12 遊ぶ
(服とか適当なのでいいだろ)
日曜の朝、正斗は寝起きの頭でそう思いついたままに、Tシャツにチノパンという格好で家を出た。
天気予報は的中し、朝八時の太陽には一片の翳りもない。
風があり、湿度もここ数日ではかなりマシなほうで助かった。湿度が高いと実際の気温以上に体力が奪われる。大鶴と出掛けるからといって別に気負うことなんてどこにもないが、遊んでる途中でしぼんだ風船のようにへばるのは避けたかった。
正斗が家まで迎えに来るのは目立つから絶対にやめろと言ったから、県北にある水族館の最寄り駅で集合の予定になっている。
大鶴はそうやって待ち合わせすること自体にすらウキウキしている様子だった。低燃費な宇宙人だ。
正斗の場合、待ち合わせの駅まではバスと電車で行かなくてはいけない。
(暑いなー……)
ぼんやりとぬるい風を感じながらバス停までの道を歩く。
先客はいなかった。たどり着いたバス停の申し訳程度の日陰に立ち、今か今かとバスの到着を待っていると、ふいに隣に人の気配が湧いた。
え、とそっちを振り返る。
いつの間に、どの方角からやってきたのか、女優帽にサングラスの背の高い女性が立っていた。この黙っていても華やかな存在感……。
(……この人、どこかで見たっけ?)
女性が何となく大鶴と似たような非実在存在じみた波長を発しているように感じて、既視感の正体を探る。これだけ目立つ人なのだ、見かけたとしたらテレビか、雑誌か。
長々と不躾に見ているわけにもいかないから、視線は前に戻す。
そのときだ。
女性がくすりと笑った。
「きみが、奥田正斗くんね?」
「……っ」
ぼんやり夢見心地だった意識に冷や水をぶっかけられた心地だった。
奥田正斗は当たり前に奥田乃愛の息子で、玲於奈の弟で、この町で知らない人に名前を確かめられるということに良い記憶はひとつもなかった。
しかしそうやって身構えた正斗の緊張も、女性はお見通しのようだった。
宥めるような柔らかい声で「大丈夫よ、楽にして」と言い、サングラスを外す。魔女じみた美貌がにまっと笑みの形になる。
「初めまして、芦原美束よ。大鶴の同業者なの」
「……探偵さんですか」
大鶴と似ていると思ったら、そういうことか。
「どうしてこんなところに?」
探偵の仕事で来たのか、いつまでも田舎町から帰ってこない大鶴を連れ戻しに来たんだろうか。それにしたってわざわざ正斗のところに来る理由が分からないが、……何か大きな事件が起こったとかで大鶴が必要なのなら、今日の予定はとうぜん中止だし、きっと次回なんか訪れないだろう。
というか大事件って、血が絡むものじゃないだろうな……あの探偵さんが血がダメだって、どの程度同業者に知られているんだろう。
頭の中が一気に乱雑な思考で埋め尽くされてもうぐちゃぐちゃだ。
ポケットの中のスマホを無意識に指先で確かめて、だが次の行動に移れない。
眉間に皺を寄せてうつむいた正斗に、芦原がふふふと面白そうに笑い、
「きみのことは大鶴から聞いて知ってたわ。あの大鶴がここまで入れ込むなんてどんな子なのかなーって、旅行がてらちょっと顔を見に来ちゃった」
「……仕事じゃないんですか?」
「ええ、本当にただの興味本位」
芦原はあっさり答えた。
少しは悪びれてもらいたいものだが、大事件が発生した可能性が消えて少し気持ちが落ち着いた。
(いやでも、顔を見に来たって何だよ?)
興味が湧いたからって忙しい探偵がわざわざ?
かけている時間と手間を考えると、芦原はよほど大鶴を気に掛けていると言うことになる。それはどういう立ち位置で?
