第二の事件

「代々木か」

 今度は遊間だけが即答した。

「しかし予告ではあれだけ日時と場所をぼかしていたのに、はしっかりするのだな。面白い」

「待ってくれ、遊間。なぜ、代々木なんだ。解説してくれ」

 遊間が一人で勝手に納得していると、三上が悔しそうに尋ねた。

「なんだ、三上。まだ分からんのか? 禁煙しているせいで、脳が鈍っているんじゃないか?」

 遊間はからかうように笑った。

「いいか? まず『3-2=1』の式。これが表すのはtreeだ。3は英語で『three』。そこから2番目の文字を引くと『tree』。つまり、この式は1がtreeであることを示している。

 そう考えると、二行目の1の羅列は木が16本並んでいると捉えることができる。16本の木、即ち、4×4本の木。続けて読めば、44木よよぎだ」

「合っているのか?」

 三上が原木に尋ねると、原木はこくりと頷いた。

「はい。二番目の事件も予告通り、八月二五日に代々木の住宅街で起こりました。

 被害者の名前は目黒めぐろゆう。三十四歳の男性で、職業は投資家」

 原木が被害者の顔写真をスクリーンに映し出す。

 すっきりとした短髪に黒縁眼鏡をかけた、生真面目そうな男だ。

「ほう、三十四歳の若さで投資家か。起業して成功したのか、あるいは実家が太いのか……」

「いえ、そのどちらでもないようです。所謂いわゆるデイトレーダーらしく、株の売買だけで月に数千万円ほど稼いでいたとか」

 遊間の独り言を耳ざとく聞き取った原木は、手元の資料をめくりながら答えた。

「……なるほど。で、肝心の事件については?」

「事件が発覚したのは、八月二五日の午後四時ごろ。

 女性から、同居人の男性が自宅の浴室で倒れていると通報があり、現場近くの警察官が駆け付けたところ、彼が頭から血を流して亡くなっているのが発見されました」

「死因は頭部外傷か?」

「はい。この事件でも凶器はまだ見つかっていませんが、恐らく鈍器で殴られたものかと」

「なるほど、落ちが見えてきたな」

 遊間は愉快そうに、くっくっくっと笑い出す。

「それで、事件はこれで終わりじゃないんだろう? 三つ目の予告状を見せてくれ」

 遊間のその言葉に、原木は一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに平静を取り戻して、三つ目の予告状をスクリーン上に映し出した。

「三つ目の予告状はこちらです」



 警視庁の諸君、目黒有の事件の捜査は順調に進んでいるかね?

 なに? 時間が足りない?

 残念だが、私も暇ではない。早速、次のゲームの始まりだ。


 8月30日


 10+9=19


 に警戒せよ。


 山手線の悪魔

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