第28話 作戦会議
鵺討伐から約3週間が経過し、11月も中旬に差し掛かった頃。第2層Aランク戦域の攻略も最終盤に差し掛かり、ボス戦当日となった。
前回の徳川慶喜戦は何の対策も無しに挑んで何とか勝つことができたが、毎度無策で挑むのもどうなのだろうということになり、朝から会議を開くことになったのだ。
今は、これまでの探索で判明したことを各自挙げてもらい、北斗が順番にボードへ書き写している。
「これだけ挙がればもう分かったようなものだろう」
「あぁ。第2層のボスは恐らく織田信長だ」
ボードには、織田信長がかつて使用したとされる織田木瓜紋、丸に二つ引き紋などの家紋の名前が6つ。銭貨に掘られた文字も二の丸御殿の時は寛永通宝だったが、今回は信長がいた時代に流通していた永楽通宝に変わっている。
モンスターの欄には森蘭丸を始めとす信長に仕えていた者の名前が連なっており、その他にも鉄砲兵の増加と記載されていた。
「まさかうちの神さんが敵、それもボスやとはな……」
「え、そうなんすか?」
「あれ言うてへんかったっけ? うちの神社、信長さん祀っとるんよ」
「へぇ、最近の神社は武将も祀ってるのか。凄いな」
案外、神社というものは日本神話に登場するような神様以外にも、織田信長を始めとする武将や皇族などの歴史上の人物、山や木などの自然物、鏡や武器なんかも祀っていたりする。それこそ祟魔と呼ばれているものが神に昇格して祀られるケースも少なくない。
ん? ということはやっぱり織部の兄貴って……。
サナに視線を向ける。すると、話を聞いていた華南がふと口を開いた。
「そういえば、学園時代の先生が所属してる神社も信長公を祀っていたな」
「多分、それあたしの兄貴や。織部信武って名前やろ?」
「あぁ、そうだ。思えばサナの苗字も織部だったな」
あの先生とこいつが兄妹な……。どっちも性格は悪いし、人の言うこと聞かないところはそっくり。同じ空間に2人が揃うところを想像するだけで、頭が痛くなりそうだ。
「で、サナに訊きたいんだが、信長公はどんな手を使ってくると思う?」
華南は続けて問いかける。
「んー、普通に考えたら武器は刀か銃……或いはそのどっちもやろうな。属性はどう考えても炎やろうし、炎耐性ポーションは買っといた方がええと思うで」
織田信長と言えば、鉄砲を使った戦術が有名だ。尚且つ第2層は信長の人生に沿うように構成されている。信長の最期は燃え盛る本能寺での自害。信長はゲームの中でも炎属性になることが多いから、あながち間違いでもなさそうだ。
「それでは、14時までに各自準備を整えておいてくれ。くれぐれも遅れることのないようにな」
「それ前に遅れてきた華南が言うかねぇ」
「今、その話は良いだろ北斗。とにかく会議はこれで終了! 各自解散!」
北斗に指摘され、華南は半ば吹っ切れたような声で全員に向かってそう告げる。
本当、今回は遅れないようにしてほしいもんだな……。
何はともあれ14時まで後2時間。武器と装備の強化は終わってるから、適当にぶらぶらするとしよう。
◇◆◇◆
Aランク非戦域で物資を調達後、ボス部屋に近くのセーブポイントへワープ。アイテムの消費をなるべく抑えながら進んでいくと、寺院の門がそびえ立っているのが目に入る。
今回は第3層以降の攻略も見据えて、なるべくこの1回で倒しきるのが目標だ。みんなが緊張した面持ちで扉を見つめる中、サナは欠伸をかましている。
自分のところの神様が敵かもしれないってのに、平常運転とは流石としか言いようがねぇな。案の定、新型ライフルのカスタムに手間取って遅刻しやがったし。
と、ギルドリーダーの華南が門の扉に触れた。
『新たな挑戦者を検知。認証を開始します。――ギルド・八咫烏、総勢36名を確認。
前回同様、華南の前に《窓》が現れる。ボス部屋に入るか否かの選択肢が表示される中、華南は「はい」を選択した。
『ギルドリーダー・華南の承認を確認。これより
直後、視界が暗転。ボス部屋への転送が開始されるのだった。
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