正斗は何も言っていないのに、芦原が「あら」と口元を手で押さえて目を丸くした。
それからにまにまと笑って、
「頭の回転が速い子だっていうのは本当みたいね。大鶴のヤツさぁ、きみとのデート先に悩みすぎて私に意見を仰いでくるくらいだったのよー。万事自分ひとりで完結してたあの大鶴が、変われば変わるもんよねぇ。笑っちゃったわよ」
「……」
大鶴は芦原にデートプランの相談をしていたらしい。
ちらと見た芦原の両手はUVカットの黒いレースの手袋に覆われている。左手の薬指の様子は分からない。
落ち着いたはずの気分がまた下降していく。何だか胃がむかむかする気がする。
小堀たちにも気づかれるくらい、最近は雀の涙ほどの食欲が改善されてきていたが、一歩進んで二歩下がることになるかもしれない。
「……、あのもしかして、……元カノとかそういう、」
「あ! もうこんな時間、行かないと!」
正斗の掠れ声を遮って、芦原が思い出したようにぽんと手を叩いた。
サングラスをかけ直し、腕に引っかけていた柄が木製の日傘をばさっと広げる。
日陰から出た芦原は正斗ににっこりと楽しげに笑いかけ、
「それじゃ私はもう行くわね! 絶好のお出かけ日和だし、デート楽しんでね~!」
有無を言わさぬ勢いで押し切るように、芦原は旅行中とは思えない高いヒールを鳴らしながら去って行った。
質問の答えも得られなかったし、ぽかんとしていた正斗は完全に置いてきぼりだ。
探偵って人種はどうしてこうみんなマイペースなのか。
◆
水族館の最寄り駅構内では、案の定すでに大鶴が人間ランドマーク状態だった。
ちらちら見られたり、サインや写真を求められたり、あからさまに人待ち顔をしているのに女子大生らしきグループに逆ナンされているのが、遠目にも見えた。
こうして他人事として眺めると、こんな存在自体がトンチキな男の待ち合わせ相手が自分だなんて現実が間違っているような感じがしてくる。
(これで逆ナンに浮かれてたら俺も素直に帰れたのに)
さっき芦原さんって人に話しかけられて牽制みたいなことされたんですけど、俺のこと話したってどういうことなんですか、と開口一番問いただすことだってできたのに。
それでも、大鶴が可愛い女子大生たちをさらっといなして、何らかの動物的勘で十メートル先に佇んでいる正斗を見つけるなり、にこりと笑って嬉しげに手を振ってくるから、不機嫌にきびすを返すことができない。
バスに揺られている間もずっとくすぶっていたもやもやが、それで多少小さくなった。
(……くそ……)
自分の感情の動きを客観的に観察すればするほど、論理的な答えがすぐそこまで迫っているのが分かる。
正斗はわざとたらたらと歩いて大鶴のところまで行った。
「遅れてすみません」
いちおう謝ると、大鶴に注目していた群衆が「えっ、待ち合わせ相手この子?」とどよめいた。……逆ナン断るときに何か変な説明しただろ絶対。
「いえ、僕も今来たところですよ……というのをやってみたかったんですよねえ。さすが奥田くん、完璧な第一声です」
「そうだろうなと思ってましたよっ。あの、さっき逆ナン断ってたとき、まさか俺のことについて要らんこと言いました? 言いましたよね?」
「はぁ、要らんこととは? 僕はこれから本命とデートだと事実を伝えただけですが」
「それを要らんことって言うんです!」
正斗が怒っても大鶴は小揺るぎもせず、お花畑でも背景に見えそうな笑みを浮かべたままだ。人目が気になっているのは結局正斗だけだった。
