第13話

「雨宮、この補講中ずっと雑用やらされてない?」


クスクスと笑いながら広輝が言った。



「分かってくれる!?あたし集中攻撃されてるよね??」


唯子がそう言って嘆く。

しかしどこか楽しそうだ。

唯子はそうは言っても頼られるのが嫌いな性格では無い。


「雨宮はしっかり者に見えるからな・・・」


「見えるってどーゆー意味よ・・・」



睨む唯子。


しかし、唯子の手元のチェック表を見て広輝は呆れて溜息をついた。



「・・・雨宮、ここチェック一段全部ずれてる・・・」


「・・・え!?」



その後二人でチェックを入れ直した。







広輝は唯子と二人きりの夏休みの教室が好きだった。

時間が、ゆっくり流れればいいと願った。




「野原はホント、智也と違って優しいよね。」



そう言って、可愛く笑う唯子に胸の高鳴りと少しの痛みを同時に感じた。





「出来た!野原!ありがとう!!」


満面の笑みで言う唯子。

その言葉が合図で彼女はいつも席を立ち、職員室へと走って行く。



(オレは、雨宮が好きなんだろうな・・・)



特別な理由もきっかけも無かった。


ただ、一生懸命な彼女が可愛いくて、何時の間にか目で追う様になっていただけ。


小さな胸の痛みと共に広輝は彼女の後ろ姿を見送った。

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