魔王の娘 まおうのむすめ

雨世界

1 いない、いない、ばぁー。 魔界の禁忌の山

 魔王の娘 まおうのむすめ


 いない、いない、ばぁー。


 あるところに、暴れん坊のとても美しい少女がいました。

 少女はとっても力持ちだったので、とても重たいものをひょいっと、とても軽々と幼いころからなんでも持ち上げることができました。

 そんな力を、なるべくみんなには迷惑をかけないようにするんだよ、なるべく良いこのためにその力を使いなさい、と少女はお父さんとお母さんからずっと、小さなころから(いろいろとやらかしていたので)言われたのですが、あまり気にしていないようでした。(楽しいことのほうが、ずっと大切だったようです)

 そんな美しい少女の名前は、びびと言いました。

 びびは今日も、お気に入りの道具である、とっても大きな(とても普通の人なら、持ち上げることなんてできないような)絶対に壊せないと言われている魔界の鉱物で加工された伝説のハンマーを持って、遊びに出かけていきました。

 びびのお父さんは魔界を支配している(とっても優しい)魔王でした。

 お母さんは魔界で最高の魔法使いの(とっても怖い)魔女です。

 びびは魔王の娘でした。

 びびはそのことをとても自慢に思っていました。


 魔界の禁忌の山 崖の道


 おつきの獣娘のがうは、とても不安そうな顔をしています。

「姫さま。もう帰りましょうよ。こんなこと魔王さまに知られたら、今度こそ、おしおきではすみませんよ」と泣き顔で言っています。

(自慢のふさふさの毛並みの獣耳と獣のしっぽもしゅんとしてしまっていました)

「じゃあ、がうは一人で先にお城に帰ってもいいですよ」

 と口を尖らせて、(面白くなさそうな顔をして)びびは言いました。

「そんなことできませんよ。ねえ、姫さま。帰りましょうよー」と今にも泣き出しそうな(情けない)顔をしてがうは言いました。

 でも びびは全然お城に帰ろうなんて、これっぽっちも思っていませんでした。(だって、冒険はまだ始まったばかりだったのですから)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る