第三章 最初の試練

翌日、リックとリリアは、王都の郊外に位置する迷宮の入り口に立っていた。噂には聞いていたが、目の前に広がる洞窟の入り口は、明らかに危険な雰囲気を醸し出している。

リリアは杖を構え、周囲を警戒している。リックは、父親から譲り受けた短剣を握りしめ、緊張で額に汗をかいていた。

「最初は、一番簡単な階層から試してみましょう」

リリアの言葉に頷き、二人は慎重に洞窟の中へと足を踏み入れた。じめじめとした空気、壁から滴り落ちる水の音。

暗闇が二人の行く手を阻む。リリアが杖から弱い光を放ち、周囲を照らした。

しばらく進むと、彼らの前に、いくつかの影が現れた。緑色の小さな体、ギザギザの牙。ゴブリンだ。

「油断しないで。数が多いわ」

リリアが低い声で言った。リックは剣を構え、前に出た。村で害獣の駆除などの仕事はしていたが、本物の魔物と戦うのは初めてだ。足が震えている。

最初のゴブリンが、リックに向かって短剣を振り下ろしてきた。リックは慌ててそれを避け、剣を振り上げたが、ゴブリンは素早く躱されてしまった。次のゴブリンが背後から襲いかかってきた。リックはパニックになり、剣を振り回すことしかできない。

リリアは魔法でゴブリンを攻撃しようとしたが、狭い洞窟の中では効果的な攻撃を繰り出すのは難しい。一匹のゴブリンの攻撃がリリアの腕をかすめた。

「きゃっ!」

リリアの悲鳴に、リックは我に返った。しかし、既に遅かった。数匹のゴブリンに取り囲まれ、リックは短剣を落としてしまった。

「くそっ!」

リックは素手で抵抗しようとしたが、小さいながらも力のある ゴブリンたちに簡単に押さえつけられてしまう。

「リック!」

リリアが必死にリックを助けようとするが、彼女もまたゴブリンの攻撃に苦戦している。

その時、一匹のゴブリンがリックの顔面に爪を立てようとした。リックは思わず目を瞑った。

しかし、次の瞬間、激しい音と共にゴブリンの体が吹き飛んだ。何が起こったのか理解できないリックが目を開けると、そこには 黒焦げた死体があった。リリアが放った魔法が、辛うじてゴブリンを倒したのだ。

しかし、力尽きた二人は、残りのゴブリンに囲まれ、万策尽きた。

「…逃げましょう、リック!」

リリアの言葉に、リックは頷くしかなかった。二人は持てる限りの力を振り絞り、来た道を戻り逃げ出した。背後からゴブリンの嘲笑が聞こえる。

なんとか迷宮の入り口までたどり着いた二人は、地面にへたり込んだ。体中が傷だらけで、息も絶え絶えだ。

「…情けない」

リックは、自分の無力感に深く落ち込んだ。村では力持ちな方だと思っていたが、本物の魔物の前では、まるで子供のように無力だった。

リリアもまた、悔しそうな表情を浮かべていた。

「…古代魔法を使うには、まだまだ修練が必要ね」

初めての迷宮探索は、二人に挫折を味わわせた。しかし、その経験は、二人にとって、一人前の冒険者になるための第一歩だったのかもしれない。

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