第9話 デザイアゴーレム

 「たっく、だから目をみんなって行っただろうが!!お前のせいで二ヶ月は呼び出さなくなっちまったじゃねーか」

 「ううっ・・・ごめんなさーい・・・」


 ルビーマウスと犬っぽい生物から、逃げ切った私達はダンジョンの更に奥深くにまで訪れていた。


 「そ、それにしてもかなり深くまで来ましたよね。そろそろ最深部につきますかね?」

 「あー・・・多分な。目的の奴もそこにいるはずだ」


 そう言えば、私達が本来ここに来た理由って結局何だったのだろうか?

 私は細かな事情は先輩に任せて、ラーナさんに言われるままにここに来たから何が目的なのかをまだ知らなかった。


 「先輩先輩、ここに来たのって結局何が目的だったんですか?」

 「お前・・・受付嬢なら渡された資料くらい目を通しておけよ」


 なかなか痛いところを突かれた。

 確かに受付嬢ならば本来、冒険者が受注するダンジョンやクエストの内容を知っておく必要がある。 

 全くこの先輩は、ほんのたまに物凄くまともな事を言ってくるから厄介だ。

 恐らく、根が真面目なのだろう。よく考えたら朝の朝礼にも遅れてだが、必ず参加はしている。


 「先輩って本当に知れば知る程、悪魔って呼ばれてる意味がわからなくなりますよね」

 「急に何だよ気持ち悪りぃな・・・と、そろそろ着くぞ。目的の奴はあの先にいるぞ」


 先輩が指さした方向を見てみると黄色く光り輝いている部屋らしきものが見えてきていた。

 そして私が見た瞬間、入口から見えてきたのはそれだけでなく、何かの巨大な足も同時に私の目には写し出された。


 「え?・・・な、何ですか今の?岩っぽい感じだったんですけど・・・」

 「アレが俺達の目的の奴だ。行くぞ」


 先輩は迷わずその道を進んで行き、私もその後ろを一緒に歩いて行った。

 そして巨大な空洞の先には、この世界中に存在するあらとあらゆる宝石が身体中についているゴーレムだった。


 「な、何ですかあの宝石の身体を持ったゴーレムは??」

 「あれが俺達の目的の奴、デザイアゴーレムだ。全身を宝石で構成しているA級モンスターで討伐すりゃ、一生遊んで暮らせるくらいの財宝や宝石が手に入る野郎だ」

 「え、ええ〜〜〜!!?それって、それって本当ですか!!?」


 一生遊んで暮らせる財宝が手に入る・・・だと!?それってつまり・・・私の二億の借金も??


 「あぁ、簡単に返せると思うぜ?それどころか家族とも仕事をせずに一生遊べると思うぜ?」


 私の心を読んだのか先輩は私の顔を見て、笑いながら答えた。

 

 「ぜ、絶対討伐してやりましょうね先輩!!!」


 借金も返せて、両親にも親孝行が出来る。何で素晴らしいモンスターなのだろうか。

 そう思うと私は全身が震え、心が沸々と燃え上がり気合が入った。


 「お、おう・・・でもよ、忘れてないよな?これ一応ギルドからの依頼だから俺達の手元には・・・」

 「喰らえ!マジックラッカー!!!」


 私は懐から取り出したマジックラッカーをデザイアゴーレムに向かって打ち出そうとした。

 事前に先輩には残りのマジックラッカーのどれが偽物なのか、本物なのかを判別して貰っている。


 「オイコラ、話は最後まで聞け」

 「ぐえっ!?」


 マジックラッカーを打ち出そうとした時に、先輩が私の襟を思い切り後ろに引っ張ったせいで、私のマジックラッカーは全く見当違いな方向に放たれてしまった。


 「げほっ!げぼっ!い、いきなり、何するんですか・・・!!」

 「話をちゃんと聞きやがれ。あのデザイアゴーレムには魔法や物理攻撃は無意味だ」

 「・・・え?」


 魔法や物理攻撃が無意味・・・?

 それじゃあ一体どうやってデザイアゴーレムを倒せばいいのだろうか?

 攻撃手段なんてその二つにしかないのにそれが無理なんて。

 私がそんな事を考えていると先輩は更に嫌な情報を聞かせてくれた。


 「それどころか、身体にダメージが入れば入るほど、全ての性能が一段階上がりやがる。まぁその分、宝石とかの価値も上がるんだがな」


 宝石の価値が上がると言うのは嬉しい情報だが、こちらから攻撃が出来ない上に攻撃をしたならば、強くなるなんて勝ち目が本当にゼロじゃないか?


 「それじゃあ宝石が一生遊んで暮らす夢は叶えれないんじゃ・・・」

 「そうだ。あいつはお前みたいに夢に目が眩んだ多くの冒険者を、そのチートな身体で葬ってきた化け物なんだよ」


 なるほど。先輩が厄介だと言っていた理由が今、ようやく理解できた。

 こんなチート級のモンスターを倒せ、なんて無理難題を押し付けられたのだ、先輩じゃなくたって厄介だと思うだろう。と言うか普通なら断るだろう。


 「これは流石にいくら先輩でも・・・」

 「あー・・・まぁそうだな」

 「オオオオオオ!!!」


 こちらに気がついたデザイアゴーレムは雄叫びをあげた。

 本来、ゴーレムという種族は動きが遅くて、パワーと防御が高いのが特徴的な種族だ。

 しかし、このゴーレムの拳の速度はそんな常識に当てはまるようなものではなかった。


 「あ、死んだ・・・」


 私の目の前が少し暗くなったと思ったと同時にそれがデザイアゴーレムの拳だと気がついた。ゴーレムにしては異常な速度だった。

 

 「ちッ!!」


 拳があたろうとした瞬間、先輩が私の腕を引っ張り私はそのまま横向きに倒れた。

 

 「オオオッ!!」

 「がはッ!!!」


 しかし、デザイアゴーレムの拳から私を庇ってくれた先輩は私に当たる筈だった拳をモロに喰らい壁まで殴り飛ばされてしまった。


 「先輩ッ!!!」

 「ッ・・・ぐッ・・・」


 壁に激突した先輩は壊された壁の瓦礫の下敷きとなって地面に倒れ込んでいた。

 すぐに私は先輩の元まで走り、瓦礫を退かして先輩を救出した。


 「先輩!ごめんなさい私・・・」

 「ぐっ、お前は馬鹿、か!・・・だん、ジョンは危険な、所なんだよ・・・」


 幸い骨折などの大きな怪我はなくて済んでおり、目立った外傷もなかったが、アレから放たれた拳によって、骨は何本かヒビが入っているのか、先輩は上手く起き上がれずにいた。


 「肩につかまってください!」

 「だい、丈夫だ!!お前、は・・・早く、逃げや、がれ!」

 

 先輩を掴もうとした手は、先輩によって勢いよく払い除けられた。

 先輩はそのまま背後にある壁を上手く使って立ち上がりデザイアゴーレムの方を見た。


 「それ、に、俺だって無意味にお前を、庇った、わけじゃ、ねーんだよ」

 「え?」


 こちらに向かってくるデザイアゴーレムに向けて、先輩は手を広げ魔法陣を展開させた。


 「こいつは、主が重傷負わねーと、呼び、だせ・・・ねんだよ。来い"キマリス"」


 先輩がその名を口にすると魔法陣から、白い甲冑に身を包み、身の丈ほどはある槍を右手に持ち、左手には両腰から伸びる手綱を握った人物がデザイアゴーレムの前に現れた。

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