第17話 物理学者の授業受講

 今日からは授業が始まるらしい。1クラスとそれ以外とでは結構難易度が変わるらしく、1クラスに関してはかなり上位の内容から始まる…らしい。


「ういぃ、お前ら元気かー?俺は元気じゃないぞー、魔法の研究が佳境でなぁ…。ってことで授業だ。最初は魔法に関して。お前らの担任の俺が魔法を担当している。よろしくな」


 昨日会った時も顔色が悪かったが、今日はよりいっそう顔色が悪い。これがうちらの担任オスカーなのか…。


「まぁそうだな、初回から座学なんてやだろ?それに筆記実技ともに高得点のお前らだったら最初っから実技で魔法の楽しさを理解してもらったほうが早いだろうしな」


 というわけでこの前の実技試験を行った場所とはまた別の、俗にいう校庭に案内された。


「じゃあなんか、グループある程度できてっもんな。いったん適当にグループ組んでくれよ。あまったら番号降ってグループくませっから」


 前世だったら最も嫌いだった言葉、適当にペアを組めグループを組め。友人の少なかった俺はあまりもの同士で仲良くしていたが…。


「グループっていうのは…、4人でいいんだろうか?」

「まぁ、いいんじゃないか。人数の指定されてないしな」

「これでいい…、メティスも安心できると思う…」

「キルアの言う通りか、じゃ、これでいいね」


 メティのことをよく考えてくれるなんていい人すぎるよキルアさん!


「あまりもんいないか?ほー、頭も良ければ世渡りも上手ってことか。俺と違うねぇ、じゃ、グループ内で得意な魔法でも見せ合いっこしてもらうか。もちろん、人には向けるなよ?」


 オスカー先生の言うとおりに全員が魔法を使いはじめた。

 残念なことに俺は見せられる魔法がないのだが…、そこはご愛嬌ってとこだろうか。俺は魔法使いたかったけど…さ…、泣いちゃう。


「じゃあここは先に僕が魔法を見せようかな」

「2人の魔法を見るのは初めてだな、実技試験の時も俺らが絡まれてる間に終わってたっぽいし」

「レインの魔法はすごい…本当に…」

「そりゃ楽しみだ」

「じゃあいくよ」


 そう言うと同時にレインの足元に魔法陣が現れ、俺たちの周りに小さな水の粒がたくさん現れた。空中に止まってる雨粒といえば想像しやすいだろう。次にそれらが凍った。そして、割れて小さな氷の粒子として宙を舞った。光の反射でキラキラと光る氷がとても綺麗だ。


「まじか、すごいな!え、器用すぎる!」


 魔法っていうのは結構想像通りで、小さい魔法であれば集中力が必要で大きい魔法は器用さとかがいらない。つまり、雨粒程度の水を操る魔法なんてものは…、器用さが異様に高くないとできないってことだ。


「ふふ、褒めてくれてありがとう。次はキルアでいいかな?」

「任せて…」


 またまた足元に魔法陣が出てくる。なんで足元に…っていうのは、誰かと対峙した際に魔法陣が見にくくどんな魔法がくるかを簡単にわからせないためっていう理由があったりする。


「私が見える?」

「え…」


 俺たちの前からキルアさんが消えた。足元にあった魔法陣も、キルアさんも見えなくなった。


「見えない…な」

「これが私の魔法」

「すごい…、派手じゃないしわかりにくいけど…、光の反射の利用?それとも完全に空間と分離してる…?いや、魔法的には金属性で光の反射を利用してるって考えた方がわかりやすいか」

「…。考察が早くて正確だな。流石僕の見込んだだけのことはあるルイスだな」

「正解されると思わなかった…、光の反射を使ってる。レインの目を見えなくしたのもこれに近い魔法」


 ほぉ、物理と魔法の融合。なんてロマンの塊なんだ、俺にとっては最高に燃える魔法だな。


「それで、メティスさんは…」

「私たちに魔法見せれる…?」

「あー、メティは器用さがなくてな。なんていうんだ、派手な魔法は得意なんだ。ということで撃つなら空に向かってでお願いな」

「わか…った…」


 そう言ったと同時に空に向かってで特大の魔法陣が描かれた。火属性と金属性の融合魔法。俺が考えて、メティにできないかと言った、花火魔法だー!

 って、せっかく綺麗な魔法が見れるはずだったのに俺たちの目にうつったのは馬鹿でかい火の玉だった。これはメティの魔法じゃない。


「ははっ!マジでお前らの魔法しょぼいなぁ。魔法ってのは派手で大きくなきゃな?本当になんで俺が2クラスなんだよ!」


 そこにいたのは1クラスに姿がなかった、リン・エーテル。俺たちにやけに絡んでくる女神の遣いだ。

 どうやら2クラスも校庭で魔法を使おうと出てきたようだ。なんとも…、間の悪い登場だろうか。


「あれー、これはこれはやはり貴方は1クラスでしたかぁ。それと金魚の糞的存在も1ねぇ、俺じゃない理由がわからんね」

「あまり近づくな、メティが怖がってるだろ」

「それはトラウマとやらのせいで俺が怖いわけじゃないのではー?それもわかんない過保護な取り巻きはいない方が本人のためだと思うけどなー?」


 めんどくさい。なんでこうも突っかかってくるんだろうか。メティ以外にも女性はいるっていうのに、なんで婚約者ってわかりきっている俺らにくるんだ?


「あ、そうだ!決闘、決闘しない?ほら、正式に気に食わないお前を燃やせるし」


 決闘。魔法の使えない俺にとってはただサンドバックになりに行くようなもの。どうしようか、困る。でもここで決闘を断ったらそれはそれでめんどくさいことになりそうだ。


「はぁ…、決闘はそんな理由で使ってほしくはないんだがなぁ。まぁ、ルイスが承諾したら俺が決闘を見よう」

「そうですか…」

「怖気つくのかー?はは、男が女守れないなんてこと…」

「私が受けます!!!!」


 ポカン、とした。メティが大声で、承諾をした。人前で大きな声を出した。初めてのことだ、俺が魔法を使えないから代わりになろうとしたのだろうか?でも決闘のルール的に違う人が承諾することは…。


「ルイと決闘をする、なんてまだ言われてないです!なので私が決闘を受けます」

「あぁ、そうか…。確かにリンはルイスと決闘するとは言ってなかったな…。あぁ、じゃあ今度は逆にリンが承諾するかどうかだな、どうする?」

「どうするって…。先生もさっきの俺の魔法見たでしょ、女の子にあんなの撃てないけどなぁ…」

「じゃあ、受けないということでいいんだな?」

「逃げるんだ。ルイに喧嘩売っといて、自分は買わないって」

「はぁ?俺は優しさで言ってたんだけどな…、そこまでいうならしよっか?手加減とかしないから、普通に大火傷する覚悟しときな?じゃあ、承諾で」

「わかった。メティス・ポインセチアとリン・エーテルの決闘をテイル・オスカーが許可しよう。じゃあ、日程は明日の正午、明日の授業は振替だ。というわけで今日はこのまま続きをやるぞー」


 なんでこんなことに…。メティの心配は一応はするが、メティが魔法において誰かに負けるなんて想像できない…。

 とはいえ、大勢の人の前で決闘なんて…今のメティにできるのだろうか…。

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