


「はぁ……俺、何してんだろうな」


 天井を見上げてため息をつくが、考えても仕方がない。考えたところで答えなんて出ないし、何より考えること自体が面倒だ。


 そういえば、今日は『デスクリ◯ゾン』の新作発売日だったな。別に大して楽しみにしていたわけじゃないが、せっかくだし買いに行くか。もちろん、金は親のクレジットカードから引き落とされるわけだが。


「まぁ、何もやることないし、ゲームでもするか」


 結局、今日もそんな感じで一日が終わるのだろう。変わり映えのしない、何の刺激もない生活。だが、この時の俺はまだ知らなかった。この単調な日々が、突如として終わりを迎えることになるなんて。


 ——その日は突然訪れた。


 いつものようにゲームの電源を入れ、画面を眺めながらコントローラーを握る。だが、次の瞬間、画面が不自然なほど強く光り輝いた。


「……え?」


 驚く間もなく、光は俺を包み込み、意識が遠のいていく。身体がどこかに引きずり込まれるような感覚。頭がくらくらし、視界が揺らぐ。そして——


 目を開けると、そこには見知らぬ世界が広がっていた。


 石畳の道、異国風の建物、見慣れない服を着た人々が行き交う街並み——まるでゲームの中のファンタジー世界のような光景が広がっていた。


「……は? ここ、どこだ?」


 混乱する俺の目の前に、突然、宙に文字が浮かび上がる。


『クソニート更生RPG』——ゲーム開始


 俺は愕然とした。


 どうやら、俺は本当にゲームの世界に取り込まれてしまったらしい。

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