幼馴染彼女に浮気され、女性不信に陥った俺に可愛い彼女ができました。

です

第1話 お泊り

「ねぇねぇ、神埼」

「ん……?」


 ある日の教室、誰かが俺に声をかけてきた。

 珍しい、俺みたいな陰キャに声をかけてくるなんて。

 声がした方向に目を向けると、金髪のギャルが視界に入った。

 誰かと思ったら天野か。


 天野あまの理沙りさ

 同じクラスのギャルだ。あと、バイト先が同じだ。

 学校で話したことは一度もないけど、バイト先では何回か話したことがある。

 まぁ事務的なことしか話したことないけど。

 

 にしてもなんで俺に話しかけてきたんだろう? 

 バイトのシフト変わってほしいのかな?


「おーい、聞いてる?」

「ん? なんだよ?」

「神埼ってさ、今一人暮らししてるんだよね?」

「え? あぁ……そうだけど」

「ならしばらくアタシのこと泊めてくれない?」

「は……?」


 こいつ、今なんて言った?

 俺の聞き間違いかな?


「すまん、今なんて言った?」

「だからしばらくアタシのこと泊めてくれない? だめかな?」

「いやいや、意味わかんねぇよ。なんで俺の家泊まりたいんだよ? なんか理由があんのか?」

「……今さ、家出中なんだよね」

「家出?」

「うん……パパと喧嘩しちゃって、家に帰りづらくなったんだ」

「……」

「ねぇ頼むよ、しばらくアタシのこと泊めてっ。いいでしょ?」

「いいわけねぇだろ。お父さんと仲直りしてさっさと家に帰れ」

「あの人と仲直り? そんなの無理だよっ……あの人アタシのしてること絶対認めてくれないし。仲直りなんかできないよっ」

「……」


 アタシのしてること認めてくれない、か……。

 ただの喧嘩ではなさそうだな。

 まぁどうでもいいけど。


「つかさ、なんで俺に頼むんだよ。他に頼める相手いないのか?」

「それがいないんだよね……。アタシ、友達いないし」

「え? そうなのか?」

「うん……」

「……」


 マジかよ、天野のやつボッチなのか。

 まぁ気にすんなよ。俺もボッチだし。

 同業者同士仲良くしようぜ。


「彼氏はいないのか?」

「うん、今はいないよ」

「そっか……」


 こいつ、まじで頼める相手いないんだな。

 

「けどなんで俺に頼むんだよ。もっと他にいただろ」

「ほら、神崎くんって一人暮らししてるじゃん? アタシが君の家に泊まっても親御さんに迷惑かからないでしょ?」

「あ~、なるほど。それで俺を選んだのか」


 実家暮らしの生徒の家に泊まると、相手の親に迷惑がかかってしまう。

 それを危惧して天野は一人暮らしをしている俺を選んだのか。

 納得はできたけど、まだ疑問が残る。


「そもそも、なんでお前お父さんと喧嘩してるんだよ?」

「それは……」

「人に話せないような内容なのか?」

「ううん、そういうのじゃないよ。わかった、ちゃんと話すよ。あのね」


 天野は動画配信サイトでギターの練習風景や有名な楽曲のカバー動画をアップしているらしい。

 それがスマッシュヒットして天野は動画配信サイトで人気になり、今ではチャンネル登録者は20万人を突破。

 再生回数も安定していて、生活できるほど稼いでいるみたいだ。


 将来は就職せずに動画配信サイトの広告収入で食べていく、と父親に告げたら大喧嘩になり、家出したとのこと。

 

「あの人、動画配信者なんて不安定な活動は絶対認めないぞっ。大学卒業したら絶対就職してもらうからなって言ってくんの……意味わかんないっ。なんでアタシのしてること認めてくれないのかなっ……」

「動画配信サイトの広告収入だけで食べるのは難しいからな。そりゃお前のお父さんも心配するだろ」

「けどアタシ、余裕で生活できるぐらい稼いでるよ?」

「それは今だけだろ。あと2年ぐらいしたらオワコンになる可能性だってあるんだ。お前のお父さんはそういうところを心配してんだよ」

「オワコンになんかなんないよっ! 絶対上手くいくよっ!」

「はいはい、そうかよ。それにしても、お前凄いな」

「え? 何が?」

「登録者20万人もいるんだろ? 本当に凄いじゃん」

「えっ、あっ、うん、ありがと……結構頑張ったからね」

「そっか」


 動画配信サイトで20万人か。

 本当に凄いな。 

 おそらく、天野は登録者20万人になるまで必死に努力したはずだ。

 その努力を父親に認めてもらえなかったからショックだったんだろう。

 だから彼女は家出したんだ。


 はぁ……しょうがない。ちょっとだけ協力してやるか。


「わかったよ、しばらく泊めてやる」

 

 俺がそう言うと天野は「え……」と間抜けな声を漏らす。


「泊めてくれるの?」

「ああ……泊めてやるよ」

「本当に!? ありがとう!! 神埼!!」

「お、おう……。言っておくけど俺の家狭いし汚いぞ?」

「うん、いいよ、気にしないから」

「そ、そうか……」




 ◇◇◇


 

「へぇ~、ここが神埼の家か。さっき部屋汚いって言ってたけど、凄く綺麗じゃん」

「そうか?」

「うん、おしゃれでいいと思うよ」

「そりゃどうも」


 現在、俺の家に神崎がいた。

 彼女は俺のオタク部屋を興味深そうに観察していた。


 コイツ、男の家にいるのに緊張感なさすぎだろ。

 なんか色々と心配だな。


「あっ、そうだ。お礼しないとだめだよね」

「お礼? なんのことだ?」

「しばらく泊めてくれるんでしょ?」

「ああ」

「ならそのお礼するよ」

「お礼? 何してくれるんだよ?」

「うーん、そうだね。エッチでもする?」

「は……?」


 天野の言葉に驚きを隠せなかった。

 この女は何言ってんだ……。

 混乱している俺を無視して天野は話を続ける。


「神埼、彼女いなかったよね?」

「ああ、いないけど」

「なら溜まってるでしょ? 泊めてくれるお礼にヤらせてあげるよ」

「……」

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