第34話 マザーアース 会議
火星圏に到達した第二艦隊旗艦マザーアースは、しきりに第一艦隊に連絡を取ろうとしていた。
「第一艦隊のいずれからも応答ありません。ECCM効果なし。妨害ではなく電波が遮断されている可能性が有ります。ダイモス級の外部装甲岩石が電波を通していない可能性が高いと思われます」
「わかった。伝令を出そう。スターファイターをダイモスに向けて発進させよう。少なくともミストラルとエンタープライズには出頭させて報告を聞きたい」
黒葉は部下に指示をだした。
それを見ていた明石陸将補は茶々を入れた。
「今時伝書鳩に対面での会議かい?何十年前の手順だい?中継用の衛星を飛ばしてオンラインでの会議ですむんじゃないか?モニター上でもしっかり顔をつきあわせられるぞ」
黒葉は明石の方を振り向きあきれたような顔をして返事を返した。
「私たちはね、顔を見て話したいんですよ。今までもこれからも。私たちが、顔を合わせ、膝と膝をつき合わせて話をして、どれだけの安寧を世界にもたらしてきたかあなたは知らない」
「君は百目でトレーニングを受けた者と聞いているが、本当か?かなりのあまちゃんだな。もっと冷酷で冷静な判断をする男だと思っていたんだが」
「私は冷酷な人間ですよ。百目のトレーニングのおかげで狡猾な人間として成長しています。世界の安定のためなら一万や二万の人間を殺して見せますが、今はその時ではない。彼らから正確な情報を引き出し、協力を得て一刻も早く拉致被害者を救い出すことが最も重要な目的です。効率的な作業をする事は目的では無い、ということです」
黒葉の言葉を聞いて明石は黙ったかにみえた。
「面白い答えだ。いいだろう、俺もその策に乗るぜ。エンタープライズの艦長クロ・デュ・バルとは顔なじみだ。顔つなぎ具合にはなるだろう」
「あなたは陸、彼は宇宙軍。接点があるとは意外ですね」
「軍の上でのつきあいはない。以前あいつとはシカゴのバーで殴り合いの喧嘩をしたことがある。それだけの仲さ」
黒葉はくすりと笑いながら
「これ以上はない上等な関係ですね。お願いします。複座型スターファイターを用意します」
「それには及ばない。俺が単独で乗り込むよ。久しぶりに宇宙を飛んでみたいからな」
「撃墜されないようにお気をつけて」
黒葉の言葉は嫌みであったが、それに気づいたのか気づかなかったのか、後ろ手に手を振り明石は格納庫へと向かった。
その背中に向かって黒葉は言葉を投げかけた。
「陸上自衛隊のくせに宇宙戦闘機を乗り回し、国連の活動に平気で口を出す。あなたはいったい何者だ?」
だが、それに対する返答はついに無かった。
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