第13話 物理学者の実技試験
リンとやらは試験監に怒られたこともあってそれ以降恥ずかしさからか、メティに関わってくることはなかった。そのまま何事もなくメティの順番になった。
「ではお願いします」
「はい…」
やはり人とはうまく話せないが魔法の実力はピカイチ、的を綺麗に壊せる大きさの火球を高速で撃ち放った。的は綺麗に燃え尽きた。先程のリン・エーテルよりも綺麗な魔法を打ったというのに誰一人も歓声を上げたりはしない。やはり派手なものが盛り上がるのは前世も今世も同じようだ。
「威力も正確さも完璧ですね」
「ありがとうございます…」
「ふむ…安心してください、私たち教員は生徒を全力でサポートします。何かあったら相談してくださいね」
「はい…」
メティが自由会によってトラウマがあることは既に学園側も知っているので、サポートはしっかりしてくれるようだ。
「では次、ルイス・パーカーさん」
「はい」
返事をし、先生の前まで歩く。
「魔法陣を描きたいのですが、どうすればいいですか?」
「わかりました。こちら、紙と鉛筆です。属性は木、かすり傷を治せる以上の効果を持つ魔法陣を描いてください」
「わかりました」
「時間は1分以内、それ以上は減点対象です」
「はい」
「では描き始めてください」
木属性の魔法陣は重宝されている物の一つだ。木属性が苦手で使えないという人はかなり多い。負傷者が大量に出た時、回復魔法を使える人だけでなく既に書かれた魔法陣が重宝されるのだ。魔法陣が描かれていれば、魔力を通すだけで誰でも魔法を行使できる、つまり木属性を使えないが魔力が多い人も回復魔法を行使できるということだ。
「できました」
「ふむ…、魔法陣自体は綺麗ですね。ですが、効果によって評価は変わります」
そういうと試験監は自らの指に傷をつけ、俺の魔法陣を行使した。無事に傷が塞がったのを見てから俺の方を向く。
「素晴らしいです。今の魔法陣は感覚的にかすり傷以上の…火傷や骨折まで治せる物でしたね?学園入る前にこの正確さ、期待できますね」
「ありがとうございます」
「では次の-」
俺のことをかなり褒めてくれた。よかったこの様子なら俺もメティも一番上のクラスに行けるだろう。
「褒めてもらえてたね」
「メティもだったろ」
「ふふ、これなら同じクラス行けるかな?」
「まぁ、行けるだろ」
「よかった〜」
ニコニコメティも声を弾ませている。このまま雑談してれば今日も終わるかと思っていたら…またメティに話しかけてきた男子が出てきた。
「おやおや、そこの麗しい女性は先程美しい魔法を使った方ではないですか…」
「い…」
「おや、もしかして人と話すのが苦手なのですか?でしたらご安心を!僕は女性の扱いには…って、痛い痛いよ!」
「婚約者なのに私以外の女のところ行くんだね…?やっぱ一生私を捨てれない様に教育しなきゃかな…?」
「キ、キルア!これはほんの冗談さ、ほらさっきの火属性と木属性の魔法を見ただろ?かなり評価が高そうだったから同じクラスに行くんじゃないかと思って先に話しかけただけさ…」
「…先程の綺麗な魔法を使っていた方々ですか。これはどうも…、私はキルア・スーミーです。この隣にいるレイン・ソミニアは、私の!婚約者です」
「そ、それはどうも…よろしくお願いします」
レインという名前の少年はイケメンで物腰柔らかそうな顔をしているが尻軽男子でもあるのだろうか?逆にキルアと名乗る少女は基本的には静かな口調で抑揚があまりない。ただ、婚約者であるレイン・ソミニアが大好きなのだろう。自分のものであると主張はしっかりとしてくる。
「僕達も上のクラス行けるだろうから先に仲良くなっとこうと思ってね。それで君たちの名前は?」
「俺はルイス・パーカーで、後ろに隠れてるのが婚約者でメティス・ポインセチアだ」
「ふぅん、人と接するのが苦手そうだね」
「そうだ。昔にトラウマがあってな」
「それだったらキルアと仲良くすればいい。彼女は僕に対しては厳しめだが、本来は優しい上に声も静かで慣れるには丁度いいと思うよ」
「ふふ。レイン、私のことを人に伝えるときに褒めるのは好感度が高くなるよ」
「それは話した人からキルアにじゃなくて、キルアから僕に対する好感度だろう。わざわざ声に出す必要なくないか?」
「自分の気持ちを声に出していうことは大事だとこの前本で読んだ」
「本当にすぐ影響されるんだから…。まぁこの会話でわかったろう、キルアは純粋だからこそ無害なんだ。ついでに僕とも仲良くしようよ、ルイス・パーカー君」
「ルイスでいいよ、よろしくな」
「あぁ、楽しい学園生活になりそうだ」
滑り出しが良すぎて逆に不安になるというのはこういうことか。俺の友達だけでなく、メティのトラウマも軽減できる可能性が出てきたのだ。学園生活が始まる前だというのに順調すぎるぞ。
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