第8話 35才の女で悪かったね、院卒で!今はバーの雇われママしよるよ!

 iPadに乗車するバス毎の空席あり、なしのタッチパネルがあったばい。小倉23:20発、大阪梅田07:20着…幸い空席、あるやん。よしよし。片道3千円ちょっとやね。そげん高うなかね。ポチッ…って、うち、何しよるとやろ?大阪行ってどげんすっちゅうと?…ポチッ…あ!押してしもうた。押してしもうたばい。もう、行くしかなかやん。うち、内心、「何やっとるんやろ、うち。勢いで押してもうたっちゃ」と呆れとった。


 乗車したっちゃ。左右二席の座席配置やね。間に仕切りがあって、顔ばおおう乳母車についてるようなフードがある。悪うなかね。シートに落ち着いたばい。うち、内心、「意外と快適やね。これなら寝れそうやっちゃ」と少し安心した。家から真空ポットに入れて持ってきたニンジンとグレープフルーツのジュースばグビリ。ちょっとほろ苦か。野菜や果物のジュースっち、三種類以上ミックスするとは好きやなかっちゃ。うち、内心、「二種類までがええね。シンプルが一番やっちゃ」と唇ば拭いた。


 あれ?いつの間にか下関やん。バスは数回、トイレ休憩でサービスエリアに泊まるらしか。夜行バスなんて乗ったことなかけん、これはこれでよか経験やね。もう、午前になっとうて、カーテンばちょっと開けて外ば見たら、家々が後ろに流れていきよる。ふ~ん。うち、内心、「流れていく景色、なんか旅っぽかね。嫌いやなかっちゃ」と少しテンション上がった。


 黒のワンピースば着てきたばい。ミキちゃんの黒尽くめに合わせたわけやなかっちゃけど。梅田かフェリーターミナルで化粧しよう思うて、今はスッピンやっちゃ。いつも鏡ば見ると日に日に年取っていく気がするっちゃけど。気のせい、気のせいやね。でも、35才っちゅうのは動かせんばい。うち、内心、「鏡見るたび、シワ探しよる自分に笑えるっちゃ」と苦笑いした。


 あ~あ、こんなことなら、前の彼氏で手ば打っとけばよかったかいな。でも、言われたっちゃもんなあ。「大学院卒なんて、俺には釣り合わん」っち。悪かったね、院卒で!院卒やろうが、なんやろうが、今はバーの雇われママやけんね!うち、内心、「あの男、頭硬かったばい。今さら思い出しても腹立つっちゃ」と昔の悔しさがよみがえった。


 あ~、うち、何しよるとやろ?宮部さんとミキちゃんば待ち構えてどげんすっちゅうと?我ながら意味不明やっちゃ。梅田まで行ったら、大阪南港のフェリーターミナルなんか行かんで、大阪ばグルッと回って、小倉に帰ってしもうかいな。うち、内心、「ほんとに何しに行くんやろ。ミキちゃん迎えるって言い訳やろか」と自分で自分にツッコミ入れた。


 宮部さんとミキちゃん…宮部さんとミキちゃん…宮部さんとミキちゃん…。お風呂に一緒に入ったりしてね。二人で触りあったり、あんなこと、こんなこと、しよったりね…しよるっちゃろ?そりゃあ、しよるわね?うち、内心、「あの二人、今頃スイートルームでイチャイチャしとるやろ。想像するだけでムカムカするばい」と嫉妬が湧いてきた。


 なんか、想像したら、悶々としてきたっちゃ。他の乗客は眠っとうみたいやね。半分以上、席は空いとる。うちの前後にも誰もおらんっちゃ。あら?うち、太腿の付け根なんてさすって、何しよると?おっと、ジンとする。ジンとして、宮部さんとミキちゃんが絡み合っとう光景が見えてしもうて…お~い、木村直美、35才の女が一人旅のバスん中で、自分でなぐさめてどげんすっちゅうとよ。惨めやねぇ。うち、内心、「何やっとるんや、うち。こんなとこで悶々しとる自分、情けなかっちゃ」と恥ずかしさが込み上げた。なんて思いよったら、いつの間にか寝てしもうたばい。


 途中で、ミキちゃんたちの瀬戸内海ば進んどるフェリー、追い越したっちゃろうな。外が眩しかなった。うち、内心、「あの二人、楽しんどるやろな。うちはバスで寝とっただけやのに」と少し悔しかった。


 梅田に着いたばい。7時20分、定刻どおりやね。到着したバスステーションは大阪梅田駅まで徒歩10分やっち。梅田まで歩く?それで、クルッと回って、大阪で買い物して帰ろうかいな。それとも、新大阪まで行って、新幹線で小倉まで帰ってしもうかいな?うち、内心、「買い物して気分転換するか、新幹線でさっさと帰るか、迷うっちゃ」と考えとった。


 え?おいおい。うち、なんで手ばあげて、タクシー止めようとしよると?「運転手さん、大阪南港のフェリーターミナルまでお願いします」って、何言いよるんね。ダメやろ、直美。うち、内心、「やっちゃったばい。口が勝手に動いてしもうた」と焦ったっちゃ。


 20分ほどで、フェリーターミナルに着いてしもうたばい。トイレに行った。化粧したっちゃ。うん、夜行バスで一晩明かしたようには見えんね。35才にしては、うち、若く見えてキレイな方やと思うばい。自信ば持とうや。うち、内心、「鏡ん中の自分、悪うなかね。まだまだイケるっちゃ」と気合い入れた。


 でも、二人ば待ち構えると?ほんとに?う~ん、ミキちゃん、迎えに来たばい~、っち明るく言うつもりやっちゃ?手なんかつないで、下船口から出てきたら、どげんしようかいな?うち、内心、「ミキちゃんに会ったら、どうやって振る舞うか分からんっちゃ。ドキドキしとった。そやけど、同時に、「ミキちゃん迎えるんやけ、笑顔でいこうや」と自分に言い聞かせたばい。

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