第6話 狼とイヌと匂い

 待ってろよお弁当!


◇ ◇ お隣さん


 父のところへ歩いて行くと、途中で僕に気づいた父が、もう昼頃かと、太陽を見上げている。


 近くに行くまでに、そのあたりを片付けていた父が言う。


「お昼だしご飯にするけど、アイツってウラロだっけか?逃げたの?テイムはムリそうだった?」


「違うよ逃げてないよ。小くても狼だしテイムは直ぐには出来ないと思うし、まだまだだと思ってるよ。それに小さいアキラには、まだ近くにテイムもしていない狼の子供の獣を近づけたくないよ。あの子狼はテイムが出来てないんだから、今近づけると危ないと思うよ。だからあっちに置いてきた。あいつは子供だし勝手に走りまわって遊んでるよ」


 そんな会話をしつつ、母へと2人で向かう。

 僕らを見てた母もお昼の準備をしてくれてた。


 お弁当は母の焼いたパンに干し肉とチーズを挟んだサンドイッチだった。かなり豪華だ!


 1人ひとつで、美味しくいただきました。

 母、ありがとう!


 9月はまだ暑いけど、畑では森からの風が微風でふいてくる。畑も暑いけどその風のおかげで、村のなかほどは暑くない。まぁ、涼しくもないけどね。


 食べて、食休みをとる。

 周りを見回すと、鳥が全然居ないし、遠くにも飛んでる影もない。


「珍しく鳥が居ない。近くに強い獣の気配があるのかもだな。森からは滅多に出て来ないと思うし、これなら少し気が楽だ」


「そうね、少しは居たけど、今はなんか居なくなったよね。気が付いたけど、あっちのほうに何人かの人影があったから、その人たちがなんか鳥よけとかしてくれててそうだよね?じゃないと、鳥が居なくなるなんて、わけわかんないし」


「おお、そうか?気づいてなかったよ」


 そんな会話をしてたら、父のそばまで村長が来てた。


《あるじ、村長連れてきた。知らんふりしてて、約束だよ》


「おお、タクヤ、こんにちは。いい天気になったな。仕事日和で何よりだよ」


「おお、村長こんにちは。今日はいっぱい連れて、開墾地の話かい?」


「そうなんだよ。紹介するけど今いいかい?今度開発村に越して来たハスヤさん一家なんだよ。宅地もタクヤの家の隣りに決まったし、家も建設を準備してる最中なのさ」


「こんにちは。休憩中の様ですみません。移民で越して来ました、ハスヤです。よろしくお願いします。お隣さんの様ですので、いろいろ教えて下さいね。良いお付き合いが出来たら良いのですが。あと、こっちが妻のマチナ、長男ナカチ、次男ナイク、長女ハルネ、次女エナムです」


「ああ、こんにちは。こちらこそよろしく、なんでも聞いて貰って大丈夫だ、俺が知ってる事しか言えないけどね。俺がタクヤで妻のナツナと赤ちゃんがアキラ、で息子が次男のホルスだ。あと学校に長男アポスと、家に三男アスラの6人家族だ」


「村長としては仲良くしてくれると助かるよ。じゃ開墾地もタクヤの畑のそばでいいかな?タクヤは問題ないかい?」


「自分達はタクヤさんの近くで問題ないです」


「俺も問題無いかな。問題があったらそん時だ。そん時は村長巻き込むから、問題無いさ」


「はは、じゃあ問題無いかな。村長的勘だが、ハスヤさんは荒くれ者では無さそうなんだよ。まぁそんな感じだ」


「じゃあ、こっちこそ、よろしく頼むよ」


 そう言って村長達は、近くの林に畑予定の開墾地を割当に向かった。


 見てたけど、問題無さそうだ。


「なんか、いい人達みたいね?お隣さんだって。お隣り空き地だったけど、少し賑やかになりそうだわね」


「そうだな、まぁいきなり信用は出来ないが、所謂様子見だ。問題は無いようだし、仲良くしても良いと思うぞ」


《あるじ、10ヘクタールだ、いい?》

《ヤアコは20ヘクタールがいい?》

《あるじは20ヘクタールで命令する?》


 畑の開墾地は、そんな感じで20で決定してた。


 昼の休憩が終わって、父に言って見張りとテイムの続きをしに、守備地に向かった。


 うちの開墾地は、この守備地の向こうの50メートルを共有地、つまり未来の大通りとして空けて、その向こうの30ヘクタールだ。


 うちの兄が、父と畑にするのを進めている。


 さっきの話だと、その畑からまた50メートル空けて、その先の20ヘクタールがハスヤ達の、つまりは僕の配下の畑になるって事なんだ。


《あるじ、もっと広くなった》

《あるじ、森の手前まで貰った》

《あるじ、村長の謀に嵌められた》

《あるじ、領主も一枚二枚噛んでる》


 結局、森の手前まで10キロが範囲らしい。

 それだと、うちの畑の近くの端の長さが300mで、かけることの10000mは300ヘクタール!


 領主は村長に3年間の無税収を約束した。

 利益確保出来なければ、領主に申し訳が無い。

 なので、出来る範囲で畑にして欲しいと。

 なんか可哀想で、ハスヤが受けたようだ。

 畑に出来たほどの税で良いらしい。


《ヤアコはどうするの?》

《問題ありません。出来たほどで畑に》

《ヤアコ、任せた》


 昼からハスヤは開墾すると伝わって来た。

 耕す力が銀狼だとヤリたい放題だと言っているし、息子と合わせて3人掛かりで開墾して行くそうだ。


 ハスヤの他にも銀狼族が応援に来てると念話だ。

 1時間後の現在50人程の銀狼族がいて耕してる。

 既に1ヘクタールの畑の広さを確保と何話が来た。

 40人開墾10人腐葉土採集の人割で展開中だと。

 30分後程で腐葉土掻き混ぜ土造り開始し再開墾。

 その間に森でオーク5頭を狩りましたとか。

 オークをバラし食用の肉塊にし持ち帰ったとか。


 なんか凄く働き者の銀狼の集団です。


 肉塊は身内で食べるのに配給し調理もするそうだ。


 僕はのんびりと、服を着たウラロとテイムの訓練をしている。


 そのはずだったんだけども。


 テイム獲得の為の鍛錬で、相手を弱体化させる目的の為に、何故か銀狼族のウラロを痛めつけている。

 ヤアコが主体となって無抵抗のウラロを謎の”暗黒の影が虚ろう鈍銀のハルバート”で殴ったり、ヤアコの折れそうな足に履かれた踵の先が細い女性用の靴で蹴ったりしている


 ウラロはHPが多いとかで、ヤアコが攻撃しても100分の1しかHPが減らないし、僕が攻撃してもヤアコが何処からか貸してくれた僕が持てる最小の重さの”太陽神の加護付きハルバート”だと、ウラロを血だるまに出来ても、HPは1程しか減らないから効率が悪い。

 同じ類の武器で、一気にHPが1までに出来るハルバートもあるそうだけど、貸出を頼んだら教えたクセに初め面白く無いとか言ってたのが、最終的に僕にはまだ早いと言い出し、この武器は呪われていて笑いながら振り回さないと効果が出ないハルバートだと言い訳をはじめたので、いくらなんでもそこは僕も呪われたく無いので諦めた。


 更に人化したウラロには気の毒な事に、ヤアコと僕が交互に攻撃しないとテイムの効果というか、スキルが生まれにくいと言う更なる試練の様な厳しい指導が僕に入り、動揺した僕の手が滑りウラロの頭に直撃したりしている。


 なんと言うか、僕はこの方法は言いたくないけど好きではないから、手に力が入らない。

 でもウラロは僕に早くテイムのスキルが生まれて欲しいらしく、攻撃の手を休ませてくれない。

 ああウラロ?もうやめようよ?僕が持たないよ?


 持たない僕の2度目の気絶のあと、ようやく僕にテイムのスキルが生まれたと、ヤアコに言われてはじめてそれが感じられて、なんとなく分かる様になったと思う。


 スキル自体は詳しく調べたいからミタイだな。


ミタイ『ホルス』テイムスキルオープン!


検索、探知!

✖️検索『ホルス』テイムスキル

✖️技術

 ✖️テイム

  ⬛︎闇属性従属補助スキル

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 あったよ!やったね!

