【完結】モンスターレコード〜鈴の音が響く街で〜
モヤンやん
第1章 少女との出会い
1話 少女との出会い
天井の隙間から差し込む日差しに当てられて目覚めた。とりあえず朝食の準備を始める。
強力粉、砂糖、塩、ドライイースト、水を適量ボールに入れ混ぜていく。しばらくこねていると、始めは手にくっついていた生地が、無くなっていく。食品用ラップを付けて放置する。ここから1時間特にやることもないので外を探索しにいく。
「うんむ、いつ見ても殺風景だなぁ」
今となってはすっかり慣れてしまった景色を見て呟いた。そりゃ最初は悲しいなーとか思ったけど流石に慣れてしまった。この荒れ果てた街を‥
その日は突然やってきた。中学からの帰り道、電車でSNSを見ているとある投稿が流れてきた。
「謎のモンスターが出現?」
添付された動画を再生すると、そこには四足歩行の黒い生物が映っていた。姿形は犬に似ているが、柴犬より一回り大きく、可愛らしさの欠片もなかった。画面越しにも伝わってくるような、鋭い殺意を放っていた。
そのモンスターはふいに空を見上げ、電柱にの電線にいたスズメを見つけると、高く跳び上がり、スズメを捕らえ貪り食った。
その映像に戦慄を覚え、すぐにモンスターの事について調べみた。すると様々な種類のモンスター各地に出現しており、既に多くの人が犠牲になっている事が分かった。そして、たった数分の間に100万を超える人が命を落としたという情報を目にし、背筋が凍る。
慌てて家に帰り、戸締まりを何度も確認する。そのとき一通のメールが届いた。母からで本文を読んだ瞬間、膝から崩れ落ちた。
「陽太(ひなた)ごめんね。お父さんもお母さんも駄目みたい」
はっきりと書かれていなくても、すぐに理解できた。両親との思い出が頭をよぎり、涙が溢れ出す。あまりに唐突な別れに心がついていけなかった。
しかし、悲しみに浸る時間は無かった。小さな揺れが伝わってくる。服の裾で涙を拭い、恐る恐る窓から外を覗くと、2階建ての家を優に超える巨大のモンスターがこちらに向かって歩いてきた。二足歩行で人型だが、青黒い肌に、中央に一つだけある目、盛り上がった筋肉、まさに化け物だった。
思考よりも先に体が動いた。玄関を飛び出し、庭にあるシェルターへと続く階段を駆け降りる。ただひたすらに、あの化け物が通り過ぎるのを祈った。静まり返った部屋の中で、自分の心臓の鼓動がやけに大きく部屋に響いていた。外からは、微かに誰かの悲鳴が聞こえた。
――その後の記憶はない。嫌なことを思い出したな。おそらく、あまりの恐怖に気を失ってしまったのだろう。久しぶりに思い出したくもない記憶を思い返してしまった。
「今日は、いつもと違う方向へ行ってみようかな」
いつもと違う方向を歩いてみるが、やはり景色に大きく変化はない。せいぜい、崩れた工場が目に入るくらいだ。
さらに進むと、公園があった。少し足を踏み入れてみる。鉄棒は根元から折れ曲がり、ブランコは座る部分がちぢれ、ロープだけがぶら下がっていた。
そのとき、ブランコの片側に、白いワンピースのような服を着た女の子が座っていいるのが見えた。服はところどころ破れていた。
「こんな世界にも、人がいるんだなー」
そう思って通り過ぎようとしたが、すぐに足が止まる。‥人が、いる?
「うぇえええええ!?」
思わず声を上げてしまった。咄嗟に身をかがめて辺りを見回す。幸いモンスターの姿はないようだ。アウトよりのセーフか。
女の子はこちらの声に気付いたのか、こちらに駆け寄ってくる。僕の存在に気付いたのかこちらに駆け寄ってくる。彼女は腰まで伸びた雪のように白い髪に、雫形の鈴がついたペンダントを首に下げていた。透き通るような青い瞳が印象的で、さらに、短い角に‥しっぽ?
「お兄さん、さっき叫んでたけど、どうしたの?大丈夫?」
「だっ、だいじょうび‥です」
僕以外にも人がいた驚きと、その"人"が人ではなかったは衝撃で、噛んでしまった。
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