【ヘブバ男爵領編】続・結界魔法は最強です! ー 創造神の加護と結界魔法を授かったオレは没落寸前の男爵家を復興したい ー

市ノ瀬茂樹

第1話 腕試し…その前に:①

 カラカラコロコロ、パッコンパッコン。


 馬車の車輪が軽快に回る音とまわりを取り囲んで進む騎士たちの乗る馬の足音が順調に進んでいるのを知らせてくれる。


 『浮遊』と『軽量化』の結界魔法陣を貼り付けた馬車は軽く浮いているから、地面から伝わってくる振動が少なく、柔らかい結界で作ったフカフカのクッションで尻も痛くない。


 六歳年上で十歳の兄貴クラークと三歳年上で七歳の姉貴ヴィヴィアンは初めて帝都を出るので、見るもの全てが珍しくはしゃいでいるが、オレはジェームズと一度、不死鳥アンドリュー老龍グレゴールを連れて飛来した時にも一度通った道だから、退屈を押し殺すのに必死だ。


 本当なら寝たいけど、兄姉はオレも一緒にはしゃがないといけないと思っているようで、さかんに話しかけてくる。


 オレはそれに適当に答えていたが、やがて母親オードリーがオレに尋ねてきた。


「アラン、緊張しているの?」


 んーっ? 鍛錬場での魔法使いや騎士たちとの腕試しですかぁ〜、別に緊張してもしなくても、やることは変わらないんだけどなぁ。


「緊張はしていないと言えば嘘になりますが、それ以上に魔法使いたちがどんな魔法を使ってくるかが楽しみです」


「騎士の方たちには何もさせないと言っていたけれど、魔法使いたちには攻撃させるの?」


「魔法使いたちがどんな魔法を使っても…、残念ながら、私の結界を打ち破ることはできないでしょうね」


「打ち破ることはできないって…どういうことなんだ?」とクラークが尋ねたが「それを先に聴いてしまうと楽しみが無くなりますよ」と答えておいた。


 ガーシェ大帝国帝都騎士団副団長で剣聖スキルを持っている父親ジェームズの長男として生まれたクラークは、騎士を目指して毎日剣技を鍛錬している。


 魔法は、コーバン一族のお家芸といえる火魔法を授かっているし、オレが教えた魔力増加と魔力循環に身体強化も頑張って習熟しようとしている。


 だから、オレが『騎士たちに何もさせない』と言ったり『魔法使いたちがどんな魔法を使っても結界を打ち破ることはできない』と言ったことに引っかかるのだろう。


 あせらなくても、お楽しみの時間はタップリありますからね。


 オレがニヤニヤ笑っていると、オードリーは真剣な顔をして言った。


「アラン、やりすぎてはダメよ。魔法使いの方たちも騎士の方たちも、帝王陛下やそれぞれの貴族家の名誉をかけていらっしゃるのだから、あまりみじめな思いをさせては、かえって恨みを買うことになるのよ」


「そう思われる方は、私に挑戦してこないんじゃないですかね…。創造神サリーエス様の加護を授かった私に挑戦して腕試しをしようなんて思うことが、身の程知らずで恥ずかしいことと気が付かないのですから」


「アランは勝てると自信があるのね」とヴィヴィアンが尋ねた。


「何を持って勝ちとするかですが…、負けませんよ」


「そうなの…、勝つのではなく、負けないのね」


「あえて付け加えると、二度と挑戦したくないと思わせる…ということですね」


「アラン、まさか…誰かひどいケガをしたり…死んだりしないわよね」とオードリーがけわしい顔で尋ねたので答えた。


「多少のケガはするでしょうが、誰の生命も奪う気はありません。それはサリーエス様からも言われています」


「サリーエス様からは他には何を言われているんだ?」とクラークが尋ねた。


「殺すな、の他には『地上における絶対的な力の行使』を見せつけてやれ、と言われています」


「絶対的な力の行使って…あまり怖いのは嫌よ」とヴィヴィアンが言った。


「まぁ、それはお約束はできませんね。絶対的な力の行使はたびたび見せることはできません。ここ一番と言った場合…【魔物の氾濫:スタンピード】が発生した場合には必要であれば使いますが…」


「その力を見せつけて…どうするの?」とオードリーが尋ねた。


「私自身はもちろん、コーバン家に繋がる者たちに危害を加えることをあきらめさせます。無視すればどうなるかを見せるということですね」


 オードリーは大きなため息をついて言った「やりすぎないように気をつけてね」


「お母様、ため息をつくと幸せが逃げていくと言いますよ」


「「「誰のせいでため息をついていると思っているの!!!」」」と母親・兄貴・姉貴が声を揃えて言った。


 皆さん、仲がよろしいことですな。


 大声に驚いてフランソワが泣き出した。


 オードリーはあわててフランソワを胸に抱いてあやし始めた。


「アランお兄ちゃんが泣かせたのよねぇ〜、ヒドイお兄ちゃんよねぇ〜」とか言ってるが、泣かせたのはアンタらが大声を出したからでしょうが。


 オレはフランソワのいいお兄ちゃんになるべく努力を惜しまないんだからね。


 オレはぶんむくれて馬車の窓から外を見た。


 遠くに腕試しの会場となる鍛錬場が見えてきた。


 さて、どんな強者つわものがオレを待ち構えているのかな。


 オレはとても楽しみな時間を過ごせることにワクワクしてきた。





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 本話より【ヘブバ男爵領編】を開始いたします。


 前作【結界魔法は最強です!】をお読みいただけた皆さまに楽しんでお読みいただけるように努力してまいります。


 https://kakuyomu.jp/works/16818093079503206306

 

 本作からお読みいただける皆さまには、登場人物や設定の説明が無いのをお詫びいたします。


 お時間のある時に前作をお読みいただけると、とても嬉しいです。


 また、別に公開しているものもあります。


【オレの水魔法はどこかおかしい】です。


 https://kakuyomu.jp/works/16818093085917789154


 こちらもお時間のある時にお読みいただけると嬉しいです。


 よろしくお願いいたします。




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