《主様、良かったですね》


 僕の後ろに付いて歩く、子狼の尻尾が揺れている。


◇ ◇ 帰りますか


 テイム出来たと口裏を合わせて、父のところへ行くと帰り支度をしていた。

 そろそろ夕方前だから母は兄のお迎えがある。

 そうして、みんなで帰る事に。


「父、コイツとテイムの訓練でうまく行ったよ。テイム生まれた。たぶんコイツが先に僕のこと気に入ってたからと思う。テイムして繋がった感じがするし、気に入った感じもしてる」


《主様。話すとボロが出ますから少し補助致します》

《主様。今は聞かれた事だけ返答をしましょう》

《ウラロ分かった》


「そうか、テイム出来たか?やったなぁ、流石だな!コイツ触っても怒らないか?」

《触るダメ?》

《少しなら我慢します》


「少しなら怒らないと思う。たぶん」


「おお、そうかそうか?」


 恐る恐る父が背中を撫でるが、奴は大人しい。

 大人しいと、今度は頭を撫でる。

 恐らく次は尻尾だ。

《尻尾は逆鱗と同じだと、説明乞う》


「父、尻尾触るとコイツ噛み付く!」


 ビクッて、尻尾へと伸ばす手を止める父。


「父、しっぽ触るのは″つがい″にと伝わってくるよ。コイツはメスだから、父コイツと″つがい″になる?」



「そうか?でも尻尾は止めよう、噛み付くのはな?テイムしてて子犬程度でも、噛めば狼だし俺は良くても、流石にみんなに討伐されるだろうしな」


「ありがとう、父」

《主人、母と妹なら触るの許す》


「父、オスは尻尾ダメと伝わる。でも母とアキラは良いらしい。どうしよう」


「コイツを触るってのは、それを他の他人の前でやると、収拾がつかんだろうな。今日はここに残して帰ろう。ホルスもそれでいいか?」


「それでいいよ」


「狼の子だから、一応村長と相談して、どう扱うか決めないとな。それからがいろいろだな」


 そんな感じで、帰る事になった。

 名前はウラロと説明し母に触るかと言ったけど。

 母も一応少し触ってみて、いい感じにモフモフしてるから、どうやら気に入ったらしい、そろそろ帰るけど、なんかあとは名残り惜しそう。

 だけど、諦めたのか、やっぱり帰る事になった。


「ウラロまたねー、あした来るねー!」


 母の言葉を残し、帰路についた。


◇ ◇ 帰途


《ウラロ、母に気に入られたね》

《主様、仔犬形態の私は人族女性に敵はなし》

《ウラロ、貴族女性は敵と忘れたか》

《ヤアコ、詫びる、昔のこと完全に失念だ》

《ウラロ、気をつけよ、ここは人族の国ぞ》

《ヤアコ、森の褒美の余韻が》

《ウラロ、それはだがしかし、同意だが》


 なんて念話をしながらテクテク歩く。


 おっと自宅に近づくと、風景に変化が。


 トントン、カンカン、ドンドン、ホイホイと。

 建屋を建造してる音だよ、大工の仕事の音が周りに響いたりしている。


 うん、そこに居る大工達の全員の頭付近に、ヤアコ達と同じ様な、薄い名札が纏い付き僕に示している。


《皆僕を無視しろ。仕事頑張れ。感謝してる!》


 大工の仕事が一瞬止まった。

 しかし、瞬時に作業が再開。


 隣のお家は、簡単な入り口と台所と食事をする部屋と6人が寝る程度の雑居部屋部分が出来ていて、そこを基本にして更に拡張するような建て増し建造中だった。

 住人の男達は開墾中だ、僕らは早めに帰った。


「おお、出来てるな、結構早いな。あれ、こんなに大工達が居たか?これだけ居れば、他の家にも人手が回せるな。うん丁度良い、今から村長とこ行くから、話しをしてみよう」


 母に村長のところへ行ってくる!とか言って父は出かけて行った。


 母はアキラを家に寝かせ、兄のお迎えに行く。

 僕は留守番と薪割りだ。


 早速準備して、薪割り開始。


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 うん、順調に上達してるっぽい。


《そういえば近所に王都密偵の噂があるから、念の為に、ヤアコへ真偽の調査を依頼したい》


 僕のお願いの指令がヤアコに届く。


《主人。承知しました!》


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


《調査完王都密偵が居た。既に認識阻害処理済み》

《主様、従魔部隊で邪魔なる存在を認識済み》

《主、邪魔対象なら認識阻害を処理》

《主様、噂のおばさんは王都密偵が確定、処理完》

《主、今現在で主人のスキル疑惑の噂は消滅完了》

《主様、今現在で主人獲得計画を察知》

《主様、主人の獲得計画は来年学校で展開予定》

《主様、計画対象認識完。対阻害計画発動保留中》


 えっ、僕の獲得計画があるの?誘拐かな?


