第4話 ローバ・IN・ノコピヨ♡SAKURA-LIVE②
〜♪
可愛らしい木琴の音色がポコポコとこだまする。
会場はヒノキのような香りに包まれて、まるで森の中にいるようだ。
いや幻覚だろうか、深い森が出現して周囲のみんなも同じように不思議な顔をしている。
ポンポン、とキノコが飛び出て、プクプク、とシャボンが浮き上がる。
フワリフワリ、とつぼみが開き、パステルカラーの花畑が広がる
パタパタ、と蝶が舞って、ヒヨヒヨ、と鳥が歌う。それに混じってほっぺがオレンジ色の鳥が歌っているが⋯⋯うん、既視感。
──モニカが大きく息を吸って
「らんららんらら〜ん さくらがゆれる
らんららんらら〜ん ひらひらおどる」
──ノコピヨの声がスッと広がる♪
「やわらかなそよ風のなか
ぼくらのハートをつれていく」
──ノコピヨがモニカと一緒にハートを作ると、大きなハートのエフェクトが会場に広がる♡
「道ばたの花がささやく
おてんとの笑顔がまぶしい
スキップしながら踏み出せば
未来がぼくらを待ってるよ」
──モニカとノコピヨがくるくるとまわると、ハートのエフェクトが集まって桜の花を形成してゆき、会場が桜の花に包まれる❀
「さくら さくら ハラリ フワリ
風にのって君のもとへ
さくら さくら ゆらり 浮かぶ
夢いっぱい さくら色」
──モニカとノコピヨがにゃんこのポーズをすると、かぎしっぽダンサーズが登場♡
「小川のそばでねころべば
葉っぱたちが手を振って
おにゃんこたちが しっぽ振る
世界はなんて ハートフル」
──モニカとノコピヨがにゃんこポーズでお尻をつき合わせる・かぎしっぽダンサーズはしっぽフリフリ♪
「ふわふわの春 おいでよここに
一緒にうたおう 春のうた
ひだまりの中 踊りながら
みんなのうたを 咲かせよう」
──ノコピヨが両手でハートを作りモニカがふう、と息を吹きかけるとブワッと桜の花びらとハートが乱舞する
「さくら さくら ヒラリ フワリ
空にとどけ 君のメロディ
さくら さくら ユラリ キラリ
咲かせよう 愛の花を、」
──モニカとノコピヨがキメのポーズをとり、可憐な顔が咲いた。
ゔお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!
会場の熱が跳ね上がり、パタパタとキュン死者が続出!!
一方、熱狂したファンがステージへ乱入! モニカちゃんとノコピヨちゃんへ迫る!! 危ない!! と思うが、私の体は動かない!!
「きゃああ!!」
「ケルス〜!!」
モニカちゃんとノコピヨちゃんを囲むようにファンが殺到する!!
「く、くるなでつ!!」
「モニカたん、危ないから下がって!」
──ドン!!
ノコピヨちゃんとモニカちゃんの前に巨大な影が差す。ステージに降り注ぐライトのせいでデカい何かが前に立ちはだかったように見え、二人は縮こまる。しかしその影は──
──茶トラのネコだ。
「かぎしっぽダンサーズ!?」
ノコピヨちゃんの声を聴いたのか、距離を確認するためか、わずかに首を後ろに回す。が、すぐに暴走するファンへと向き直る。
「ネコが俺たちを止められると思うなよ!?」
ネコに構わず一斉に襲いかかるファンたち!
「ふん!」
──ドバン!!
ステージを中心に人が舞う。ネコの回し蹴りの残身。
「何だあのネコ!? やべぇ!!」
「ひるむな!! 俺たちの憧れは目の前だ!!」
「数は圧倒的にこちらが有利だ!! 行くぜ!!」
「うおおおおおおお!!」
──ドバン!!
人が吹き飛ぶ!!
ネコの残身がもうひとつ。今度は白ネコだ。
モニカちゃんとノコピヨちゃんをバックに仁王立ちするネコ二匹。いづれもかぎしっぽだ。
「ミィーちゃん!?」
ビクッと二匹が反応を見せるが、構えは崩さない。
「お願い! その人たちは私たちのファンなの!! 傷付けないであげて!?」
「⋯⋯」
二匹はグッと肉球を見せた。
それがどう言ったサインかは解らないが、ノコピヨは意志が通じたように感じてニコリと微笑んだ。
──わあああああああああああああ!!
