第18話 ラファティの告白

「ソラリスから聞いたよ」

 土産の菓子を渡しながら、苦笑しつつラファティは言った。ソラリスは、剣術の稽古に行っている。

 緩やかな午後、池の畔の四阿でロゼと会っていた。池には鯉が泳いでいて、時折水面に顔を出してはぱくぱくと口を開いていた。

 ロゼは思わず顔を上げてラファティを見る。ラファティはやれやれ、と言うように笑った。

「1年間、レアルに行くそうだね。血が……姉弟としては、血が繋がってないとか……」

「そう……ソラリスから聞いたの。私も知ったばかりなの。父さまから従兄弟なのだって聞いたわ」

「ロゼはどう思ったの?」

 え? と聞き返して顔を上げれば、ラファティは真面目な顔をして自分を見ていた。

「どうって……驚いたわ」

「そういうことじゃないんだけど……まあ、いいか」

 敵に塩を送ることはないもんね、とラファティは心のなかで思う。

 見ればロゼは当惑した表情を浮かべている。本当に困惑しているのだろうと思う。自分からすれば、わかってみれば納得の行くことのほうが多かったが。

「僕をロゼの虫除けにって言われたよ」

「ソラリスったら……。ごめんなさいね、ラファティ」

「いや。願ったりだからね」

 ラファティはにこにこと笑う。その笑いをふと引っ込めて、ロゼを見つめた。

 つぶらな瞳が印象的の愛らしい子だと思う。その華奢な体に、ソラリスはどれだけ触れたのだろうと考えて、心のなかに靄がかかった。

 ラファティはロゼの手を取った。ロゼが驚いたように自分を見る。ラファティは言い聞かせるように、ロゼにゆっくりと言葉を繋いだ。

「1年かけてもいい。俺のことも考えてくれないか」

「私……」

「俺はロゼが好きだよ」

 ラファティは切なくなりながらもそう口にした。ロゼが見ているのはソラリスだ。それが弟としてなのか、それとも、異性としてなのかはわからない。けれども、自分よりもソラリスを気にかけているのは確かだった。

「君が好きだ。時間がかかっても良い。婚約、前向きに考えて欲しい」

「ラファティ……私」

「今は返事はいらないよ。ゆっくり考えてもらって構わないから」

 ロゼがぎこちなく頷く。

 ソラリスは、もう告白したのだろうと思う。そうでなくては、自分に虫除けになれなどと言うはずがない。まったく、油断も隙もないとラファティは思う。時間の密度で言えば、自分のほうが圧倒的に不利だ。しかし、これから1年レアルに行くという。それならばその間に、逆転することも可能かもしれないと思う。

 ソラリスには申し訳ないと少しだけ思うが、遠慮する気はないよ、と、ラファティは心のなかで思ったのだった。

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