《主様、誘拐計画では無く婿養子計画かと》

 

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 婿養子ってアレかな?


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 マアリは兄を諦めたかな?


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 僕はトワネを警戒してる。

 ヤツを見た事だってないし、でもほっとこう。


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 あ、兄が帰ってきたよ。


◇ ◇ 計画者


「兄、おかえり」


「ああ、ただいま」


 あ、機嫌が悪くないよ。


「彼奴等、凄く大人しくなったよ。最近じゃモテモテだよ。まぁ、悪さをしなくなったしいい事だけどな。ホルスのおかげだけど、経緯とかを話せないのが、なんか焦ったい所とかあるかな?」


 上手く行けば行ったで、いろいろだね。


 父の帰りを待ちつつ、母の料理が整う。

 ちょうど見計らったように父が帰る。

 息、合っててちょっと幸福感。

 家族が幸せだと、伝染する説ってやつかもだ。


 ご飯の頃にはお隣さんの大工も仕事は終了した様だ。


 夕ご飯のあとは、兄と計算の勉強をして、いい時間になったら、就寝。


「おやすみなさい」


◇ ◇ お裾分け


 翌日だ!目が覚め今日も元気な朝が来た!


 起きて着替えて、大事なお祈りをして朝ごはん。

 みんなにあいさつ。


 「みんなおはよう」


 ご飯を食べ始めたらお隣さんが挨拶に来た。


「おはようございます。朝早くからお邪魔してすみません。今朝作り過ぎて、パンなんですが良かったら貰ってくださいませんか?まぁ、越して来た挨拶だと思って下さっても構いませんので、そう言うわけですから、是非」


「まぁ、おはようございます。なんか気を使って頂いて悪いですね。でも嬉しいです。お返しも何も出来ませんが、では遠慮なく頂きますね」


「ふふっ、良かったです。断られたら寂しいところでした。ついでですみませんが、いっぱい作り置きしたので、こちら私自慢の肉料理と、こちら沢山大工さんの親戚から頂いたオークのお肉です。王都で買うとすっごく高くて、高級なお店でも出されるレベルと大工さんの親戚のかたのお話でしたよ。ほんとたくさんであるので貰って下さらないと、私の家の消費では余って絶っ対に腐らせる自信がある量なんですよ。ほんとお願いします」


 そう言いつつ、近くの机に持って来たパンと料理とかオーク肉とかをいっぱい置いて、足早に帰られた。

 父もびっくりだよ。


「なんかいっぱい気を使わせたわね。でもここはもったいない伝説の通り食べないといけないわ。みんな覚悟して食べましょう!」


 みな、静かにうなづいてる。

 よし食べましょう!


 朝のスープを食べながら、貰ったパンをパン籠に入るだけ入れてテーブルの真ん中に母が置く。

 今日はパンなしでスープだけだったので、パンを各自で掴み取り、一斉にみんなで齧り付く。

 その間に、貰った肉料理を各自の皿に注ぎ分けてくれる母と、順次貰った皿の肉料理へと口を無言で運ぶ家族、遅れて肉料理を口にする母。


「美味しい、この肉料理とパン。流石、私自慢のとか言える料理の腕前だよ。お店とか出せそうだよ」


 みんな無言で食べる中、饒舌な母。


 母の顔を見ず食べながらこころの中でつぶやいた。

 母、実は昨日これ食べたし、ほんと美味いよね。

 それと今念話が入って分かったのが、この料理は王都でヤアコの従者が同じ料理を出していて、繁盛してて、王様も今日の今朝は同じのを食べたそうです。パンもだって。

 今朝は王城の後宮では早朝から王妃が何かする予定で王宮の料理長がその対応で大忙しだったので、そっちに掛かりきりの王城の料理長が、急遽要求された王様の早朝の食事提供を、王様の要求に対して拒否したと聞いていて、それでヤアコの店から急遽で料理を配達したと聞いた。如何なる理由でも王様の食事提供を拒否した料理長は明日朝まで、王城前の一般広場で磔の刑にあう様だ。


 それを聞いたけど王都って大変だよ、お疲れ様。


 無言の中で進む朝ご飯は、直ぐに皿は空になり、大盛りだったパン籠もいつの間にか空になっていた。


 食後は後片付けしてから、兄は準備して学校へ母が連れ添って送って行った。

 僕はひとりで、庭に出て薪割りの続きだ。


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 母が帰るまでを目標にして薪割りをする。


 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!

 カスコン、カスコン、カスコン、カスコン!


 そんな中お隣で大工さん達が、とんとん、とんとんと金槌の音を奏でる。


 あ、お隣のマチナさんだ、茶番開始だ!

《茶番開始、打合せ通り加えアドリブ全開!》


 横に父居る、良い子がする事をしとかないと。

 先ずは、朝の挨拶だ!


「その、朝のパンとお料理!ありがとうございました!美味しかったです!」


「ああ、お隣のホルスくんね。お口にあったのなら嬉しいわ。また作り過ぎたら、お届けするわ。これからもよろしくね」


 僕の従者がニコニコ挨拶を返す。

 大工たち僕の従者も、ニコニコ作業中。


 父も挨拶する。


「おお、先程はありがとうございました。お料理美味しかったですよ、ご主人が羨ましい。ほんとご馳走様でした」


 ニコニコだ、去っていくお隣のお母さんが居なくなると、僕に言う。


「うちのお母さんのほうが美人だよな」


 うん、と、頷く。

 惚気でも無いような、そうですかそうですか。


「お隣さん、みんなぺったんこだしな」


 うん、と、頷く。

 やはりそうか、みな見るところは同じらしい。

 狼や、キツネに謀れたとは思うまい。

 いい意味で僕の作戦通り、目立つダメ絶対。

 いい作戦だ、普通顔と痩身細身体型。

 敵は少ない方が良い。


 たまに、誰かからちっぱい神教徒が居るって噂とか聞いた事があるけども。

 そんなヤツ実際には見た事なんて無いし、でも其処は注意はしておいて損は無いと思ってる。

 でも注意だけども、その変態さんも基本は美人が大好きらしいとの噂だから、こっちの僕等の普通顔の負けて勝ちってヤツだ!

 何も問題は無し!


「料理は、判断出来んな。あんな食材はナツナは使った事ない筈だしな。お隣さんのは美味しいが、お母さんが同じ食材ではどんなか分からんしな」


 父、パンには触れてこない。

 実際、パンはそれぞれの美味しさがあると、子供の僕でもそう思うところがあったりする。

 僕の母には僕の母の美味しさがあるさら問題は無い。

 父は触らぬ神に祟り無しの勇者伝説には沿って言っているふしがあるっぽい。

 判断は正しいのかもだ。


 僕は薪割りの片付けをした後、今日も畑のお手伝いをする為の準備をして、母の帰りを待つ。


「そうそう、テイムの件は話を通したぞ。この赤い布をウラロの首にしっかりと結べ。あとその後ろ足もだ。後ろ足の足首に結べばいいぞ。前からみたら首の赤布、後ろでは両足首の赤布。それで村の中でも連れ歩ける。ただ問題は事情を知らん金持ち達だな。まぁ、問題があれば俺に後でもいいからちゃんと言え。絶対になんとかする」


 うん、と、頷く。


 時にはギルドからテイマーが、同行して使役してるドッグ系やウルフ系の獣も連れて来るので、そこは大丈夫だと思っている。

 村の中で僕が本当にテイマーになったと、父は知らしめたいのだろう。


 問題は僕が小さい6歳の子供だからだ。

 今のテイマーは、”実力実績が冒険者の格付けであり、自衛力のあるテイマー”とかになってる。

 僕の場合はそうではなくて、”非力で子供で、自衛力のないテイマー”であって、それが、″隙なんか子供だからたっぷりあるし、好き放題に出来るテイマーがいます″の理由になる程の、弱者なんだ。

 それで、テイムした相棒が、力任せにとか、強引にとか、僕から取り上げられ盗まれた場合もあるわけだし、僕も誘拐の対象になるんだ。

 父の心配はその辺だと思う。

 ウラロもそういう事に近い話をしていたし、ヤアコもそんな事を言っていたので間違いない。たぶん。


 その場合、最悪の場合にはウラロに頼み、その悪者をウラロの従者に強制的にしてしまう予定だ。

 ウラロは強制的に従者にしたあと、従者の記憶を辿り、従者の全く知らない土地に連れて行き、そこで記憶から消したい部分を消し、従者を解放することが出来る。

 すると従者だった者はその時の記憶も消え、問題も無くなる。

 そんな事が出来るので、心配は無い。


 考え事をしてたら、待ってた母が帰って来たので、母の準備が出来たらアキラを連れて、畑へ行く。


◇  ◇  計画と対策


 今日も歩いて30分、畑までみんなでテクテク歩く。

 道々母は、ウラロの事が気になるようだ。

 寂しく無いかな?お腹空かせて無いかな?


 そんな感じで畑に到着。

 父は、先ずは準備。


 母は、周りをキョロキョロと、ウラロを探す。

 ちょっと居ないじゃないの!と。

 僕を見る。

 

「ウラロ居ないよ?連れて来てよ。テイマーだから出来るんでしょ?ここで待ってるから」


「あっちに居ると思うよ。僕があっちに行かないと出て来ないから、呼びに行くね」


「うん、お願いね。連れて来たら、こっちにウラロをおいていて。そしたらまた、ホルスはあっちで見張りの続きね?」


「僕が行くと付いてくるけど、おいておくのは出来ないよ。ウラロのあるじは僕だから、僕の後をついてくるよ」


「狩りの時は指令通りにあるじの事とか言うこと聞くはず。試しにやったら分かるよ?」


 父は畑へ行った。


 僕は言う通り、ウラロを探しに行く。


《ウラロどうしよう。母の言う事ってできるかな?》

《ウラロは主様の従魔。主様の側がいちばんです》

《主。母の事は無理です。主に甘え過ぎです!》

《何か僕にも対応出来る良い案はないかな?》

《主。見た目が狼と同じ犬の仔犬はどうですか?》

《それは良い案と思う。母の所に連れて行けるか?》

《ヤアコには提案した犬の仔犬探しをお願います》


 だいたい僕の考えがわかるのだ。

 ヤアコは探しに行ってくれた。


 ウラロを連れて母の元に行く。

 いやこれは、面倒臭い事になりそうな予感。


「あ、ウラロおはよう!元気だった!」


 即時、母のモフモフ攻撃開始。

 どっちから見たら攻撃だろう?


 母がモフモフしながら僕を見る。

 僕への攻撃開始かな?


「じゃホルスはあっちだね、見張りをお願いね」


 母はウラロを捕まえたまま、僕に行けと言う。


「じゃあ僕は向こうへ行くから」


 10メートルくらい離れたらウラロがついて来た。

《主様。その調子です。母の為に頑張りましょう!》


「ちょっとウラロ!戻ってきてー!ホルスー!こっちに戻って来てー!」


「ほら、やっぱりついて来たね」


「いや、内緒でついて行くように、命令してない?」


「してないよ。じゃなんて命令したらいいの?」


「うーん、わかんないな。テイマーじゃないし」


「じゃお母さんもテイマーの為の訓練とかする?」


「うーん、今からは無理でしょ。親の仕事もあるよ」


「じゃウラロは言う事聞かないけど、ちょっと他のヤツで母の言う事聞きそうなの探して、僕がテイムしてから連れてくるけど、それじゃダメ?」


「えー!ウラロがいいよ。大人しいし優しいよ?」


「じゃあ、お試しで比べてから、決めたら?」


「うーん、迷う。うーん。じゃ一度お試しで」


「じゃあウラロと居たら狩りしてくる。待ってて」



 ウラロを連れて守備地に戻り、ヤアコと合流。


《主、犬の仔犬が確保出来ました。見目ウラロです》

《ヤアコ、ありがとう》


 ヤアコの側に、母ご依頼のウラロそっくりの中型犬が、尻尾を振ってこちらを見てる。

 名札が浮いてる。すでに僕の従獣らしい。

 なんか新しい。従者、従魔に次いで、従獣ですか。

 いや、従犬?


《ヤアコ、コイツの能力はどうしようか?》

《主様、犬は我と同じ事は出来ないのです》

《主、見目ウラロ同等、無能力でも問題ないですよ》


《ヤアコ、この子の名前はなに?》

《主、今イヌと命名。お手とか躾てみますか?》

《ヤアコの知識と経験で賢いイヌに出来る?》

《主、承知です。小一時間程向こうで躾てみます》


 ウラロと留守番して躾が終わるまで1時間。暇だ。


 周りを見回す、けど、鳥なんて飛んでない。

 範囲内巡回と畑全体と警戒は他の従魔が周ってる。


 うん、本当に1時間の躾の待ち時間とは言えども、貧乏人には何もしない時間は眠らないと暇だ。

 薪割りの訓練も、親にはまだ言ってないけど、スキル『キコリ』が既にある。

 今日の夕方に薪割りしたら、その時に生まれたという事にして嬉しそうに言おう。


 父の中では、『キコリ』より先に『テイム』があるけど周りには『キコリ』が授かったと言っているので、いろいろだと思う。


 今はそんなに急いで直ぐにやる事もない。

 そう言えば、ひとつあったよ、どうしよう。


《主様、心配は不要です。今から察知して対応しても大丈夫ですよ》

《魔族だよ?任せてもいいの?おおごとは困るよ》

《ミタイで判明済で奴は無能で、一応調査中ですよ》

《10月初めの村祭で、僕は死にたく無いよ?》

《主様。では調査要で判明後に報告方向で進めます》

《ウラロ、助かるよ。それでお願いします》


 お隣さん、ハスヤの畑はどうなんだろう?

 冒険者組も怪我とかして無いといいなぁ。

 おっと、僕確保とかもなんとか言ってたな。


 従者従魔もやたら増えたし、今の僕には管理は出来ないし、ヤアコとウラロが居ないとダメだ。

 これもなんとかならないかな?ふらふら。


 おっとウラロの攻撃か?

 見ると獣から解いて人型に。

 なぜに人型?で服無しはだかだ、ふわふわだ。

 あれ、後ろからふわふわだけど、さっきのは?


《主様、ミタイで最新を知るべきですね》


 そうか、流石ウラロだ。

 甘え過ぎの僕はもう色々ダメかも知れない。


ミタイ『ホルス』最新登録能力オープン!


検索、探知!

✖️検索『ホルス』最新登録能力

✖️技術

 ✖️ヒシヨ〔隠〕

  ✖️闇属性自己管理補助スキル

   自己管理向け脳内秘書権限補助

   Lv25

   経験値 50/100

   ⬛︎祖の恩恵継承

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


 ああ、また授かりましたか、ありがたい。


 なんか、必要となると願わなくとも授かりますが、問題無いのかな?

 余りにも僕だけの能力だよ。

 そうだった、気にしたら負けだ。

 使い方も、今だいたいだけど思い出したと言うか分かった気がする。


 でも今は使わなくてもいいか。

 なんで必要と判断された?


 そうしてたら小一時間経過でヤアコが戻った。

 横にウラロが狼形態で控えている。

 その横にイヌが控えてる。

《主人、躾けましたので確認をお願いします》


 言われて改めて見れば、なんか少し見ない間に賢そうになった様だ。

 「おて!」「おかわり!」「おすわり!」

 おお、なかなかだよ。

 「ふせ」「ちんちん」あ!メスだ!

 なんかそんな事も、聞くのを忘れてた。


《主人、人化は不可能です。でも見目はウラロです》

《はい!了解です!》


 「飛べ!」「あの木まで走れ!」「もどれ!」


《ヤアコ、イヌって言葉は全て理解するのかな?》

《主人、念話仕込済です。主人と念会話が可能です》

《イヌ、僕の言葉はわかるか?》

  

 「ワン!」

《イヌわかるわん》

 「エサ欲しいか?」

 「ワン!」

《イヌエサほしいわん》

 「今度は吠えたらダメだ。出来るか?」

 「ワン!」

《イヌできるわん》

 うーむ。

 とりあえず、いいかな。

《これから命令する。僕の母にも全て従え》

「わん!」

「ときどきとか夜は、静かに”クーン”となけ」

「クーン」


 うん、とにかく母に見てもらって判断しよう。


 「今から、お母さんに合わせるからついて来て」

 僕とウラロと、見目ウラロに似てるイヌと、母の待つところまで行ってみる。



◇  ◇  査定


 遠くで、僕を見つけた母がニコニコだ。


「見つけてテイム出来た。見た感じ同じ。確認して」


「へー、でも変な匂いするよ?大丈夫かな?」


「気に入った?要るなら洗う。2度手間だから」


「えー!洗ってよ!じゃ無いと確認出来ないよ?」


「分かったよ、水あらいしか出来ないよ。イヌ、命令する、走って水場探して自分で体洗って走ってここに帰ってこい。いけ!」


《イヌ、ヤアコに水洗いして貰え!行け!》

《イヌみずば?ヤアコ?どっち?》

《イヌ、ヤアコのとこだよ!行け!》


「わん!」


 目的地が明確にわかって走って行くイヌ。


「なんでイヌ呼びなの?」


「え?だってイヌだから。何か問題がある?」


「ええー!もし気に入ったとき、ずっとイヌ呼びなの?変じゃない?」


「気に入ってお母さんが飼う?なら、お母さんが面倒見るとして、その時はお母さんが名前をつけるといいよ。それで待ってる間に、名前を考えようよ。気に入ったら、そのまま名前をつけようよ」


「そっか、そうしよう。うん、それがいいかな。じゃ何がいいと思う?うーん、なんにしようかなぁ」


「名前は自分で考えてね。じゃ無いと、イヌのままだからね」


「えぇー?なんかなぁ。名前なんにしよう。うーん」


《ヤアコ、イヌそっち行ったよね》

《主人、今3回目の水洗いです》

《主人、テイムの魔法の所為にしましょう》

《所為とは?》

《少し良い匂い付けをテイム魔法で考案したと》

《うん、良いかも。後でテイム魔法やってみる》


 水洗いの終わったイヌが戻ってきた。


「わん!」

《イヌかえってきたわん》


 うん、だいたい乾いてるね、いちおうゴシゴシして、乾いた感じにしてみる。

 もふもふの感じもいいかな?


「お母さん、どうかな?触ってみる?」


 恐る恐る触る母。


「なんか臭いよ?水洗いじゃダメじゃないかな。これではモフモフするのヤダよ」


「臭いの?こんなものじゃ無いかなぁ、イヌだし」


「ウラロがいい。ウラロはいい匂いがする」


「じゃ、ちょっと待って。ウラロと同じ匂いね。近い匂いになるかもだけど、やってみる」


 イヌに手をかざして、唱えてみる。


「イヌよ、ウラロに近い匂いで、イヌ独特の少し良い匂いを纏え!」


 唱えると淡い白色の魔力の糸とか網みたいなモノが出て来てそれにイヌが包まれた。

 えっ、なにすごいかっこいい、これ僕のスキルの仕事なの、魔法とかやったの初めてだよ!魔法やった!

 これってなんだろうく?

 魔力の網で出来た蚕のまんまるい繭に似てるかな?

 じゃあ、魔力のまと、網のみと、繭のゆと、それでまみゆって呼ぼうかな、まみゆだから魔網繭だな。


 2〜3秒でその魔網繭が消えた。


 近づいて匂いを嗅ぐと、ああ、イヌっぽいけどウラロに近いかな、いい匂いを纏っている。


「どう、お願いします。匂いはいいですか?」


 恐る恐る近づいて、鼻をすんすんとする母。


「うん、いい。いい匂いだよ!いい匂い合格!」


 モフモフし始めようとする母。

 母には魔網繭が見えてないっぽいな?

 僕にしか見えないのかな?


「ちょっと待って、危ないよ!」


「え、モフモフするのはダメなの?」


「匂いが合格しただけだよ。触るなら命令しないと噛み付くかもだし。とにかくいきなりの行動は慣れないうちは、イヌもびっくりするからやめてね」


 改めて母に分かる様に調教してる風を装うのだ。


「イヌ命令するよ、今から触ったりするから、お母さんに対して攻撃したらダメだから、大人しくしてなさい。よし!」


 見てた母、即質問がくる。


「ね、よし!ってなに?」


「行け!とか、やれ!とか、よし!とかで、命令の区切り?みたいに使うんだ。じゃ無いとイヌがわからないからね」


「ふーん。で、触っていいの?」


「いいけど、無茶はしないでね」


 言った途端、モフモフしまくる母。

 モフモフは良いです。それをしまくってますが、合否の返事は?夢中になってて忘れていませんか?


 なおも、モフモフ、モフモフ、あ、終わった?


「モフモフ合格です。大人しいし。これならイヌでも構わないかな?ところで質問です良いですか?」


 嫌な予感がする、なんだろう?


「えっ?はい。分かる事なら」


「さっきの匂い?のやつ、なに?私にもやってよ」


「えっ、だ、ダメだけど」


「おっと、なんで詰まった?白状しろ!で、匂いを私に掛けろ!」


「詰まったのはびっくりしたから。匂いはたぶんダメだよ。お母さんはテイムされた使役獣じゃないし」


「使役獣扱いでいいから!いい匂いをお願いだから」


「テイムで使役した動物にしか効きません。なのでダメです」


「ええぇー!ウソだ!ケチじゃないの!ヘルもんじゃないよね?やってよ!今のイマ出来たでしょ!」


「ナツナよ、ウラロと同じ匂いで、強めのいい匂いをまとえ!」


 うるさいので、母に手をかざして唱える。

 気持ち掛からぬ様に心の中でお願いしながら。


 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

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