現実と空想の境界線

ロロ

最適解

「お客様、こちらがあなたに最適な配偶者候補です」


 カウンセラーは自信満々にタブレットを差し出した。画面には、一人の女性の写真と詳細なプロフィールが映し出されている。年齢、職業、趣味、遺伝的適合性、性格傾向……すべてが完璧に調和している。


「あなたの心理データ、購買履歴、日々の行動パターン、さらには夢の記録まで解析し、相性99.98%の方をご紹介しました」


 男は画面を見つめた。確かに、すべてが理想的だ。顔立ちも好み、価値観もぴったり、嫌いな食べ物まで一致している。


「結婚後のシミュレーションも行いました。幸福度は生涯平均98.7%、離婚率は限りなくゼロに近い数値です。最適な選択です」


 男は深く息を吸い込み、そっとつぶやいた。


「……断ります」


 カウンセラーの表情が固まる。


「何か不満な点が?」


「いや、完璧すぎて怖いんだ。最適解って、そんなに魅力的かな?」


 男は立ち上がり、扉へ向かおうとした。


「少し不確実な方が、人生は面白いと思うんだ」


 カウンセラーはため息をつき、画面を操作した。男のデータに「最適解を拒否」のタグを付け、新たな検索を開始する。


「さて、あなたの次の候補を探しましょうか」


 画面には、男に最適な“別の”女性が表示されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る