第7話 芽吹く力
両親と弟の首に巻き付いた透明の鎖は辛うじて視認できるが触れることができず魔力を一切感じないことからスキルにより生み出されたので間違いないだろう。
スキル効果が行動を縛るだけのものなら悩むことなく鎖を断ち切る。ただし遊戯神フレミアのスキルじゃなかったらという条件がつく。
鎖を断ち切れば助けることができるということは断ち切られれば手持ちのカードを失う。辛うじて視認できる程度に偽装し断ち切れば助けられるアピールされて素直に従う道理はない。
「鎖、断ち切らないの? 助けだす最後のチャンスかもしれないよ・・・・・・ なーんてね。亜神の力じゃ絶対に切れないから。そんな事よりゲームの説明を始めないとラグナロク始まっちゃうよ」
ゲームのクリア条件は三人を封じ込めた
想定ではゲーム自体クリアさせる気などなく死の間際まで足掻かせ、もしもの時の為に保険を用意しゲームマスターが確実に勝利するような条件だと思っていたのだが。
「それとラグナロクの勝利条件知らないでしょ? 颯斗君の場合、十神全員を倒して各々が持つある物を集める必要があるんだ」
「それってまさか・・・・・・」
「気がついた? そっ、神玉を集める。公平を期す為に他の神も勝利条件は同じなんだから文句言わないでよね。ちなみに三人を封じた神玉を誰が持ってるか僕知らないから!!」
最悪十神全員を倒さなければ家族を元の世界へ帰すことができない。更に追い打ちをかけるようにフレミアは話を続ける。
「そうそう前回の優勝賞品になった世界って必要ないって理由で消されちゃったから頑張った方がいいと思うよ。運よく助けられても世界が滅んだら全部無駄になっちゃうもんね・・・・・・ さあラグナロク開始まで三分。僕は行くけど三人が転移されるまでの時間、神になった御祝いにプレゼントしてあげる」
フレミアの気配が完全に消えると同時に父に駆け寄り捻じ切られた左腕にハイポーションを振りかけながら
「巻き込んでごめん・・・・・・ 絶対、元の世界へ帰すから・・・・・・」
振り向き母と弟に頭を下げる。早乙女颯斗として謝罪し絶対に助けるから待っていて欲しいと約束したかった。説明するだけの時間もなく、ものの数秒後には神玉に封じられてしまう。
「は、颯斗。そ、そこに居るのか?」
そんな父を・・・・・・ 母や弟を淡い光が包み込み、ゆっくりと浮かび上がると天井付近で姿だけでなく三人に付与していた追跡系の魔法反応も完全に消失した。
仮に今すぐ助け出せたとしても元の世界へ送り返す手段がなく、運よく送り返すことができたとしても戦いに敗北すれば二つの世界は消し去られてしまう。
ましてや力及ばず敗北したが善なる神が勝利したことで世界は消滅せずに済むなんて未来が訪れることなどないだろうし、自分以外の誰が勝者になろうと世界は消滅させられる可能性が高いような気がする。
アニメや漫画で得た知識に即しているのなら亜神の力は下級神に近くより上位の神に遠く及ばない。亜神を盛り上げ役としている点からも上位の神が参加しているのだろう。
圧倒的に不利な状況、勝ち残る可能性は皆無、ただし現状であって明日も同じ状況かと言えば一概に同じとは言えない。
現実世界だったからこそ成長という可能性が生れ、絶望的状況を打開することが可能になった事を意味している。
MMORPGなどのゲームではプレイヤーやNPCのレベルや能力値というのは上限が決まっており一定値を絶対に越えることができない。
プレイヤースキルや装備品といった要素により多少の個人差はあっても、ゲーム内設定という絶対的なルールに縛られ絶対に破る事の出来ない種皮となり成長と可能性の芽生えを阻む。
だが現実世界ならば全く違う。自身を含め守護者達やセクレシアに生きる全ての人達が成長することができれば勝利する可能性を高めることができる。そしてラミアが戦いの中、急激な成長を遂げたことが非常に大きな意味を持つ。
セフィーシア城 玉座の間
