9話 常識ってのは覆すためにある
「え~、桜の花が咲き誇るこの良き日に、皆さんを本校に迎えることができ、大変うれしく思います。我が校は…」
校長と名乗る人が舞台上で長々と話している。
こういう長話は苦手だ。
特にこう暖かいと…ついついあくびが出てしまう。
「ふわぁ…」
(早く終わんねぇかな…)
ぼーっと壇上を眺めていると、校長が去っていった。
次は首席の挨拶らしい。
(首席…1番頭いいやつか)
瞑ってしまいそうな目をこすり、ぼんやり眺めていた…がその目はすぐにパッチリと開くことになる。
(ちょ、ちょっと待て!?なんであいつがいるんだ!?)
"そいつ"が現れたことで、式の最後まで私はそいつのことで頭がいっぱいになった。
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「それじゃあ、今度の登校は月曜だから今日渡した時間割とかを見て各教科のノートとかを用意してね」
「「「「さようなら」」」」
そう言って教室にいたクラスの奴らが続々と席を立つ。
自分の後ろの席の人間に声をかける者、中学からの友に一緒に帰ろう言っている者、様々な人がいる。
しかし、私はそれどころでは無かった。
(なんで…なんでこいつが…)
入学式の首席挨拶で現れたこいつはまさかとは思ったが私と同じクラス
ホームルームが終わった途端、クラスの女子が大量にそいつの席に集まる。
(顔…いいもんなぁ、しかも首席ときた。そりゃ、人気者になるわ)
普通だったら、こういう奴ってのはそのまま女子の話に付き合うのだろう。
だが、こいつは違う。
女子のことを
「
一斉に女子の目線が私に向く。
そして、コソコソと話し始める。
「この子知り合いなのかな?」「入学初日から?」
(やめろぉぉぉ!!そんなことしたら私が注目を浴びんだろぉぉ!!)
内心慌てる私にこいつはとぼけた顔をしながら、少し考えたような仕草をする。
そしてあ、なるほどという表情をした。
(こ、こいつ何考えてんだ…!?)
「もしかして、疲れちゃった?いいよ、如月ちゃんが良ければ家まで抱っこして帰ろうか?」
(バカやろぉぉぉ!!そんなこと言ったら…!!)
「い、家!?」「同棲!?」「しかも、抱っこって…どういう関係なの!」
私は恥ずかしさで思いっきり教室を飛び出してしまった。
唖然とする奴…
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校門まで走ると、
私を見つけると彼女は「
普段なら絶対にしない。
というかしたことも無いが、私は恥ずかしさのあまりに自分よりも10cmは低いであろう彼女に抱きついてしまった。
椿はとても動揺して、「ど、どうしたんすか!?」と言いながらあわあわしている。
そんなことをしているうちに先程置いてきた海斗も私に追いついたのかハァハァと息を切らしながらこちらへ来たらしい。
私たち2人の状況を見て、椿は何かを察したのか「あぁ…」と呟いていた。
その数十分後…自宅にて
「だから!何で、海斗がいるんだよ!」
「何でと言われましても…」
家に帰り
「もともと、学校には椿と
もぐもぐと食べながらカズが私に説明しだす。
「安全の確保ぉ…?」
イラつきながら、私は返事をした。
「そう。ほら、
「ただそこで、ハプニングが起きたんすよ。まさかの秀さんがウォンデッドの術で一時的にダウンしちゃったっす」
「もともと、秀が同学年だったから1番側近で朱乃のことを守ってもらおうと思ってたからまさかのアクシデントだったってわけだ」
「で、まあ色々あって海斗にも学校に通ってもらうことになったってわけだ。秀が回復しない当分の間は海斗がお前のこと守るからな」
カズがそういうと、海斗は「よろしくね」と言いながら笑顔でこちらを向いてきた。
しかし、説明を聞いても私はまだ納得出来ない。
「いや、守るんならよ?蒼空とかカズとかじゃダメなのか?」
1番背が高く、性格的にも年齢的にも高校生に1番似合わない海斗を指名したのは訳が分からなすぎる。
「私は大学通ってて…ちょっと厳しいんだよね」
「俺はめんどくさいからやだ!」
「蒼空はともかく、カズは理由になってねぇよ!」
そう突っ込むとカズはえへへと笑う。
若干イラついた。
「ま、ともかく頑張れって。入学しちまったんだ。海斗も高校生もう1回やり直しだが修学旅行とかもあるし楽しんできな」
「えぇ…これでほんとに大丈夫かよ…」
私はこれからの3年間が入学初日でとても不安になった。
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