第3話:森と村と俺の日常と

洞窟の中、火がパチパチと音を立てて燃えている。

影兎シャドウラビットの肉を腹におさめ、満腹感で地面に寝転がって洞窟から顔を出し空を見上げてた。

星がやたら綺麗で、異世界って感じがじわじわしてきた。

エクスが頭の中で静かに喋る。


「拠点を確保できたし、次はどうするんだ?」


『生存率は現在78%。次の推奨行動は情報収集です。付近に村の気配を確認。

距離:約3km、危険度:不明』


「集落か…人がいるなら飯とか寝床とか楽になるかな?」


『可能性はあります。移動前に休息を推奨。あなたの体力:現在68%』


「68%って微妙だな。かなり遅いし、もう寝るか。」


そう言って俺は目を閉じた。

エクスの『監視してるよ』って声が妙に安心感があって意外とすぐ眠りにつく事が出来た。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


朝、鳥の声で目覚めた。

堅い地面で寝たせいで体が、あちこち硬いけど生きてる実感がある。

昨日の残りの影兎シャドウラビットを口に放り込み、出発の支度をする。

といっても手荷物とか何もないけど……。


とりあえず洞窟を出てエクスの言う方向に歩き出す。

森の木々が朝日でキラキラしてて、なんか気持ち良い。


「エクス、村ってどんな感じなんだ?」


『規模:小型、人口予測:約30人程度。

 敵対リスク:低いが警戒推奨』


「ふ〜ん。」


しばらく歩いていると森が開けた。

森を抜けた先に小さな村が見えた。

木で出来た家がポツポツ並んでいる。

その近くの畑で作業をしている人影を見つけた

俺は、隠れるように近づいて様子見てた。


『住民反応予測:好奇心60%、警戒30%、敵意10%。初接触は慎重に』


「慎重って言われても、どうすりゃいいんだよ」


考えていても仕方がないので、とりあえず畑の端で働いてるおっさんに声をかけてみた。


「あの、すみません。ここどこですか?」


おっさんは鍬持ったまま振り向き俺を見て、少し驚いた顔をする。


「なんだ、おめぇ見ない顔だな。旅人か?」


「旅人…まぁ、そうですね。ちょっと迷っちゃって……。」


『嘘の成功率:72%。自然に振る舞えています』


おっさんが少し怪訝な顔をしていたが「ふーん」って頷いてくれた。


「ここはリム村だ。とりあえず村長に会え。

 ここから見える奥の大きめの家だよ。」


「ありがとう、おっさん!」


畑を離れておっさんの言っていた家を目指す。村の中では子供が走り回ってたり、婆さんが洗濯干してたり平和な雰囲気だ。

エクスが静かに分析してる。


『村の経済:農業基盤。交易痕跡なし。自給自足型と推測』


「へえ、のんびりしてんな」


村長の家に着いて、ドアを叩いた。

中から白髪の爺さんが出てきて、俺をじろっと見る。


「何だ、おめぇは?」


「道に迷った旅人です。ちょっと休ませてもらえればと………」


『好感度予測:45%。もう少し丁寧に』


「えっと、すみません。実は旅の途中で道に迷って、それで疲れ果てて泊まる場所を探していまして……」


村長、しばらく黙ってたけど「まあいい」と言って中に入れてくれた。


「旅人なら何か面白い話を聞かせろ。それで泊めてやる。」


『交渉成功。情報交換で信頼度アップ推奨』


「話か…じゃあ、森で影兎シャドウラビットを捕まえた話でもします?」


俺は、昨日の兎捕りの話をちょっと盛り気味で喋った。

村長、最初無表情だったけど「ほう、影兎シャドウラビットを素手でか!?」って笑い出してくれた。


「面白い若者だな。よし一晩泊めてやるよ!」


『信頼度:現在62%。次は村での役割提案を』


「役割って何だよ、エクス?」


『労働提供で長期滞在可能に。生存率向上:予測85%』


「働くのか…まあ、飯があるならいいか…。」


その夜、村長の家の隅で寝袋を借りて寝た。

洞窟より格段にマシな環境にちょっと安心感を覚える。

エクスが静かに言う。


『初日終了。異世界適応度:38%。明日も頑張ってください』


「38%って低くね?俺かなり適応してると思うけど!?」


村の外から聞こえるコロコロという虫の声を子守唄代わりに俺は眠りついた。

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