フェンリルの加護
ある夜、洞窟で寝ていた真奈たちは奇妙な気配に目を覚ました。森の奥深くから、鈍い地響きのような音と、木々の間を揺るがす影が近づいてくる。「何か来る……」男が警戒心をにじませつつ呟いた。
その正体は、輝く銀色の毛並みと、鋭い黄金の瞳を持つ巨大な狼だった。フェンリル。目の前にいる神話の存在を見て、一同は息を飲む。敵か味方か見極められない緊張感の中、フェンリルは彼らに対して攻撃する素振りを見せず、静かに距離を詰めてきた。
最初にその異様な状況を破ったのは、好奇心旺盛な彩乃だった。「怖がらないで、たぶん友好的だよ!」彼女は慎重に近づき、手にしていた小さな魚を差し出した。フェンリルは彼女をじっと見つめると、一瞬鼻を鳴らし、その魚を受け入れた。
その日を境にフェンリルは彼らの周囲を離れなくなり、奇妙な絆が芽生え始めた。フェンリルは見張り役を担い、夜には洞窟の入り口を守る存在となった。さらに、その嗅覚と足の速さで、食料となる小動物や果実を見つけるのを助けた。最初は怖がっていた響も、いつしかフェンリルの横で記録を描くほど打ち解けていた。
フェンリルの存在は、無人島での過酷なサバイバルに新たな希望と安心感をもたらした。彼らはただ生き延びるだけでなく、フェンリルとともに、新たな生活の形を築き始めるのだった。
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