第2話 今日も空は青い

「よし。行って来ます!」


 私は誰も居ないけど、そう言ってから家を出た。

 もう私はアイドルじゃない。誰も注目はしない。

 だけど癖で帽子と眼鏡を掛けて、軽めの変装を施すと、家の外に飛び出した。


「さてと、今日は何処行こうかな?」


 私はスマホを見ると、検索アプリを起動。

 近くにいいお店とか公園とかないかな。

 私は検索ボックスにキーワードを入れて検索を掛けた。


「あっ、ここに行ってみよう!」


 私は近くに自然公園があることを、思い出す。

 今日みたいな日は、きっと賑やかだろうな。

 人がたくさん居る所、全然嫌いじゃない。

 だから私は楽しみにすると、首から下げたカメラに目線を預ける。


「昔買ったんだよね。最近は全然使ってないけど」


 昔、それこそ小学生の頃。

 初めて動画投稿をして、人気がそこそこ出て、収益を貰って、貯めてお金で買った一眼レフカメラ。

 何年も前のもので、もうずっと使っていないけど、久々に使ってみようと思い持って来た。


「いい写真が取れたらいいな。動画でもいいかも。久しぶりに外で“踊ってみた”とか撮ってみようかな?」


 三年前のことなのに懐かしく感じた。

 私は一人で笑みを浮かべる。

 楽しい休日。これが普通なんだと改めて実感した。



「うわぁ、やっぱり綺麗!」


 私は公園にやって来た。自然公園ってだけのことはある。

 緑一面の世界に、大きな池。陽の光を受けて、幻想的に光る。

 つい目を奪われててしまうと、私はカメラを構えた。シャッターチャンスじゃないけど、なんかエモい。


「いやいやいやいや、私が“そこだ”って思った瞬間が、シャッターチャンスだよね」


 私はピントを合わせた。フォーカスって言うらしい。

 まあ、私はカメラに詳しくない。

 だから何となくで撮ってみる。

 

「うわぁ、鳥が!?」


 その瞬間、何処からか鳥が飛んで来た。

 青い鳥。多分、カワセミだ。

 この辺りはバードウォッチングも盛んだって調べたけど、私はつい驚いて指が押し込まれていた。


 パシャリ!


「あー、撮っちゃった」


 私はついシャッターを切っていた。

 全然消せるからいいんだけど、一応撮った写真を確認する。


「なんか、エモい」


 撮った写真は奇跡的な場面を捉えていた。

 カワセミが丁度やって来て、水面に波紋を呼ぶ。青い羽に光りが触れると、乱反射して煌びやかに写し出す。


「うん。今シャッターを切ってよかったよ。今は一瞬なんだもんね」


 何か深いこと言ったかも。

 私は自分が撮ったかけがえのない写真を見て、ニコリと笑みを浮かべた。


「今日の空も青い。いいね、私の夢が広がる予感」


 正直言葉なんて要らない。

 こうして毎日を平和に生きていられるだけで、何だか夢が広がる予感がした私は、手のひらを突き出していた。

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