「遊戯神だろうと関係ねえ!! 俺がぶっ飛ばしてやる!!」
「落ち着くのニャ!!」
「落ち着けるわけないだろ!! あんなの許せるかよ」
激しい怒りに身を震わせ今に城を飛び出してしまいそうな状態のカイを必死に
怒り、悲しみ守護者其々が抱く感情を生み出した元凶ともいうべき出来事。それは十分程前、守護者全員の脳裏に自らを遊戯神と名乗る男の声が聞こえてきたことに端を発する。
ラグナロクという戦いの始まりを告げた後、見知らぬ男を助けようとする颯斗の姿が脳裏に浮かび強い後悔の念と深い悲しみの感情が心に流れ込み渦巻いた。
「許せない・・・・・・ 僕の颯斗様にあんな想いをさせるなんて」
「カイ・シュベルザー、エルオード・インシュガルド少し落ち着いたらどうです」
何事も無かったかのように話すレイスに苛立ちを隠し切れないカイは詰め寄ると胸ぐらを掴み声を荒らげる。
「はあ? お前は何とも思わねえのかよ」
「私は守護者筆頭なのですよ。感情に流されていては颯斗様の御考えの一端すら読み解けません。それに先程の颯斗様の行動、魔力感知に長けたお二人なら気がつくかと思ったのですが残念です」
「魔力感知が何だって言うのさ。
何かに気がついたのか興奮し顔を紅潮させ瞳を輝かせているエルオードを冷ややかな目で見つめながらレイスは話を続ける。
「ハイポーションを使用しながら治癒魔法を併用されていた。魔力反応、治癒速度から
「そうなんだよ!! つまり効果は
頬を赤らめ座り込み
人族を助け遊戯神を倒すことすら可能だったにも拘らず無能を演じ意図的に助けなかった。その意図は計り知れず未来を見通し何重にも策を講じる。その言動一つ一つに意味があると話すレイスの言葉に、物思いに耽る一人を除き納得した表情を浮かべている。
颯斗に対する絶対的な信頼と期待感が最高潮に達したとき、レイスの一言を切っ掛けに緊張が走る。
「侵入者・・・・・・ 人間のようですね」
「侵入者ってことは敵って事だろ? 俺がぶっ飛ばしてやる!!」
「貴方はどうしてそうも短絡的なのですか・・・・・・ この件に関しては颯斗様に一度ご報告した方が良さそうですね」
無属性魔法【
だが反面その選択が正しく何か深い考えや既に何らかの策を講じている。先程発見した十名の侵入者ですら智謀により誘導されじゃないかと思えてしまう。
「ラミアは良くて何で俺はダメなんだよ? ズルいだろ!!」
「ダメなものはダメなのニャ!! ラミアの時と今は状況が違うって分からニャいの?」
報告を受け玉座の間へと転移してきた颯斗の目に飛び込んできたのは侵入者を倒すと息巻き玉座の間を今にも飛び出しそうなカイと落ち着かせ止めようとするミィの口論。今となっては見慣れた光景だが聞こえてきた話の内容は数時間前と違い看過できない。
更に転移してきた時点で気がついていたミィと違いカイは颯斗が転移してきたことに未だ気がついておらず感情的で冷静さを著しく欠いていている。
「その辺りで止めたほうが良いんじゃない。颯斗様もいらっしゃったし止めないとレイスに叱られちゃうよ。カイの気持ち、分からなくもないけど・・・・・・ 僕だったら気持ちを伝えたいって思った時は溜め込まないで言っちゃうけどなー・・・・・・ ですよね? 颯斗様-っ」
言い争いを続ける二人の間に入り話しかけた後、その場で跪く。エルオードに関して言えば少し溜めていてほしいのだが。カイは拳を強く握りしめ力強い眼差しをこちらへと向けている。
「俺も・・・・・・ 俺も颯斗様の力になりたい」
「颯斗様。だそうですよー」
気持ちは嬉しいがセクレシアは現実世界、傷つきもすれば痛みも感じ致命傷を負えば命を失い生き返る事などない。だからこそ判断を間違えるわけにはいかない。
「カイの気持ちは嬉しいし許可してあげたいけど、ラミアの時と状況が違っていて許可できない。それはカイに限った話じゃなく全員に言える話なんだ」
【
