第21話 星を征く船
多用途運用母艦「こんごう」の航海用艦橋には火星軌道上での戦闘の様子が流れてきていた。輸送艦「おおすみ」から送られてくる画像である。遠方過ぎるが故にその様子を見ることしか出来ない乗員には歯がゆさだけが蔓延していた。撃墜される友軍機、大破する艦艇。時折消える画像。それでもアダムスキー級を撃沈したときには歓声が上がる。
「しかし、アメリカもえぐい。他国の戦力を全てデータ取り扱いだ」
「いや、作戦計画に背いて独断専行する方が悪いのさ」
「多国籍軍とは言っても所詮は寄せ集め。自国の利益最優先で動くさ」
「やった!また落としたぞ」
「チキショウ、また一機ファントムが」
感想は悲喜こもごもだった。
「この後はどう推移すると思う?帯刀二佐」
艦長の檜垣が傍らに立ちモニターを見つめる帯刀に話しかけた。
「はっ。自分は艦隊戦は我が軍の勝利。いずれダイモス級の拿捕に動くでしょう」
「なぜそう思うのか?」
檜垣の問いに帯刀は笑みを浮かべながら答えた。
「私がそういう状況を見たいからですよ」
檜垣はその返答に大笑いした。
「俺もそう予想はしているが、面白い根拠だった。質問を変えよう。拿捕するとして二佐ならどう行う?」
「私なら人型重機を囮に歩兵を大量に送り込みます。人型重機には対巨人兵器戦を担当させます。100年前と同じ戦法です。巨人兵器に対抗出来るのは人型重機のみ。歩兵なくして制圧占領ははあり得ません。アメリカもその事がわかっているから強襲揚陸艦を火星に下ろさず温存したのでしょう。正確な情報が正しい判断をさせた、ということでしょうが情報の提供元もずいぶんな食わせ物ですね。提供する相手先によって情報の正確さが違う」
帯刀二佐の感想に檜垣は笑いながら答えた。
「そうやって何百年も世界の秩序とバランスをとってきた連中だからな。簡単に体質はかえられんだろう」
腑に落ちないといった顔で帯刀は反論した。
「石切場の賢人に百目が合流して90年以上たつと聞きます。二つの組織が一つになれば当然大きな変革が組織内に起こると思いますが」
「だから君は若いと言うんだ。組織内には派閥というものが生じる。組織の大きさを問わずにな。かの組織は母体は一つになっても未だに石切場の賢人と百目と二つの人の集団が混ざり合うことなく同居しているのだよ。あきれたものさ」
「その辺の組織の都合というものがわからないから自分は出世出来ないのですよ」
檜垣は再び笑った。
「それもそうだな。ともかく我が隊の情報源は幸いにも百目だ。元々は日本の組織だけあって我が隊にはそれなりの情報を流してくれている。他の国よりはやりやすいはずだ」
檜垣は「百目」と口にするときにちらりと帯刀の顔を見た。どう反応するかを見ているようだった。しかし帯刀は檜垣の言葉に一切の反応を見せなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます