第21話 子供の闘い3
自分を呼ぶ声に
気がつくと瞳に映ったのは六面体の中、結界の中にまで響く声が
「カナちゃん!私、カナちゃんに言わなければならないことがあるの!」
それは
「ワタ……さん?」
「クさんが秘密にしろって言ったから言わなかったけど!今……クさんは闘っでいる!」
それがどういう意味なのか
どうして?何のために?
そんな言葉を口にする前に、
「カナちゃんの願いを叶えるために!クさんもすごく頑張ってる!」
「
「私はね、カナちゃん!ハッピーエンドが好き!毎回『この作家はありきたりなハッピーエンドばかり書いている』とどやされるが、それでも私は『物語』でだけはみんな幸せになってほしい――という気持ちでいつもハッピーエンドを書いているの!」
いったい自分が何を言っているのかも分からないまま、
「だから!私がハッピーエンドを書いているのは現実でもハッピーエンドが見たいからだよ!クさんがカナちゃんを助けて!カナちゃんもトラウマを乗り越えて!」
最後には!
その一言に力が抜けたのか、
「みんなで……同じ食卓でご飯を食べる、そんなハッピーエンドが見たいの」
「ワタさん……」
結界の中で
不思議だ。さっきまでは押されるばかりで、結界に押し潰れるだけだったのに。
(押せそうです。いや――)
「だから!」
続いて
「ハァアアアアアアアッ!」
「そんな結界、ぶち抜いて!!!」
ドン!!
「ううっ……!」
苦痛に満ちた表情で
(おかしい。体は痛くないのに)
まるで拳の中の骨にひびが入ったような痛みが響く。
それを遠くから見ていた
「やっぱチビだな。素人の素手でプロの結界を破れるはずないだろ?馬鹿正直に突っ込んで自分の魂を傷つけるとは……まあ、初めてにしてはひびが入っただけで五十点くらい――」
「それなら!」
そのまま
それは絆創膏。
(傷ついたのが体ではなく、魂ならこれで!)
さっき怪我をした拳に
「ん?あのチビ、急に霊力が……なるほど。事前に絆創膏に入れておいた霊力を使い、傷ついた魂を回復したのか?」
その光景に
今、
もちろん、それはプロの霊能術師たちも良く使うやり方なのでその行動自体は驚くものではない。
「教えてもいないことをプロでもない、ただのチビが感覚的にやるとは……親は一般人だからもしやと思ったけど、やっぱあれは――」
回復した霊力をもとに
ガチャン!
「かなりの突然変異だな」
結界に向かって突き飛ばした。
「……」
そこに立っているのは冷や汗をかいている
「結界、壊しましたけど……これで私の心は強くなりましたか?
「……そうですね、まずはさっきよりは心は強くなった気がします。ですよね?ご先祖様」
そんなことを言いながら
これに対して
「まあ、子孫ちゃんの結界を破ったとすれば……そんなんじゃない?」
そんな
「よかった〜カナちゃんが無事で〜!ごめんね、こんな怖い経験させて!」
「大丈夫ですよ、ワタさん。私も必要だと思いましたから……そして応援、ありがとうございます。ワタさんのおかげさまで頑張れました」
「マジ天使!エンジェル!惚れた!」
「まあ、他のことはともかく根性あるね?チビ。自力で霊力を回復し、それに『
「退魔の二章、
「そんなこととは知りませんでした。私はただワタさんの応援に応えなければ、としか……」
「つまり、カナちゃんとこのワタ様の友情の力!――なんだよね」
「はい、そうかもしれませんね」
純粋な顔で
「なあ、チビ」
「お前、プロの霊能術師になる気はないか?」
突然の提案に
決して
それに対し、
「その前に質問があります。
「まあな」
「なら……見えない人はどうするんですか?」
「ああ、それは……」
隣の
「何も」
「何も?」
「霊能術師は見えない人たちには物理的、精神的な被害を与えないのが原則だ。その理由を知ってる?」
「いいえ」
「その場合、高確率に見える人が増えるからだ」
その言葉に
「問題はワタワタのようにただ見えるだけの、戦力にならない一般人が大半だということ」
「見えるだけの一般人が大半?」
「そう、見えるやつの七割がワタワタのような『
「国民全体が見える人になればこれほどの災害もないからね」
「要するに、国のトップが儂ら霊能術師にお金を払って霊的存在に対する依頼をし始めたのがこの『プロ霊能術師』というシステムさ」
「でも結局、全ては助けない――ということですね?」
「そう、儂らプロ霊能術師が助けるのは、あくまでも見える人たちだけだ」
「誰にも迷惑をかけませんが、助けてもくれないということですね」
「その通り。見えないやつらまで助ける義理はないからさ」
要約すると――と、最後の確認をする声で
「助ける人を選別する、ということですか?」
「……そうだ」
否定一つもないその肯定に
あの人なら、助ける価値もない
知って過ごしたのは十日余り、正直長くはない。
(でも、なんか分かる気がします)
故に
「お断りです。その霊能術師というもの」
初めから決まっていた。
。。。
。。
。
出口を静かに眺めながら
――ワタさんに依頼を受けたとしても、助けてくれたことは感謝しています。ありがとうございます――
提案を断った人にしては礼儀正しく去ったと
「ご先祖様、大丈夫でしたか?」
「何が?子孫ちゃん」
「だって、見えない一般人を助けない理由、あえて言わなかったんでしょう?おかげで人を選んでもらうイメージができたようですが」
「人を選んでもらうのは事実だからの〜」
その言葉とともに
「それに相手は中学生だよ?」
見えない一般人に被害を与えるか、助けるか、何らかの形で影響を与えたプロの霊能術師はその資格を剥奪され、懸賞金がかかる。
「そんなこと、知るはずないだろ?」
それに懸賞金がかかるのが日本だけなら他国に亡命すればいいが、他の国にも霊能術師は存在する。
「おまけにプロの霊能術師のネットワークでは懸賞金の情報も共有されていますからね」
だから見えない一般人は助けない。
そんな大人たちの汚い話、理解しろというのが無理だ。
「そもそもあのチビはこういう事情を聞いても『納得できません!』というタイプだから」
「ん?では、どうして提案したんですか?ご先祖様」
「そりゃ、どんな顔をして断るか見たかったから」
「……」
悪ガキのような
軈てため息をついて、
「はあ、やっぱ性格悪いですよ。ご先祖様」
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