グレースノート

🎍三杉 令

第1話 4月8日

 校庭に優しい風が吹いた。


 私立桜木高校――文字通り校庭には桜の木が何本も植えられていて、この時期に満開の花を咲かせる。


 2年2組、クラスのメンバーは知っているやつばかりだが、どうせあまり話はしないので興味は無い。僕の名前は朝倉こう。元々平均的、平凡な男子という位置付けだったが、雑用ばかりで嫌になって部活を辞めてからは、ネクラになり部活同様クラスでも2軍落ちだ。


 そもそも1軍とか2軍とか、そんなクラスのカテゴリー分けが馬鹿々々しいと僕は思う。結構みんな心の中ではそう思っているはずだが、目立つのが嫌なのか反論する勇気のあるやつはいない。


 クラスに苦々しい1軍のやつが一人いる。緒方秀一しゅういちだ。

 野球部の次期エース。背が高くてイケメンで運動神経抜群。さぞかしモテると思いきや、そうでもない。彼は性格が悪くて粗暴なのだ。さすがに部活中はおとなしくしているが、先生の目が届かない所では男子はもちろん女子や上級生にさえ荒っぽい態度を示す。


 野球部を辞めてから僕は緒方とほとんど話をしない。からかわれたり馬鹿にされたりすることはあるが、いつも無視している。それにしても、よりによって二年生になって緒方と同じクラスになるとは僕もついていない。そんな事を考えていると始業のチャイムが鳴り、先生がやってきた。


 教室のドアを開けて入ってきたのは担任の品川先生。まだ若い男の先生で性格は淡泊。あまり教育や生徒指導に熱心ではない。授業も淡々とこなすタイプだ。先生は自己紹介や今後の予定などを事務的に述べてから、突然予想もしていないことを言った。


「一人新しい仲間が来ることになった。

「「え?」」


 どの生徒も「人間じゃない」というワードに驚きの色を隠せなかった。品川先生はメガネを触って生徒の表情を確認すると、ドアの向こうにいるであろう、僕らの新しい仲間を呼んだ。

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