言っても無駄だと見切りをつけて、「早く行きますよ」とその背を押して歩かせる。
そんな風に雑に扱っても、大鶴はご機嫌に従った。
水族館に行くのなんて小学校の頃の遠足以来だ。
本来人間が酸素ボンベなしには見られないはずの景色が、限られた敷地にぎゅっと缶詰のように閉じ込められている異世界感は、けっこう好きだった。
正斗は順路に従って薄暗く真っ青な世界を大鶴と並んで歩いた。
行楽日和の日曜日、館内は家族連れやカップルで賑わっていて、男ふたりはどうしても浮いているんじゃないかと感じてしまう。
このデートプランがそもそも芦原のアドバイスにのっとったものだとすれば、こういう異物感を正斗が覚えているのは狙い通りだったりするのだろうか。
(……嫌だな)
ガイドのお姉さんが「そーっと水に手を入れて、優しく触ってあげてくださいねー」と案内してくれる中、タッチタンクで生きたナマコを触っていると、その触感への感想と芦原への感想がダブった。
「奥田くんはナマコ苦手ですか?」
正斗の眉間の皺に気づいて訊ねてくる大鶴は、大きな手でヒトデを掴んでいる。お菓子のつかみ取りでもしているみたいな、およそ小さな生命に対する気遣いというものが感じられない手つきだ。
合流してからこっち、大鶴が案外細やかに正斗の反応を見ていることには気づいていた。楽しめているか、嫌がっていないか、自分に気を遣っていないかと。
正斗はかぶりを振り、
「苦手じゃないですよ。宇宙人の皮膚って触ってみたらこんな感じなのかなとか、色々考えさせられますし」
「ははは、海の生き物が宇宙の生き物と同じ肌をしていたら面白いでしょうね」
「……適当言ってますね。お互い」
考え事の内容を素直に言えないから適当な思いつきでお茶を濁しているだけなのに、大鶴は意地でも会話のキャッチボールを成立させる気らしい。
がんばってるな……と思わされてしまうのは、もう術中に嵌まっているんだろうか。
自分の機嫌があまりにも細かく上下しているせいで、体感時間が普段より速く過ぎていく。
通路の奥へ続く分厚いガラスの向こうで、魚の群れが銀色に輝きながら泳いでいる。
「小学校の遠足のとき、玲於奈が……」
ふとよぎった記憶が口をついてしまってから、はっと口をつぐむ。
反射的に隣の整った顔を振り仰ぐと、さっきまでと何ら変わりない笑みが返ってくる。
まぁ、今さらだ、基本的な情報はみんな知られてしまっている。
少しの逡巡ののち、正斗は結局口を開いた。
「……兄がクソガキすぎて、シャーペンでこのガラス割れんのかなとか言い出したのを必死に止めたの思い出しました」
「はは、小学生男子らしい野望ですね」
「俺はめちゃくちゃ恥ずかしかったです」
言いながら、本当にただの雑談、家族の愚痴として普通に聞き流されたのにほっとした。そんな歳のころから玲於奈くんは乱暴なところがあったんだねとか、冗談でもけしからん、玲於奈ならやりかねないと真剣に腹を立てられたりとか、大人からはそういう反応ばかり食らってきたから。
水槽の中にはたまに人間の姿もある。
職員が汚れを掃除しているのだ。
大鶴がそれを見て「水族館のあれ、いいですよね」と出し抜けに言う。
「自分が一方的に観察する側だと思っているところに、突然こっちを向いている人間が現れて、目が合ったりする。認識がひっくり返ってちょっとした緊張が走るこの感覚が、子どものころから好きなんですよ」
「へー、なんかまたねじ曲がった楽しみ方を……」
あれ、と正斗は言葉を切った。
(子どものころから?)
