第35話 奈落の怪物

 対人戦の騒ぎも落ち着き、しばらく経った後、アルバートから次の授業内容が示された。


「次は奈落迷宮の奥まで潜ってもらう。そこで奈落の怪物との戦闘を積んでもらう」


 そう言いながら紙に描かれた怪物の絵を掲げていく。


「先生、その絵……獣人じゃないんですか……?」


 生徒の声に、アルバート先生は首を横に振った。


「よく似ているが違う、獣人や妖精のようでいながら、より獣のような意識を持ち、敵対してくる全くの別種族だ。だが、人型をとっている。だから先に対人戦を行ったんだ」


 豚の獣人に似た怪物、オーク。

 妖精のようでいて醜悪な生き物、ゴブリン。

 長耳種のようだが異なる種、ダークエルフ。

 そして人型ではないが、気高き竜種のようでいて全く違った存在、ワイバーン。

 それらの名前は、全て奈落の書物からとられたものだ。


「対話できる個体は今のところいない。話せばなんとかなるという考えは捨てろ。それも命を守るためだ」


 それを聞いて、フィトリがおずおずと手を挙げた。


「それって、この授業で死者が出るかもしれないってことですか?」


 アルバート先生は頷いた。


「無論、そうならないように討伐隊員を配備してはいるが、あまりに迂闊な行動をとれば死者が出てもおかしくない。訓練とはいえこれは戦闘行為だ。俺が止めといったら止まる対人戦と違い、奴らは止まってはくれない」


 それでも、この戦闘経験を積む必要がある。


「それは魔物も同じことだ。俺達は常日頃から襲われる危険に晒されている。故にこの授業を通して身を守り、撃退するすべを身に着けて欲しい。魔物と違って背後にいきなりあらわれないだけ、奈落の怪物共のほうが幾分か優しいからな」


 今日は奈落の怪物共の資料を読み進めてまとめるようにと、資料が配られていく。それは、奈落討伐隊が実際に交戦した記録の数々でもあった。


「……結構、群れで行動することも多いんだ……」


 ルイスの言う通り、怪物達は群れを形成し集団で襲いかかることも多いと書かれている。


「奈落討伐隊でも、奈落には単独で潜らないと聞くのはこのことがあるんだろうな。真っ向から戦うとなると数が必要になる」


 ケネスが資料を見ながら情報をまとめていく。


「班行動を授業で多く取るのも、連携を取りやすくするためだったのかもな」

「そうかもしれないわね。とはいえ連携を発揮させて戦うなんて未経験だわ。アルバート先生はどんな授業をしてくれるのかしら」


 イザベラの言葉にフィトリもうんうんと頷いた。


「楽しんでいいのかわからないけど、アタシは楽しみ!ちゃんと戦えるようになっていってるんだもん!!」

「そうだね、戦い方を教わるって大事なことだもんね」


 学園がなければ、何も知らないまま魔物や奈落の脅威に晒され戦うことになっていた。準備があるかないかだけでも大きく違う。


「この授業も頑張ろう。皆で進級して卒業するためにも乗り越えなきゃ」


 ルイスの言葉に3人共頷いた。

 皆の意思は同じであった。

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