もみくちゃにされながら、二匹は誰一人怪我を負わせることなく鎮圧してゆく。
ステージから暴走したファンが消えた時、被服がボロボロになった二匹のネコが立っていた。ネコたちの着ぐるみの下にガタイの良い男性の背中や腕が見える。ところどころ怪我をしているが、痛がる素振りは見せない。
「ミィーちゃん⋯⋯いいえ、フミヤさん?」
茶トラのネコがビクッと反応するが、振り向くことはない。
「あ、あの⋯⋯ありがとう、ございます!」
ノコピヨが猫の腕に触れようとした時、サッと腕をおろして振り向くこともなくステージを立ち去った。もう一匹の白ネコがダンスを始めようとしたが、茶トラがポカリと頭を叩いて、首根っこを掴んで退場した。
シュタッ! ケルスがモニカの前に立つ。
「なんや、わいの出番は無かったみたいやな!?」
「ネコたんたち、めためたつおかったのでつ!!」
「まあ、ワイの方が強いけんどなっ!?
会場の混乱は収まったものの、ライブとしてはもう継続不可かと思えた。
あたしは少し残念な気持ちで肩を下ろしたが、ノコピヨちゃんはマイクを持って立ち上がった。
ツカツカとブリッジを歩いてセンターステージへと向かうノコピヨちゃん。
シュウ、と舞台装置による噴霧が行われ、会場に霧が立ち込める。
モニカ姫の無事を確認するとケルスに何事か話して退場を促す。
周辺の観客席から「ノコピヨちゃん頑張って!」と声援が贈られ、それに「ありがとう」とひとりひとり笑顔を振りまきながら歩くノコピヨちゃん。
ツカ、ツカ、一歩、また一歩の力強く歩くノコピヨちゃん。
うつむき加減だった顔をあげて、ヒュッと息を吸い上げた。
「ねえ 怖がらないで」〜♪
会場にノコピヨちゃんの声が浸透してゆく。
「ほら 顔をあげて 怖くなんてないよ」〜♪
〜♪
──ボロボロのかぎしっぽピアニストが伴奏を始める
「ほら もう大丈夫だよ 僕はここにいる ねえ だから笑って 僕が歌ってあげるよ 春の詩を」〜♪
──澄み切った水面に一滴の雫が落ちたように、ノコピヨを中心に声の波紋が広がる
「さくらさくら 桜の花を咲かせよう
夢の欠片を 私にあずけて
全てを言葉 声に 唄にして
あなたに笑顔 咲かせましょう」〜♪
──ひとつひとつの声色が厚みを持って、より遠くへと浸透してゆく ペンライトの花が咲き始め リズムに揺れる
「今日と言う日を 特別にするのは
別に難しい事ではないよ
あなたがそばにいて 笑ってくれる
それだけで特別だと思わない?」〜♪
──刹那、ノコピヨの持つステッキからビームが一閃
──次の瞬間、ビームが消えた後から桜の花が咲き乱れ、会場の全てを桜の花で埋め尽くしてゆき、感嘆の声が漏れる
「さくらさくら 桜の花を散らしましょう
今日と言う日は 永遠ではない
全てを風に 花に 光にして
あなたの涙 散らしましょう」〜♪
──会場を敷き詰めていた桜が瞬時にブワッと膨れ上がるように散り、風に煽られて花びらがホールを乱舞する
「とどけ 銀河の向こう 最果てへ
果てしなく続く 心の闇を突き抜けて
とどけ 深海の先の 最奥へ
澱み続ける 心の陰を照らし出して」〜♪
──ノコピヨのバックから強烈な光が放たれ、そのシルエットが浮き彫りになる
「さくらさくら 桜の詩を歌いましょう
あなたはもう 一人ではない
歌は遠く 深く どこまでも
世界に花を 咲かせましょう」〜♪
──伴奏が終わり残響だけが残り、やがてその残響も耳に残すのみとなる
「未来に花を 届けましょう」〜♪
──ノコピヨの声だけが会場に染み渡る
──深々とお辞儀をするノコピヨに拍手喝采
──会場が総立ちとなりスタンディングオベーションで本日のライブは終了した
⋯⋯。
感無量とはこの事か。
燃え尽きたのではなく、実に心が満たされた、そんな気分だ。
迷って、怖がって、意地張って、家に閉じ籠もっていた自分が情けない。半ば強引にでも連れ出してくれた皆に感謝しなければ。
人生、生きてみるもんだねぇ!!
楽しくって仕方ない!!
───────────────────
『さくら・さくら』
作詞:さくらのぼっち
作曲:SUNO
https://suno.com/song/830853ff-fb5b-4028-a50f-05b19ec183ee?sh=SC2VEBXt5n24dwhG
『さくらバラッド』
作詞:さくらのぼっち
作曲:SUNO
https://suno.com/song/a01ada24-d32e-45b3-ae46-e7071f365f2f?sh=ZOPYGQBxrF3qpFY8
以下未収録
「桜花繚乱の詩」
作詞:さくらのぼっち
作曲:SUNO
https://suno.com/song/39fed68e-460c-4356-8af4-534e1466dfa0?sh=QE1LLiwR1vjbTmb8
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます