第16話 謙信の遺志
孤島における戦役を終結せしめた武蔵一行は、再び旅路についた。彼らは、各地を巡り、東軍の悪行を阻止すると共に、謙信の遺志を継承する者を増やすことに尽力した。
然るに、武蔵は夢幻の中に於いて、戦場にて一人の若武者と邂逅した。その若武者とは、往時、織田信長の小姓を務めた蘭丸その人であった。
「貴公は…蘭丸殿か?」
武蔵は、驚愕を隠せなかった。
「然り。我は、この世に遺されたる戦の記憶。貴公らは、争いの根絶を志しているが、戦の記憶は、決して消滅することはない」
蘭丸は、冷徹なる口調で告げた。
「戦の記憶…とは?」
武蔵は、蘭丸の言葉の真意を理解し兼ねた。
「戦は、人の心を蝕み、憎悪を増幅させる。その憎悪は、世代を超えて継承され、新たな戦を惹起する」
蘭丸は、武蔵に語りかけた。
「然らば、如何にすべきか?如何にして、戦の連鎖を断ち切ることができるのか?」
武蔵は、蘭丸に問い質した。
「戦の記憶を、受容することである。憎悪を否定するのではなく、受容する。そして、その憎悪を、愛へと転換するのだ」
蘭丸は、武蔵に告げた。
「愛に…とは?」
武蔵は、蘭丸の言葉に戸惑いを隠せなかった。
「然り。愛こそが、戦の連鎖を断ち切る唯一の力。貴公は、それを知悉しているはずだ」
蘭丸は、そう言い残し、姿を消した。
武蔵は、蘭丸の言葉を胸中に刻み、再び旅路を続けた。彼は、各地にて、戦によって傷を負った人々と出会い、彼らの憎悪を、愛へと転換することを試みた。
然しながら、彼の試みは、容易ではなかった。人々の憎悪は、深く根を下ろしており、容易には消えなかった。
斯様な状況下、武蔵一行は、東軍との最終決戦の時を迎えた。東軍は、蘭丸の言の如く、憎悪を増幅させ、世界の滅亡を企図していた。
武蔵一行は、東軍の軍勢と激戦を繰り広げた。彼は、蘭丸の言葉を胸に、憎悪を愛へと転換することを試みた。
彼は、東軍の兵士たちに、憎悪を捨てるように訴えかけた。彼の言葉は、当初、誰にも届かなかった。
然しながら、武蔵の誠実なる言葉は、次第に人々の心を動かし始めた。東軍の兵士たちは、武器を捨て、武蔵に協力するようになった。
武蔵一行は、東軍の将軍たちを打ち破り、彼らの野望を阻止した。世界は、再び平和を取り戻した。
戦役終結後、武蔵は、蘭丸の幻影と再会した。
「貴公は、戦の連鎖を断ち切った。貴公の愛は、世界を救済した」
蘭丸は、武蔵に微笑みかけた。
「感謝する。貴公の言葉が、我を導いてくれた」
武蔵は、蘭丸に感謝の言葉を述べた。
蘭丸は、静かに頷き、再び姿を消した。
武蔵は、仲間と共に、平和なる世界を築くために、旅路を続けた。彼の旅路は、未だ終わることはない。
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