倒すべき敵は神とその守護者、状況次第では格上の相手と戦う可能性が高く未知のスキルや魔法、特殊な力を付与された武器やアイテム、アーティファクトを持つ敵との戦闘も予想される。
そしてレイスに確認した結果、想定していた以上に最悪の状況だった。装備品と呼べるのは服とアクセサリー類だけで何も所持しておらずアーティファクトやアイテムを持つ者は一人も居なかった。
「全員に装備品、幾つかのアーティファクト、アイテムを渡しておこうと思う。自作だけど性能品質は保証するよ」
絶域攻略時、スキル【
「颯斗様の気持ちは嬉しいんだけどさー。近接戦闘なら誰にも負ける気しねえし、この拳さえあればブ」
得意気に話すカイの体が宙に浮いたと思った瞬間、凄まじい勢いで壁へと叩きつけられ、そのまま崩れ落ちて動かなくなった。
「近接戦闘ねぇ。こんな攻撃も躱せにゃいのに?」
フワフワと空中を漂うようにゆっくりとミィがカイの傍へ向かい頭を撫でながら治癒魔法で傷を癒している。
「はぁはぁはぁ。し、死ぬかと思った!! 何するんだよ!!」
ミィの治癒魔法で回復したようだが、かなりダメージを負っていたようで息は荒く若干ふらついている。戦闘は単純な力だけで優劣がつくものじゃない。倒すべき敵は神とその守護者、武器やアイテムを渡しておくことで選択肢を増やし不測の事態に備えることで戦術的にも幅を持たせたい。
「それじゃ今から全員に武器を渡すね・・・・・・ 【
二十センチほどの大きさの光玉が九つ目の前に現れ空中を漂い守護者達の前で静止する。その光玉に力を流し込んでいくと五十センチほどの大きさまで成長し直視できないほどの強烈な光を放ちながら守護者それぞれの体へと吸い込まれ消えていった。
「消えちゃいましたね・・・・・・ でも何だか・・・・・・」
サティナはポツリと呟くと右手を胸に添え瞳を閉じる。エルオードとソレイユ、ルーナの双子姉妹は瞳を輝かせレイスは難しそうな顔をしている。
「信じられんと言いたげな顔じゃな」
「・・・・・・そんなとことですね。貴女は・・・・・・ どうやら愚問だったようですね」
「分かっているではないか。颯斗様の御力という一点ならばお前より理解しておるつもりじゃ」
レイスとラミアの会話を聞く限り何が起きているのか理解しているようだが、当のスキル使用者本人はというと武器作成が成功し全員に渡すことができた程度の認識でしかない。
スキルを完璧に使いこなせていたら把握できていたのだろうが、こればかりは自身の未熟さが原因なのだから努力していくしかない。
「はいはーい。颯斗様。何が起こったのか分からない人も居るみたいだから僕が説明してもいいですか?」
創造(クリエーション)による武器作成には成功しているという実感があるのだが、受け取った守護者達に何が起こっているのか全く分からない。何が起こっているのかエルオードは理解しているようなので話を続けさせる。
「僕ね、無属性魔法の適性が無かったのに使えるようになったんだよ」
魔法適性は生まれながらに持つ資質で努力などの後天的要素により目覚めることはなく、適性が無ければその系統の魔法を修得することができない。つまり無属性魔法適性の無いエルオードが修得することは不可能と言っていい。
しかも同様に適性を持たないサティナ、オリス、カイの三名も適性を獲得、守護者全員が幾つかの無属性魔法とスキルを修得したそうだ。
「ねっ!! 凄いでしょ? 僕も全く気がつかなくてさ。じゃあ何で僕が何故その事を知っているのか。それは・・・・・・ じゃじゃーん。颯斗様が僕のために作ってくれた、この
使用したスキルは
だがエルオードの話では適性を持たない四人に魔法適性を付与し守護者全員が何らかの無属性魔法と無限収納(インベントリ)を始めとした幾つかのスキルを獲得させた。
亜神になったことで何らかの力に目覚めたと考えれば辻褄が合うのだが目覚めたことすら分からない力なら無いに等しい。
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