第4話 パーティ結成
次に目を開けると、今度は漆喰の壁と畳を模した木造の床が現れた。軽く辺りを見回してみたら、少し広めの空間に出たらしく、正面には奥へ繋がる松の書かれた金色の襖が設置されている。見たところどうやらここはロビーらしい。
そして、視界の右上に何かが映っている。よく見てみると、1段目には、二重丸の中にEの文字とLv1の隣に自分の探索者名が。その隣には7つの赤いハートマーク。2段目には緑の気力ゲージ、3段目には紫の魔力ゲージが表示されている。
まるでゲームみたいだなとは思ってたけど、ここまでゲームっぽいとはな……。さっきの声と言い、こりゃただのダンジョンって訳でもなさそうだ。
少し離れたところには青紫色のローブを身に纏った優希と明度の暗い赤色の着物に黒の袴スカートを着た織部がいた。俺はサムライということもあって、着物に袴スタイルだ。神職やってると、こっちの方が慣れてるからある意味有難い。
「あ、来たっすね。こっちっす」
「もー、遅いで」
どうやら先に着いていたようだ。優希に集まるよう言われたので、2人の元へ駆け寄る。
「すまん。それでこれからどうするんだ?」
「勿論、探索! と言いたいところっすけど、せっかく3人揃ったんで、パーティ登録しても良いっすか?」
「えっと、その前にパーティって何なん?」
「あー、パーティって言うのは探索者同士で組むチームみたいなもので、最低3人から登録可能なんすよ。パーティを組むとモンスターを倒した時にパーティメンバーへ一部の経験値が入ったり、一部アイテムの共有とかができるらしいっす。これから一緒に探索するんで、今のうちにやった方が色々と便利だと思うんすけど、お二人はどうすか?」
パーティか……。ダンジョン系のゲームとか今までやってこなかったからよく分からんが、まぁ、組んどいた方が何かと安全そうだ。先達の優希もいることだし、何が起こるか分からんからな。
「俺はそれで構わん」
「なんかお得そうやし、あたしもそれでええよ」
「じゃあ、まず《窓》――このダンジョンでいうメニューっすね。こんな風にやると《窓》が出現するんで、やってみてください」
優希が指を鳴らすと優希の目の前に長方形の黒いパネルが表示された。
……なるほど、これが《窓》か。
優希に操作方法を教えて貰いながらパーティ登録の画面まで進み、パーティ名を入力するところまで来た。
「んー、どうします? 大体、こういうのって、メンバーの共通点とかから考えるんすけど……」
共通点か……。この場の3人に共通するって言うんなら、代報者だが、流石に代報者の名前を出すのは駄目だろう。祟魔に俺たちは敵ですってバラしてるようなもんだしな。
なら目的から考えたらどうだ。現状、俺たちは上からの命令で先行して調査してるから……。
「先遣隊とか?」
「んー、ダサいし、安直すぎひん?」
「……安直で悪かったな」
織部から指摘され、不貞腐れたように返事をする。
でも、他にこれと言ってなかったんだから仕方ないだろ。というか大体、織部に至っては案出してねぇじゃねぇか。人のこと言えねぇだろうが。
「あ、でもルビを振れる機能があるみたいっすね」
「んー、ルビで何とか良い感じにできひんやろか」
結局、俺の案で行くのかよ。まぁ、織部のことだ。どうせ考えるのが面倒なのだろう。
にしても今度はルビか……。そうなったら外国語とかになるよな。生憎とそういうのには疎いから、ここで案を出すのは無理だな。
「あっ、でしたらアバンスとかどうすか? フランス語で前進するとか先行って意味があるっす」
「お、良いんじゃねぇか」
「かっこええやん」
「じゃあそれで登録しとくっすね」
パーティ名が決定し、キーボードで
「ちなみにメニューの基本情報では現在の気力ゲージや魔力ゲージ、状態異常とか基礎パラメータが確認できるっす。一応、確認してみるっすよ」
メニュー一覧の中からパーティを選択後、メンバー一覧を開ける。上から順にパーティリーダーである優希、俺、織部の順番で項目が設定されている。試しに自分の探索者名をタップ。左側には黒茶のツンツンヘアに同じ目の色をした自分の顔が表示されていた。一方、右側には現在のステータスが表示されている。一応、見方を知るためにヘルプボタンを押す。
見たところ、パラメータは筋力度、耐久度、敏捷度、器用度、直感度、幸運度の6つがあるらしく、基準値がBで、最高値がA+、最低値がEのようだ。
「お、あたしのパラメータなかなかええやん」
「……あ、ホントっすね」
優希が織部のパラメータを見てそう呟くので、俺も織部のパラメータを確認してみる。どれどれ……お、やっぱり織部のクラスは
で、肝心の俺のパラメータはどうなってんだ……。筋力度B、耐久度B、敏捷度A、器用度B、直感度A+、幸運度E。
「んー、基本的には平均より上だけど、幸運度Eか……」
「幸運度ぐらいならそんなに気にしなくても大丈夫っすよ。筋力度Eで武器が持てなかったり、敏捷度Eでめちゃくちゃ遅いよりかは全然マシなんで」
「そ、そうだな」
優希のいう感じだと、パラメータでだいぶ左右されるのか。確かに武器が持てなくて、戦えないとかよりは全然良い。それに幸運度が低い代わりに平均以上の値が出てるんだから良い方だろう。
最後にソーサラーの中でも
えーっと、筋力度B、耐久度B、敏捷度C、器用度A+、直感度B、幸運度C。大体平均ぐらいだな。器用度が高いのは
全員分確認し終わったところで、右上の×印を押して《窓》を閉じる。
「後、一応ここでは探索者名で呼び合うようにした方が良いかもっす。誰が見てるか分からないんで」
「分かった」
「了解や」
「それじゃあさっそく探索してみましょうか」
ユウキは襖の方へ歩きながら、メニュー一覧の武器から杖をタップ。手の中に杖を出して、襖を開けて外に出た。俺と織部も彼の後に続いて、ロビーを後にする。
「っ⁉」
最後尾の俺が出た瞬間、左の壁からこっち目掛けて長い棒状の何かが発射され、咄嗟にしゃがむ。恐る恐る真横へ視線を向けると、1本の矢が漆喰壁へ突き刺さっていた。
「いや、おっかねぇな⁉」
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