トリの王 トリンピック・決勝ラウンド
七倉イルカ
第1話 コロシアム
騒がしい……。
どうやらオレは、コロシアムの観客席に座っているらしかった。
巨大な円形闘技場の観客席、その中段あたりである。
どういうわけか、周囲にいるのは人間ではなく鳥であった。
ハト、スズメ、ニワトリ、白鳥、鷹、ペンギン、カラス……。
知っている鳥もいるが、大半は名前も知らない種類の鳥である。
騒がしいのは、この鳥たちが、ピイピイギャーギャーと鳴いているからなのだ。
「2025年トリ王世界大会、いよいよ決勝戦が始まります!」
コロシアムに声が響く。
階段状になった観客席。
オレが座る位置から斜め右下にテラス状の張り出したスペースがあり、そこにオウムと九官鳥、そしてセキセイインコの三羽が、マイクを前に陣取っていた。
おそらく、あの場所が放送席で、三羽は実況、解説、アシスタントを務めているのであろう。
「まずは今回も大いに盛り上がった、天下無双の鳥を決定する格闘部門!
陸上エリアでは、安定の強さを誇る、ヒクイドリ選手が決勝にコマを進めました!」
スピーカーからオウムの声が響く。
それに合わせて、コロシアムの底、中央に配置された円形状の巨大な舞台に、ヒクイドリが悠々と現れた。
顔から首にかけて、鮮やかな青色に染まり、その下に真っ赤な肉垂れが揺れている。
頭部にはプテラノドンのようなトサカがあり、おそろしく貫禄がある。
「ヒクイドリ選手の太い脚と鋭い爪から繰り出される蹴りは強烈無比。
世界一危険な鳥の肩書に偽りはありません。ハイ!」
「ピィピィ」
九官鳥が解説をし、セキセイインコが相槌を打つ。
「続いて、格闘部門大空エリア!
決勝進出は、前年度に続き猛禽類の覇者、オウギワシ選手です!」
翼長2メートルはある巨大な鳥が舞台に舞い降りた。
頭部の羽を扇状に膨らませて、力を誇示する。
「準々決勝で演じられた、カンムリクマタカ選手との死闘は素晴らしかったです。
カンムリクマタカの鉤爪は、捕まえた猿の頭部を砕くほどに強力で、その気性は人間を襲うほどに荒いですからね。ハイ!」
「ピィピィ」
「続いて求愛ダンス部門! 準々決勝に進んだペアは四組!
優雅な舞いを演じる、タンチョウヅル・ペア!
両翼で作る円形は愛の印、コウロコフチョウ・ペア!
漆黒に蛍光ブルーの羽毛、踊る姿は宇宙人、カタカケフウチョウ・ペア!
コミカルなダンスで会場を盛り上げました、アオアシカツオドリ・ペア!
この中で準決勝に進んだのは……」
四組八羽の鳥たちが舞台に上がる。
オウムがタメを入れ、観客席が静まり返る。
「カタカケフウチョウ・ペア!」
どっコロシアムが沸いた。
カタカケフウチョウのペアが舞台の中央に進み、オスがダンスを披露する。
「妥当な結果だと思います。初めて、カタカケフウチョウの求愛ダンスを見ると、シュールな色彩とパフォーマンスに言葉を失います。
知らない人が見たら、鳥にすら見えないでしょうね。ハイ!」
「ピィピィ」
「最速部門、決勝瞬出はハヤブサ選手!」
「急降下では時速389㎞の記録があります。
ただし水平に飛ぶと、ハリオアマツバメが170㎞でトップになります。
来年からは部門を分けた方がいいかも知れません。ハイ!」
「ピィピィ」
「悪食部門、決勝進出はペリカン選手!」
「ペリカンは、口に入れば何でも食べます。
ウサギやネコも食べようとします。
口に入らなくても食べようとします。
人間やキリンを食べようとしたこともあります。
目を見てください。サイコパスだと分かります。ハイ!」
「ピィピィ」
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