「どうかしましたか?」
青いライトを背にして、大鶴が正斗の顔を覗き込んでくる。
正斗は反射的に一歩下がった。
怪訝そうな視線からそっぽを向いて逃れ、
「……いや、今日の行き先に水族館を選んだの、単に昔からの探偵さんの好みだったんだと……思って」
「? それはまぁ、自分が好ましい場所でなければ好きな相手を誘ったりしませんよ。他にどんな理由が?」
「………………芦原さんて人の入れ知恵なのかと」
言った。
思い切って言ってやった。
大鶴は珍しくぽかんとして、それから弾かれたように自分のスマホを確認した。
はぁああ……と大きく溜め息をついて額を押さえ、
「被疑者からご丁寧に自白と申し訳程度の謝罪が綴られてきてました。探偵が感じるストレスの八割は同業者の性格の悪さに起因しているとも一説には言われているんですが、どうやら真理だったようですね……」
「芦原さんに俺の話をしてたってのは本当なんですね」
即座に大鶴の発言の意味を取って、尖った声で指摘する。
どうせ思い切ったなら、とことんまでぶちまけてやろう。
「で、元カノ? それとも現カノ?」
その瞬間、あの大鶴が、本気でこの世の終わりみたいな顔になった。水族館の異世界感ただようライティングもあり、容貌が人並み外れて優れているだけに神話の登場人物の悲劇的な死をかたどった彫像みたいだった。
(……何だ、どっちでもないんだ)
正直、その反応で元カノでも現カノでもないことは明白だったが、正斗はあえて何も言わなかった。
大鶴がこのあとどんな行動に出るか気になったからだ。
ずっともやもやしていたのはもうどこかに吹っ飛んでいた。
「事 実 無 根です……!!」
大鶴が正斗の両肩に縋るように手を置いて絞り出すように言った。
「確かに奥田くんの話はしました、そしたら先日あれから調子はどうだと電話がかかってきて、どうもこうもない、きみを好きになったとも言いました!」
「まず言うんじゃねーよそんなこと!」
「でも、決してアドバイスを求めたりはしていません! 今まで天候を理由にきみにすげなく断られてきた数々のプランも、今日のプランもすべて僕が考えたものです! 僕がどうして好き好んで、奥田くんとのことに他人の口出しを許すと思うんですか?」
よほど心外なのか、絶妙に正斗の罪悪感を刺す言い方をしてくる。ほんっとうに大人げない。
「そして芦原さんは既婚者です。というか、自分の助手と恋人になって結婚した探偵という意味では僕の先人、パイオニアですよ。その地位を笠に着て、興味本位できみにちょっかいかけに来たんです。僕と関わりの深い仲なんだと誤解されるような物言いをしたのもわざとでしょうね。なので彼女に言われたことはいったん存在ごと忘れてください、ぜひ。今すぐに」
「……、はあ」
存在ごと忘れろって真剣に言う台詞かと思いつつも、大鶴の剣幕に圧されて正斗は頷いた。
大鶴はそれでようやく語気を落ち着け、
「あぁ、もうイルカショーの時間が……。こんな益体もない話はやめて行きましょう、奥田くん。せっかくのデートですし、早めに行って最前列を取りたいです」
「そんなの、忙しないですよ」
正斗は腕時計を見ながら先を急ごうとする大鶴のジャケットを掴んで止めた。
「俺は後ろの席で構いませんから、ゆっくり行きましょうよ。ショーが始まったらしばらく話もできないですよ」
大鶴が肩越しに正斗を振り返り、目を瞠る。
「……そうですね。いいですか、後ろの席で」
「ええ、そのほうがいいです。水もかからないだろうし」
サメの水槽に目をやりながら頷くと、大鶴がふっと息をつくように笑った。
芸達者なイルカの躍動を楽しんだあと、またしばらく館内を巡って、満足した正斗たちはレストランへ昼食を摂りにいった。
「チケット代払ってもらったし、昼飯は俺が出しますから」
どんなに気をつけていてもいつの間にか会計を済ませてしまう大鶴も、大鶴と正斗の並びを見ると最初から大鶴が払うものだと決めつけてかかる店員も、もう経験済みだ。
席につくなり断固たる口調で宣言すると、大鶴は困ったように肩をすくめた。今回もとうぜん自分が会計戦争に勝つつもりなのだ。
