やってきたのは騎士2人
数日後。
今日はミノリが騎士団に頼まれた薬剤を届けに行って不在。
普段は騎士団の面々が買いにくることが多いんだけど、急な仕事とか抜けられない時に騎士団の詰所に商品を持ってくるよう依頼されることもある。
その時は出張料も上乗せしてくれるから経営としてはありがたいかな。
そんなわけで、ひとりで留守番しながら本を読んでいると、カランカランとベルが鳴る。
「いらっしゃいませー」
「あ、ユメ。ひとり?」
「ユメちゃん、久しぶり~。へー、ここが例の道具屋か~……」
やってきたのは騎士2人――ランとミナトだった。
ミノリと行き違いだったのかな……そうじゃなかったら詰所で買えばいいから、来る必要ないもんね。
「ミノリは騎士団の詰所に出張中だよ」
「え、そうなの? じゃあ、居ればよかったかも」
「あーあ、入れ違いだねー。ま、いいんじゃない? やっとおれ来れたしー」
「確かに、ミナトは初めてだもんな。僕、注文してきちゃうからミナト見てていいよ。ユメ、注文書もらえる?」
「はい」
注文書を受け取るとスラスラと慣れた手つきでランが記入していく。
一方、初めての来店となるミナトは品物を見ながら「へー」と感心していた。
2人は、アラタを通して知り合った騎士だ。
ランはカヅキと同じくらいで、ミナトは入ってから1年ぐらいの経歴かな。
ただ、ラン曰くミナトは騎士になった年数の割にかなり腕がたつそうで、手合わせの時は先輩たちを圧倒しているんだとか。
アラタも勝てることはなく「次は勝つ!」と意気込んでいるのを見たことがある。
「あれ? ユメちゃん、これなにー?」
「ん?」
これ、と指さされたものを説明するため、近くに寄る。
あ、これは……。
「これは――ランプだよ」
「ランプ? 火つけるとこ、なくない?」
「魔術機だから、魔力を注げばつくよ。ほら」
手を
こうやって魔術を使うための魔力を活用した道具はよくある。
それが、魔術機と呼ばれる機械だ。
「へー、すご。魔術機は見たことあるけど、こんなランプ型のもあるんだー」
「うん……でも、これ非売品だから売れないの」
「あれ、そうなの? そういえばー……うん、値札ないねー」
「うん。これ、あたしのを持って来ただけだから。欲しかったら魔術機の専門店行ってね」
「ふーん……オッケー」
……ミナトには言わなかったものの、このランプはあたしが10年前、孤児院の前で倒れていた時に持っていたものらしい。
ローブを着て倒れていたあたしが抱え込んでいたんだって。
道具屋の装飾として使う他に、夜になったら光源としても使ってるんだ。
ミナトへの説明が終わったところで、注文書が出来上がったらしいランが届けに来たついでにミナトに声をかける。
「ミナトって剣の腕前はともかく、魔術はからっきしだよね」
「魔術書読むの面倒で嫌いだからねー……ユメちゃんに教えてもらおっかなー、手取り足取りー。個人レッスンとかどう?」
ニヤニヤ笑ってる――う、まただ……。
ミナトは何故か、あたしをよくからかってくる。
カヅキは「関心が強い」なんて言ってたっけ……でも、距離が近くて思わず引いてしまう。
昔から距離が近いのは苦手なんだよね……こわくなるから。
長い付き合いのアラタでさえ身を引いてしまうぐらい……常に一定の距離を保ちたいと思ってる。
「え、遠慮します」
「えー、そんなこと言わずに。お茶しながらは?」
「それはもっと困る……そもそもあたし、魔術使ったことないから教えられないよ」
ミナト、口説くの慣れてるのかな……見た目もかっこいいし、乗ってくる女の人居そう。
でも、あたしにはやめてほしい……どうすればいいか、分からないから。
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