すみっこ同盟活動中!
ヨモギ丸
第1話 すみっこ同盟結成!
俺の名前は
今日も今日とて、クラスの中心共の鳴き声をBGMにして読書に勤しむ。この本は娯楽であると同時に、盾でもある。本を読む者に話しかけるやつはいない、この本を知っているやつに話しかけられる心配はあるがブックカバーで表紙を隠すことで何を読んでいるかを悟られることもない。完璧な布陣。そしてもちろん情報収集は欠かさない。学生の戯言なんて深夜ラジオに比べれば面白味など一滴もないが、これもまた日本文学、味わえる内に味わなければ損だろう。そんなことを考えている昼下がり。先ほどからこちらを何度も見てくる女子がいる。もちろんモテ期などと勘違いすることはない、彼女は俺と同じこちら側の人間だ話しかけるチャンスをうかがっているんだろう。わかるぞその気持ち、長縄くらい難しいよな。会話って。
「あの、三門君。私とすみっこ同盟を組みませんか。」
真剣な顔して何を言うかと思ったら、すみっこ同盟?なんだそれは。逆ミーハーである俺には流行り物はわからないが、ゲームのフレンドか何かか?
「え、いいよ。いいですよ。」
「ありがとう。三門君。これからよろしくね。」
そういえばゲームハードを聞いてなかった。もちろんほかの人より持ってるゲームは多いが持ってなかったら知ったかぶりで誘いを受けたやつになってしまう。
「あれ?ゲームハードとかは?」
「ゲーム?ごめん、私の家厳しくてゲーム機持ってないんだ。」
じゃあすみっこ同盟ってなんだよ。てっきりオンゲのクラン名か何かだと思ってたよ。あと敬語じゃなくなったね。
「よし、これで先ずは二人だね。これからどんどん増やしていこうね。」
増えるんだ。これ。あと、敬語じゃないのは偶然じゃないんだね。そういう感じね。
「増えるの?これ。」
「二人が…いいってこと…?」(別に私はそれでもかまわないけど)
なんか突然ヒロイン臭漂わせて来るじゃん。もはやかわいく見えてきたぞ。この感情…これが恋…。って感じたら。即ラブコメなのになぁ。捻くれてる自分が憎いぜ。これも俺なりの防衛機制だ。恋は病だぜ…。尊敬する親父がそう言ってた。気がする。
「いや、まず俺はすみっこ同盟がなんなのかわかってない。あと、君の名前を僕はまだ知らない。」
「え…?名前も知らない女子からの、よくわからない誘いを受け入れたってこと…?詐欺とか気をつけなよ?」
それは本当にそう。ほんそう。
「私の名前は
彼女は私は最初から名前知ってたけどね、という圧を放ちながら挨拶をしてきた。過去を見渡してもこんなに圧を感じた挨拶は初めてだ。挨拶とかされた経験も少ないけど。
「すみっこ同盟っていうのは、さっき私が考えたんだけど。私たちって正直、クラスの中心からは程遠いじゃん?だからクラスの隅っこに集落を作って中心地をもう一個作れば、私たちも中心の仲間入りという算段だよ。」
「壮大な計画だな。それは自分がクラスの中心の仲間入りするっていう方法はないのかな?」
「できると思う?見た目も中身も陰キャまっしぐらな私だよ?誇れるのは両親が善人なことくらいだよ。」
さっきから明るく話せてる気がするが、やはり同族どうしだと同じ言語レベルだから話しやすいんだろうな。
「いい子に育ったな。我が子だったら泣いてたわ。まあ、俺も同族だからそれは認めるけど、クラスの隅に人を集めることとかできるのか。少量の協調性は小学校において来たぞ。」
「まあ集めるのなんて、おいおいでいいの。ただ、高校に入って一緒に過ごす人がいないことに焦りを覚え始めてるんだよ。私はね、自分の住む場所は自分で作りたいんだ。」
それで自分がコミュニティを新しく作るとか、行動力だけは中心共に引けを取らないな。誘った相手が俺なことを除けば、の話だけど。
「とりあえず。私、美澄楓はここに、すみっこ同盟の結成を宣言します。はい、拍手。」
俺はクラスのやつらに聞こえないくらいの音量で拍手をする。
こうして俺たちの不思議で普通の関係が始まった。
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