新人賞を狙うためのチェックリスト
ダン・ムラカミ
新人賞の評価基準
新人賞の評価基準
新人賞において、応募作がおもしろいかどうかは評価基準ではない。
多くの人がおもしろい小説を書けば新人賞を受賞できると思っているが、大きな間違いである。
新人賞の評価基準は革新性、つまり「前例のない、新しい要素が作中に取り入れられているか」だ。極端なことを言えば、話としてはおもしろくなくても、これまで誰も思いついていないようなアイデアが作中にあれば、受賞に近づく。どこかで読んだことのあるストーリー展開、どこかで見たことのある人物造形は、たとえおもしろくても落とされる可能性が高い。
「新しい要素」は、具体的にはなんでもいい。舞台設定でも人物造形でも事件のトリックでもいい。
新しさの定義
さて、新人賞の評価基準は革新性という話をしたが、ここで新人賞を狙うアマチュア作家はこう考えるだろう。
新しい要素って、今さら作り出すの無理じゃね。これまで何作の小説が世に出て、小説に限らず何個の物語がすでに存在すると思ってるんだよ。それらすべてに目を通して既存のアイデアを漏れなく把握し、かつこれまで世に存在していない要素を探し出すなんて絶対無理だろ。
小説に、あるいは物語というものに対し敬意をはらっている真面目な人ほど、そんなふうに考えることだろう。「新しい」を字義通りに解釈して、途方もない工程を想定して絶望してしまう。
心配しなくていい。新人賞における「新しい要素」というのは、「選考委員の知らないこと」と同義なのだ。
たいていの新人賞では、選考委員はプロの作家が務めている。当たり前だがプロの作家も人間であり、使える時間も有限だ。どんなにキャリアが長くても、どんなに読むのが速くても、読める本の数には限りがある。世の中に存在するすべての小説を読んでいるわけではない。
だから選考委員の読書遍歴や趣味趣向を事前に調べておいて、知らなそうなことを予想しておく必要がある。それを選考委員が「新しい要素」とみなせば受賞の可能性は高まる。
選考委員の得意分野は避ける
選考委員が出している作品や、読んできた本を調べて、選考委員が得意としているジャンルは避けたほうが無難だ。
理由は二つある。一つは、先述したように選考委員の知らないことをなるべく作中に取り入れるため。
もう一つは、もし専門的な知識を要する記述が誤っていた場合にごまかしが効かないからだ。うんちくについては別の章で取り扱うが、一般の読者が知らないような専門性のある記述は、新人賞において評価されやすい。
しかしうんちくは諸刃の剣でもある。高度な専門性を要する記述ほど評価されやすい反面、誤りが出やすくなる。特に、もともと作者がその分野に詳しかったわけでなく、執筆のために取材した、というような状況だとなおさらだ。
そういった誤りを、書籍として出版されたあとに外野から指摘されるならまだしも、選考過程で、しかも最終選考の選考委員に見つけられてしまうと、大きな減点要素となってしまう。
よって、選考委員の知らない分野を狙うべきである。
パロディーはNG
新人賞の評価基準は革新性である。だから、既存作のパロディーは革新性なしとみなされ、すぐに落とされる。
パロディーにはパロディーなりのおもしろさとか新しさがあるだろうと思うかもしれないが、選考委員も下読みも応募作を熟読しない。さっと読んだだけでこれはおもしろいと思わせないといけないのだ。このパロディーの元ネタは何で、どういうアレンジを加えているのか、というような分析は誰もやらない。
参考資料
https://koubo.jp/article/12243
https://koubo.jp/article/12243
https://koubo.jp/article/12269
https://koubo.jp/article/12282
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