第10話
男の人が、こちらを向いた。
「なに?」
甘くて優しいテノールが響く。
じっと、不躾に見ていたあたしを怪訝そうに見つめるのは琥珀。
「あの……えっと……」
人間、ビックリしすぎると喋れなくなるらしい。
頭をフル回転で動かしているのに全然身体に繋がらない。
「……っお兄さんは、天使ですか!?」
必死に発した声はあり得ない位に意味不明。
ほら。変な顔してる。
けどそれ位似てるんだ。
まるで天使が大人になって会いに来てくれたみたいな……
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