「前々から不満だったんですが、僕はきみに高校生に代金を出させるような男と思われてるんですか? きみが助手になってくれるなら、大学の学費も出す約束だっていうのに」
「俺は結んでないですけど、そんな約束」
メニューをテーブルに広げながら正斗は小さく笑う。
「探偵さんが勝手にそう宣言してるだけですよね。大学行くなら行くで、学費は自分ちからちゃんと払えます。母親も、父親が遺した保険金のうち俺の取り分の範囲でなら好きにしろって言うだろうし」
「進学も視野に入れることにしたと? どういう心境の変化か分かりませんが、奥田くんなら成績は問題ないでしょうね。小堀くんと増岡くんに話したら、きっと小躍りして喜びますよ」
正斗は首を傾げて向かいに座る大鶴を見た。あんたは? と目で訊く。
すると大鶴は一拍おいて苦笑し、
「僕は、囲い込みから逃げられてまた一段と旗色が悪くなりますかね。……困りました。学費と言わずその先も、パトロンでもいいからそばにいさせてもらいたいんですが」
「え、もう金銭的な負い目で縛ってもいいか、みたいに考えてたんですか?」
そんな臆病風に吹かれているようには見えない前のめりさだったから、想像もしていなかった。
「そうですね。この際、きみは僕を都合の良い男にしていい」
(……怖……)
にこりと微笑まれて、内心ちょっと引く。
大鶴はメニューに目を落としながらむしろ穏やかなくらいの声音で続けた。
「感情のスタート地点はどうとでも妥協しますから、最終的にはやっぱり、僕の助手と恋人になってほしいです。僕は一回だけちゃんと考えると言ってもらえた程度の、首の皮一枚かろうじて繋がってる立場ですし、なりふり構っていられないんですよ。もし進学するなら学費、甘えてもらえませんか?」
「イヤですよ。父親由来のカネは、むしろ積極的に使い果たしたいんです」
どこからどこまでが父親の関与がなければ生まれなかった資産なのか、今さら明確に境界を区切れるわけではないが、できる限りはそうしたい。
「人並みかそれ以上に暮らせてることが漠然と後ろめたいのはもう嫌なんで、せいぜい勉強して、少しは世間のためになる職に就くこうかなって。……しょせん自己満なんですけどね」
「いやいや、自分が満足することは大切です。そういう理由なら、探偵助手なんかおすすめですよ?」
「……」
間髪容れず勧誘に繋げるその反射神経はどうなっているのか。
呆れつつも、いつもなら即「嫌です」と言うところで、正斗はそう言わなかった。
まともに内容を読んでいなかったメニューを閉じ、顔を上げる。
正面から大鶴と視線が絡んだ。
「――なってもいいですよ、助手」
「恋人は?」
……この野郎。
正斗の認識が正しければ、いま自分はものすっっっごく、思い切って大鶴の要求を呑んだセリフを口にしたはずだ。
なのに、即座にそれプラスアルファ、要求のすべてを呑むように急かしてくるってどういう神経してんだ。
「~~あのですねぇ……!」
「恋人は、ダメなんでしょうか?」
文句を並べ立てようとした矢先、大鶴が繰り返した。
恐ろしいほどの真顔で、まるで緊張に温度を失っているような平たい声で。
「……」
いつしか、大鶴の両手はテーブルの上で白くなるほど握りしめられていた。
それを見て、正斗は飛び出しかけた罵倒をやむなく呑み込んだ。
(宇宙人め……)
もっと分かりやすい常識的な反応をしろってんだよ。
「…………ダメじゃないですよ」
ぼそりと答えた瞬間、立ち上がった大鶴が目にも留まらない速さで正斗の頭を引っこ抜こうとした。
わけじゃなく、正斗がそう疑うような勢いで、身を乗り出して正斗を抱きしめてきただけだった。
「!? ちょっ、いてぇ!! 離して下さい!!」
怒鳴ってべしべし腕を叩いても大鶴は返事をしない。
レストランの客も、ウェイターも、きょとんとふたりを見つめている。
大鶴がどうしても言うことをきかないので、結局正斗は諦めて脱力した。好きなようにさせるしかない。
ひとしきり正斗を圧死寸前まで追い込んで、ようやく大鶴が人語を話した。
「……っ、大事にします……!!」
「ソウデスカ……」
昼を食べる前で良かった、と心から思った。
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